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第八話   無双と秘密

現在、マルテス軍の戦闘可能兵力が1万に対してフエベスの戦闘可能兵力は5千である。

マルテス軍は城壁を囲うように配置していて、包囲されているフエベス軍にとっては攻めづらい状況が続いていた。


ゴウキは自身に無系統魔法「不可視」《インビジブル》をかけて姿を隠し、城壁の上に立っていた。

(このままだと王都が落とされるのも時間の問題・・・)そう思ったゴウキは注意をこちらに向けるため、あえてインビジブルを解いて場外に降り立った。


「あいつは何者だ?」

「どこから現れた!?」

マルテス軍に動揺が走る。


「マルテス軍に告げる。今すぐに退却するなら多くの犠牲を払わずに済む。しないのなら

全力で蹂躙してやろう」とゴウキが告げる。


この声で彼の正体に気付いたものがいた。それはギルマスのライゼである。

(あいつゴウキか?エリートが来てくれたのは心強い。だがあの見た目は何だ?)などと疑問を残しながらも、ライゼは戦況が変わることを願っていた。


一方、ゴウキの挑発に怒ったマルテスの総隊長ガイアは、

「はったりに決まっている!怯むな!そのまま押し切れ!」とマルテス軍を鼓舞し続けた。


(はあ、聞いてくれないか。正直あんまり乗り気じゃないんだけどな・・・)

ゴウキが戦闘態勢に入る。

「ファイアーボール!ハンドレッド!」とゴウキがささやく。

するとすぐに100個のファイアーボールが出現した。この状況に両軍が目を見張っている中、ゴウキは続けざまに、

「魔法分裂!」と唱える。その瞬間、両軍の上空に200個のファイアーボールが出現し、フエベス王国前の平原を熱気で染めた。


「な、なんだありゃ・・・」とライゼが呆れ気味につぶやく。


「う、嘘だろ。あんなのを撃ち込まれたら本当に蹂躙されてしまう・・・」

ガイアはその光景に臆し、その場から動けずにいた。


ゴウキによって200個のファイアーボールが放たれる。ゴウキは見事なコントロールで、フエベス軍に死傷者を出さなかった。


それに対して、マルテス軍はゴウキのたった一撃で4千もの死傷者がでた。

そこに追い打ちをかけるように、

「トルネードボール!フィフティ!」と、ゴウキはガイアに聞こえるように詠唱した。


「トルネードボールだと!?しかも50も・・・。これを食らえば今度こそ全滅してしまうかもしれない」とガイアは呟く。

「撤退、しますか?」とガイアの直属兵が問いただす。

「・・・仕方ない。撤退だ」


マルテス軍は、ガイアの撤退の合図とともに帰っていった。

それを見たゴウキはトルネードボールの発動を中断し、皆の注目を集める前にインビジブルを掛けた。


ゴウキの活躍によってフエベスは勝利で戦争を終えた。


戦争終了直後から、王国はあの救世主の捜索に乗り出した。

まだ城壁の近くにとどまっているという予測のもと捜索が行われたため、ゴウキは30分ほど城壁の上にとどまっていた。


城壁付近に兵士がいなくなったことを確認したゴウキは開けた地面に着地して、そのまま路地裏に入り込んだ。周りに人がいないことを確認してからゴウキはインビジブルを解除した。


それに続いて幻惑魔法を自身に掛ける。目立ってしまうオッドヘアもこの魔法があれば安心だ。


しかしゴウキは久々に少し規模が大きめの魔法を使ったせいか注意力に欠けていた。

自分に幻惑魔法を掛けるところを見られてしまった。


「ゴウキ?今の姿は何?」

ゴウキに話しかけてきたのは、今日知り合ったばかりのリズだった。


「あ―――、今のは幻惑魔法の練習だよ」ゴウキが苦し紛れの言い訳を放つ。

「王国が青と黄のオッドヘアの魔術師を捜索してるって聞いたけど、まさかゴウキのことなの?」

「いや、人違いじゃない?俺がそんなに強いわけないじゃん!」

「そんなわけない!さっきのゴウキは捜索隊が探している容姿と全く一緒だった!」

「・・・」

「・・・」

二人の間に沈黙が続く。


「あ―、リズ?俺ギルドに用があるからいくね」ゴウキは早くこの場から離れるために適当な理由でリズをあしらおうと思った。

だが、リズの反対側に歩き出した瞬間、ゴウキはリズに手首をつかまれていた。

「逃がさない。本当のことを言ってくれるまでは放さないからね!」

リズは真剣な目つきでゴウキを見つめる。


「・・・わかったよ。リズ、1時間後に俺の部屋に来て。そこで説明する」

「わかった。全部話してもらうからね?」

そういってゴウキとリズは別れ、ゴウキは直接ギルドに向かった。


ギルドに来た目的はライゼの口止めである。


「ライゼさん、お久しぶりです」

「おう、ゴウキか」

「ライゼさん、」とゴウキが要件を言おうとした瞬間、

「わかってるよ、今日のことを誰にも言うなって言いに来たんだろ?安心しろよ。そんなことをしてお前の反感を買って敵国の軍にでも入られたらたまんねーからな」

「ありがとうございます」

そういってゴウキはギルドを後にした。


夜10時、リズは時間通りにゴウキの部屋に来た。

「まず、今から話すことは絶対に誰にも言っちゃダメ。約束して?」とゴウキが言う。

「わかったわ」とリズは最初から秘密にしておくつもりだったかのように返事をする。

「何から話せばいいか」

ゴウキはまず、自分の幻惑魔法を解除した。

「きれいな髪の色。2色の髪なんて初めて見たわ」

「ありがとう。では、改めて自己紹介するね。俺はゴウキ・カインズ。階級はエリート。

現在はギルドランクEで学園では魔法理論を学びたくて入学したんだ」

「エ、エリート!?あなたが、人間国に5人しかいないエリートの1人ですって!?」リズは驚愕で表情が固まっている。

「だったらマルテスを追い返したというのも納得だわ。でもじゃあなんで学園には3位で入学したの?」とリズは続けて言う。

「ん。それはその―」ゴウキは困ったように視線を逸らす。

「それは何よ。教えてくれるんでしょ?」とリズはゴウキの視線に無理やり入り込む。

「実は、目立ちたくなかったからなんだ」

「なによそれ。ゴウキって意地悪なの?」とリズは不貞腐れた表情でゴウキに迫る。

「ごめんよ。でも、エリートなことがばれたらいろいろな面倒が起こるだろうから注目されるのは避けたかったんだよ」

「わかった。そういう理由ならしょうがないわね。このことは誰にも言わないから安心して」

「頼むよ」

「でもよかった」

「なにが?」

「だって、ゴウキがそんなにつよいなら、何かあっても私たちの代わりに戦ってくれるんだよね。」

「ああ、まかせて、リズのことも学園のみんなも必ず守って見せるから!」

「・・・っ」リズは少し顔を赤らめてうつむく。

「まあ話はこんなところだ。また何か聞きたいことがあったらいつでも聞いてくれ。リズは俺が秘密を話した数少ない特別な人なんだから。遠慮はしなくていいよ」

「・・・わかったわ!今日はありがと」心なしか小さい声で恥ずかしそうに言ったリズはそのままゴウキの部屋を後にした。


(入学式当日から波乱の1日になったな。でもいよいよ明日から学園生活が始まる!楽しみだな!)

そんなことを思いながら、ゴウキは眠りについた。


一方、部屋に帰ったリズは枕に顔をうずめている。

(ゴウキがエリートだったなんて。そんなに強い人が身近にいてくれるなら安心して勉学と訓練に励めるわ!でも、ゴウキったら私のことを特別だなんて・・・)

再度顔を赤らめたリズはこの日、興奮のあまり十分な睡眠が取れないのだった。

今回は最初の山場として書きました。いかがだったでしょうか。

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