8 テニスのダブルス その2
透也の緊張感もほぐれてきた。
ゲームが始まる前、英理華があっさりと、この試合のペアを決めた時はちょっとがっかりしたが、那央さんとペアを組んで試合をするのは楽しいな、とも透也は思う。
那央さんが、この試合をとても楽しんでいるし、透也とのペアで、より張り切っている、という気持ちも伝わってくるから。
このゲームでは、透也にダブルフォールトはなかった。ファーストサーブもよく入った。
那央同様、センター、ボディ、ワイドと打ち分け、時にレシーブの乱れも誘えた。
ポイントを取るたびに、那央と透也はハイタッチ。那央の笑顔がはじける。透也の心もはじける。
那央のバストが弾む。
透也の心も弾む。
那央さんのバスト、いいなあ。
透也は、あらためて見惚れた。感動した。
英理華がこのバストだったら、言うことないんだけどな。
夜、寝るとき。その気分のときは、透也はロイヤルブルーで、ほとんど英理華を想う。しかし最近は、那央のことも時々想うようになっている。
英理華との時ほどではないが、それでもその種の大きな感動と興奮がある。そして、英理華との時にはない種類の、豊かな安心感のようなものに包まれる。
4ー2 那央・透也ペアが取る。
ゲームカウントはこれで、
那央・透也ペア 3ー2 英理華・柿崎ペア
逆転。
ゲーム間の小休憩。
「透也さん、サーブ良かったです。逆転しましたね。」
いつもはゆったりと落ち着いている那央が、ちょっとはしゃいでいる。
透也より一年近く年上で、容姿も雰囲気も大人っぽい那央。
可愛いな。
透也は、那央にはあまりそぐわないイメージだったその形容詞を、今の那央に感じた。
「まっき、くん。逆転されちゃったよう」
「されちゃいましたね」
「次は牧くんのサーブ、がんばりましょうね」
「はあい」
柿崎のサーブは、引き続き快調だった。
大きな伸びやかなフォームからの、スピードの乗ったサーブ。
コースは、まるで気にしていない。
柿崎はおそらく、レシーブゾーンの真ん中をめがけて打っているだけ。コントロールは、あまり良くないから、それでコースは適当に散らばる。
相手が何も考えていないのだから、コースを予測のしようもない。
見ていて気持ちが良いほどだ。
透也も、僕もああいうサーブを打ちたいな、と思い、真似してみたことがある。でも上手く馴染めなかった。
コントロール重視で、色々と考えながらサーブするほうが、透也は楽しかった。
那央さんもきっとそうなのだろう、と透也は思う。
そのサーブを見ていれば分かる。
4ー1 英理華・柿崎ペアが取る。
次のゲームは接戦だった。
この試合で初めて、デュースが繰り返される。
10ー8 英理華・柿崎ペアが取る。
そのゲームの最後は、この試合で初めての那央のダブルフォールトだった。
ゲームカウント
英理華・柿崎ペア 4ー3 那央・透也ペア