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7 テニスのダブルス その1

ゲーム前のラリー、サーブ、レシーブの練習が終わり、ネットを挟んで、コートの両側でペア同士が向き合う。


 那央がラケットをコートに付けて、クルクルと廻す。


 英理華が、

「スムース」

 と言う。


 ラフだった。


「透也さん、サーブでよいですか?

 お願いしますね」


 僕がゲーム最初のサーブか。緊張するな。

 でも、これは断れないな。


「分かりました」


 柿崎が

 英理華に訊くこともなく

「コートサイドは、このままでいいよ。じゃ始めよう」

 と声をかけた。


 たしかに、英理華も、柿崎も、そういうことまで気にするようなタイプではない。


 最初のゲーム、透也は、やはり緊張した。

 ダブルフォールトを二回して、ラリーでも一回、ネットにひっかけた。


 4ー1で、英理華・柿崎ペアが取る。


 那央・透也ペアが取った1ポイントは、那央のボレーによるもの。


 男子側のサービスで、ゲームを取れなかったのは、痛いな。どうも、勝ちたいという意識が過剰なようだ。

 透也は、そう思った。


 ゲーム間の小休憩でベンチの隣に座った那央に詫びる。

「那央さん、すみません。僕のミスで、ゲーム取られてしまいましたね」


「透也さん、ドンマイドンマイ。楽しくやりましょう」


 那央が、ニコニコと、答える。


 ああ、この笑顔、いいなあ。


「最初のサーブは、牧くんね。ダブらないようにしましょう」


「おっ、英理華さん、プレッシャーをかけてくるんだ。これは意外。勝ちたいと思っているの?」


「もっちの、ろんよ」


「了解しました」


 コートのサイドを変えて、柿崎のサーブ。

 ゆったりとした大きなフォームで、ボールを高々と投げ上げる。

 柿崎のファーストサーブは、三田よりもスピードがある。


 デュースサイドで、透也が身構える。

 フォールト

 同じフォームで、ファーストサーブよりも少しスピードを落としたセカンドサーブ。それでも、透也のファーストサーブよりも速い。

 これも、フォールト。


 ネット間近のポジションに立っていた英理華が

「あらあ」

 と、のんびりした声を出して、振り返って柿崎の方を眺める。

 柿崎は、その視線を避ける。避けているということがはっきり分かるちょっと大袈裟な態度で。


 アドバンテージサイド、伸びやかなフォームで、ファーストサーブ。

 レシーブの名手、那央もラケットに触れることもできなかったノータッチエース。


 英理華が振り返り、柿崎に対して、よしよし、という風に頷く。

 柿崎が、ちょっと胸をそらして、得意そうなポーズをする。


 そのあとも、柿崎のサーブは好調。

 那央も、透也も、何とかレシーブを相手コートに返すが、ラリーが少し続いても、あとは、英理華・柿崎ペアがポイントを取った。


 英理華も一本スマッシュを決めた。


 ポイントを取るたびに、英理華と柿崎が、にこやかにハイタッチする。


 4ー1 英理華・柿崎ペアが取る。


 三ゲーム目は、那央が頑張った。


 スピードはさほど無いが、少し変化をつけたサーブを、コントロールよく、センター、ボディー、ワイドと打ち分ける。


 エースは無かったが、何本かレシーブの乱れも誘った。

 一度デュースにはなったが、

 那央・透也のペアが取った。


 那央・透也ペアもポイントを取るたびに、ハイタッチ。

 その際の、那央の快活な笑顔が、透也は嬉しい。


 那央は、普段は、口元にほんの少しかすかな微笑みのようなものは浮かべているが、静かで、落ち着いた雰囲気の女の子なので、快活な笑顔を見ると、透也の心も弾む。


 6ー4 那央・透也ペアが取る。


 奇数ゲームのあとの、小休憩。


「いやあ、那央さん、ありがとうございます。那央さんのおかげで、やっとゲームが取れましたね」


「いえいえ、透也さんもラリー繋いでくれましたし、ボレーも綺麗に決まりましたね。ありがとうございます。この勢いでがんばりましょう」


「はい」


 透也の緊張感もなくなってきた。


 次の、英理華のサービスゲームでは、

 英理華も一度ダブルフォールト。


「ごめんなさーい」


 柿崎に、明るく声をかける。


「いいっすよう。別に」


「はあい」


 4ー2 那央・透也ペアが取る。


 ゲームカウント 2ー2


 次は、透也の二度目のサービスゲーム。


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