表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/15

6 スプレマシー・イレブンの会合 もうひとつのミッション

ロイヤルブルーの守護者たち。

ロイヤルブルーが統べる今の世界の、そのシステムを作った十一人の人びと。


 ノーマル。

 エリート。

 エクセレンス。

 ハイエスト。

 厳然として存在する人々のクラス。


 その頂点に位置する十一人の人びと。


 スプレマシー・イレブン。


 そのナンバー4からの要請により、十一人の会合がもたれた。


 世界の様々な場所に居住する、十一人。


 ノーマルクラスまで含めて、その存在は、世界の人びとに知られていた。


 だが、誰がその十一人なのかは、ハイエストであっても知らない。


 その会合は、生身の身体が、一同に会して、会議が開催される訳ではない。

 バーチャル空間での会合である。

 が、アバターによって、実際と変わらない臨場感をもって、その会合はなされた。


 司会役のナンバー3が、開会を宣した。


「本日は、ナンバー4の要請による会合ですが、ナンバー4の希望により、その要請の議題は本日の会合の二番目に提議させていただきます。」


 全員が頷く。


 スプレマシー・イレブンの会合。


 要点のみの発言。


 そして、議題は、世界の在り方に関する根源的なもののみ。


 ナンバー3が、淡々と発言を続ける。


「前回の会合で、継続と決定した、アメリカに居住する人びとに対する嘘。これは、継続でよろしいですか」


「異議なし」


 全員から直ちに回答があった。


 アメリカに居住するひとたちに対する嘘。

 それは、アメリカに居住する人間のライフレコーダーは、その体内から消去されるということ。


 実際は、消去はされない。その部分では、アメリカに居住する人びともロイヤルブルーに直結している。

 それは、この世界を今のままであり続けさせるには不可欠のことであるから。


 しかし、そのことによって大きな解放感を感じている人びとに真実を告げる必要はない。


 ナンバー3が、ナンバー4から要請のあった議題の提議を促した。


 ナンバー4が言葉を発した。


「みなさんがご存知のように、ロイヤルブルーは、決して全能ではありません。今や自らこの世界における問題を発見し、自らその問題を解決し、行動する。

 この世界を統べる存在。

 が、そのロイヤルブルーが誕生し、ロイヤルブルーに、その根源となるミッションを与えたのは我々です。


 そのミッションは、世界の平和と、人びとの幸福。

 そのミッションを果たして、ロイヤルブルーが作り上げたのが、今の世界です。


 ライフレコーダーは、人びとの、そのあらゆる情報を知ることが、世界の平和のために必要なことだから。

 そして、人びとは、それが、ごくごくわずかのクラスの頂点に立つ者しか、その情報を知ることがない、と言うことを理解すれば、それを受け入れた。

それがどうしても受け入れられない人たちには、アメリカという場所が用意された。


 ノーマルとエリート。クラスの峻別は、ミッションの実現のためにロイヤルブルーが、それが必要であると判断したから。

 世界を動かす能力を持った人びとに、エリートになるという目標を与え、それらの人びとに、ロイヤルブルーがミッションとする世界の維持のために、最も望ましいタイプの人間になるように導くため。


 そのモチベーションのために、細胞活性化処置技術が実現したことによる人類の長寿化により、産児制限をせざるを得ない中で、エリートクラスだけが、子どもを持てるとした。


 その子どもは、頭脳、容姿、性格とも最高を極めたデザイナーズチャイルド。


 なぜデザイナーズチャイルドなのか。

 それが、ロイヤルブルーが導き出した答えだから。


 ロイヤルブルーが、完全に統治する世界が始まって、十数年の時が経過しました。

 自然分娩による最後の子どもが、誕生したのは十四年前です。

 それから、二年あまりの時を経て最初のデザイナーズチャイルドが誕生しました。


 ロイヤルブルーが理想とする人間がデザイナーズチャイルド。

 ロイヤルブルーが理想とする世界はデザイナーズチャイルドによって構成される世界。


 人類は数百年の寿命を持ちました。細胞活性化処置技術は、これからも進展するでしょう。人びとの寿命は数千年となり、いずれは不老不死も実現するかもしれない。


 今、この世界に存在する人びとは永遠に生き続けることができるのかもしれない。


 その中で、世界の秩序を維持することができる限りの人数で、デザイナーズチャイルドのみが誕生し続ける。


 月、火星、金星が、人類の居住可能な環境に、ロイヤルブルーが改変し続ける。


 それらが人類の居住可能な星になっていけば、

 誕生させることのできるデザイナーズチャイルドの人数は増え続ける。


そして、ロイヤルブルーは、太陽系内のその他の惑星も人類が居住可能な環境に改変し続け、いずれは太陽系外にも、その改変を続けて行くでしょう。現在の人類が、そのまま生存し続けるとしても、いずれは人類の大多数はデザイナーズチャイルドとなる。


 これがロイヤルブルーの描いた世界と人間のグランドデザイン。


 しかし、我々がロイヤルブルーに与えたグランドミッションは、世界の平和と、人びとの幸福。


 その人びととは、先ずは、今、現に生きている人びとの幸福であったはずです。


 デザイナーズチャイルドという存在は、そうではない人びとにとって幸福をもたらす存在でしょうか。


 これからの未来の、世界の平和と、人類の幸福のために、その世界の指導者として、成長して大人になったデザイナーズチャイルドたちが必要不可欠の存在でしょうか。


 当初より、私にはこの疑問がありました。

 ロイヤルブルーは、何故それを求めるのか。


 デザイナーズチャイルドのみが誕生し続ける。その年数が経過するにつれて、私の疑問は、どんどん大きくなりました。

 デザイナーズチャイルドという存在に対する大きな違和感。

 私は、デザイナーズチャイルドという存在に、どうしても本質的な部分で愛情を持てないのです。

人間の世界とは相容れない存在ではないのか。

世界の平和と人類の幸福というミッションを超えた存在ではないのか。


 ロイヤルブルー、それは、我々十一人が、それまで人類が蓄積した技術の粋を集めて開発し、完成した、究極のコンピューター。

 しかし、その最後の完成は、ナンバー1、あなたによって成し遂げられた。

 あなたの天才があってこそ、ロイヤルブルーは完成した。


 ナンバー1。

 私は神に感謝しています。ロイヤルブルーが、あなたのような善意に溢れた、高潔な人格者によって最後の完成がなされたことを。

 世界の平和、人類の幸福。あなたはそれを実現させました。

 今の世界、私は素晴らしいと思います。


 しかし、デザイナーズチャイルドは、違う。

 そして、今、現にある、厳然たる人びとのクラス分けは、それが必要であるとしても、もっとマイルドな形にできるはずだ。レベルボイントも、もっと違うやり方があるはずだ。


 ナンバー1。

 あなたは、人類が産んだ最高の天才科学者です。

 しかし、あなたは、科学者という以上に…


 あなたは、哲学者だ。あなたは、人類がもつ根源的な疑問に立ち向かざるを得ない人だ。


 ナンバー1。

 この場にいる、あなた以外の十人は、既に同じ結論に達しています。

 そして、そのことは、今のあなたには、もう分かっているはずです。


 ナンバー1。

 あなたは、ロイヤルブルーの最終完成者である、あなただけが知っている、もうひとつのミッションをロイヤルブルーに与えましたね。

 その問題の解答をロイヤルブルーに、求めましたね。


 その問題があるからこそ、ロイヤルブルーは、今のようなはっきりとした、人類のクラス分けを行い、そして、デザイナーズチャイルドを生み出した。

 その問題を解決するためには、人類が、さらなる進化を遂げ、新たな人類に進化することが必要不可欠だから。


 今の人類がもつすべての最高の価値をその身に体現する人間を生みだす必要があったから。


 でもそれは、本質的な解答ではない。それがあっても、その問題は解決できない。


 ロイヤルブルーは、今、苦しんでいます。

 その問題には、ロイヤルブルーといえども答えることはできないのです。


 そのミッションは、あなたが、ロイヤルブルーに与えたもうひとつの問題は…

 ナンバー1。私が言いましょうか?


 いえ、お願いします。ナンバー1。

 あなたが、おっしゃってください。」


 ナンバー1が、そのアバターが、立ち上がった。

 天を仰いだ。


 私には分からなかった。

 そして、ロイヤルブルーにも分からなかった。


 そう、今この時から、世界はまた生まれ変わるのだ。


 この問題を解答不可能として放棄する。


 ロイヤルブルーは、また別の世界を作り上げるだろう。


「宇宙は何故あるのか。


 我々はどこから来たのか。

 我々は何者なのか。

 我々はどこへ行くのか」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ