10 テニスのダブルス その3
ゲーム間の小休憩。
隣のコートから、三田と藍がやって来た。
ダブルスをやっているコートの、今、英理華と柿崎が座っているベンチの、ネットを挟んだところに設置されているベンチにふたりで座る。
「接戦みたいだね。今のゲームカウントは?」
「4ー3」
柿崎が答える。
「リードしているの?」
「うん」
「そっか、じゃこのあと、見物させてもらおう」
「透也さん、すみません。大事なところでダブっちゃいました」
「いえいえ、ここまで接戦できているのも那央さんのおかげですから」
「そんなことないですよ」
透也は、気持ちよく試合ができていた。もう勝ち負けはどうでもいいな、という気持ちにもなってきていた。
でも、今、ちょっと悄気げている那央を見ていると、勝って喜ぶ那央の笑顔を見たいな、という気持ちになる。
第8ゲーム、英理華のサーブ。
透也のラリーでのサイドアウトと、那央のレシーブミスが続き、サーティーラブ。
このゲームを取れないと厳しくなる。
何とかデュースまで持ち込み、
7ー5 那央・透也ペアが取る。
ゲームカウント 4ー4
第9ゲーム、透也のサーブ。
このゲームは、
4ー2 那央・透也ペアが取る。
ゲームカウント 5ー4 那央・透也ペアのリード。
あと1ゲーム取れば、那央・透也ペアの勝利。
しかし、次は、これまで2ゲームともあっさり取られた柿崎のサーブ。
「透也さん、次のゲームで決めましょう」
「はい、でも柿崎のサーブだから、取るのは難しいですかね」
「その分、取られて元々の気持ちで、思い切ってプレイしましょう」
「なるほど、たしかに」
「それに柿崎さん、サーブの調子の波、結構ありますよ。好調が3ゲームは続かないかも、ですよ」
へえ、いつもよく観察しているんだな。
那央の言うとおりだった。
ふたりの思い切ったプレイ、柿崎のダブルフォールト2回。
4ー1 那央・透也ペアが取る。
ゲームカウント 6ー4
那央・透也ペア、勝利のハイタッチ。
那央の満面の笑み。
三田と、藍が拍手する。
ネットを挟んで、対戦相手の英理華、柿崎と握手。
ふたりとも、にこにこと、何の屈託もない笑顔。
少しは悔しがってくれ。
透也は、そんなことを思った。
「那央さんも、宇野もナイスプレイでした。」
「ううん、負けちゃった。ふたり息ぴったりね。妬けるなあ」
英理華は時々こういう台詞を言う。
「じゃあ、今日はこのままのペアで進めましょう」
と、英理華の提案。
そのあとは、
那央・透也ペア VS 藍・三田ペア でダブルス。
向うのコートで、英理華 VS 柿崎 でシングルス。
那央・透也ペアは、勝利を追求。
総合力では、柿崎より上手い三田ではなく、極力、藍にボールを集める。
藍は必死に対応し、三田がナイスカバーを繰り返すが、三田のサーブゲーム2ゲームのうち、1ゲームが取れただけだった。
ゲームカウント 6ー1 那央・透也ペアの勝利。
英理華 VS 柿崎 は、柿崎に手加減なし。
6ー0 で柿崎の勝利。
このゲームをやっている途中で、もうひとつ隣のコートにも、男の子がふたり入ってきて、練習を始めた。
透也たちと同世代か、一、二歳年上かもしれない。
時々、透也たちのグループのほうに目をやる。
多分、英理華、那央、藍が気になるのであろう。
このあと、
英理華・柿崎ペア VS 藍・三田ペアは、
タイブレークは行わず、
6ー5 で、藍・三田ペアの勝利。
ペアをトータルしての技量であれば、英理華・柿崎ペアのほうがはっきりと強いはずだ。
英理華と柿崎は、ゲームがより盛り上がるように、特に、最も技量に劣る藍が、できるだけ楽しくプレイできるように心がけていることがよく分かった。
那央と透也のシングルス。
那央は、ダブルスの時と同様、とても楽しそうにプレイしている。透也も嬉しくなる。でも勝負は真剣。
6ー3 透也の勝利。
そのあと、軽くクールダウンの練習をして、テニスは終了。
六人揃って、コートに併設されたクラブハウスに向った。
このあとは、各々シャワーと着替えを済ませて、クラブハウス内の喫茶ルームで、六人でお茶をする予定だ。
「あのう」
隣のコートで練習をしていた、男の子ふたりが声をかけてきた。
「みなさん、エリートクラスの方ですか?」




