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1 透也の日常(バーチャル)

数日前に完結済の「ロイヤルブルー 完全なる世界」

と同じ話です。

ただ前記作品は、完結後いくつかの箇所を加筆。特に第11部分とラストの第15部分はかなり加筆しましたので、その加筆部分は反映しております。


完結後ネットで、その作品の主要キャラクターと、同姓同名の名前がコミック等複数の作品で既に使われている名前であることを発見いたしました。

そのままでもいいかな、とも思ったのですが、一応、キャラクターの名前の変更版をアップして、こちらを決定版として保存しておこう、というのが目的です。


タイトルについては、書き上げてみて、完全なる世界というのは、内容にそぐわないな、と思いましたので、

単に「ロイヤルブルー」とします。

書いている中でロイヤルブルーがずいぶんと人間的になってしまったなあ、と思いますが、作者としては、これでいいかなと思います。


キャラクターの名前は、全体の統一したイメージで、個々にネーミングしておりますので、ひとりを変えることにより、他のキャラクターの名前も概ね変更しております。

作者の変なこだわりで、申し訳ありません。


以下2020.5.28記

タイトルに、「近未来、労働なき世界」を追加します。

透也は、覚醒めた。

 睡眠時間は、七時間。

 透也にとって最も快適な睡眠時間。


 透也は、ベッドから起き上がった。

 バスルームに入り、リクライニングシートに横たわり、壁に並ぶスイッチの中から「ALL」を押した。


 昨日とは違う、しかし、透也の気持ちをリラックスさせるという点では昨日と同様の音楽がバスルーム内に静かに流れた。


 リクライニングシートが緩やかに動き、自動装置により、パジャマと下着が取られ、数分間で、洗髪、全身洗浄、口腔内清掃が終わった。

 その時間内で残存便、残存尿も体外に排出され処理された。


 透也は、全裸のまま、バスルームに隣接されたフィッティングルームに入り、その部屋にも設置されているリクライニングシートに横たわった。

 リクライニングシートが、また緩やかに動き、下着、シャツ、スラックス、上着、靴下が、透也の体に装着された。


 透也は、壁の全身鏡に自分の姿を映した。

 彼の趣味にピッタリ合っていた。

 配色も品が良かった。


 深く考えていた訳ではなかったが、そのおのれの姿を見て、透也は、自分は今日、まさにこういう格好をしてみたかったのだ、と思った。


 食事室に入った。

 両親は既に席に着いていたが、それは数分前のはずだ。


「おはようございます」

 透也は、朝の挨拶をした。

 両親がにこやかに応答する。


 父の総也は、四十八歳。外見も年相応。

 母の頼子は、四十五歳。しかし、その外見は三十歳前に見える。

 頼子は、昨年、細胞活性処置を実施したのだ。

 総也は、その処置はもう少しあとでする、と言っている。


 調理を終えた給食ロボットが、朝食を配膳する。

 バターとジャムの塗られたトースト、ハムエッグとサラダ、

 コンソメスープ、カフェオレ。


 平凡な内容だが味は素晴らしい。そして適量。


 総也が、透也に話しかけてくる。

「透也、今日はリアル? バーチャル?」


「今日は、バーチャルにします」


「そうか。アクセプトかな? それともクリエート?」


「クリエートにします。途中で疲れたらアクセプトに切り替えると思います」


「そうか。先日のクリエートの際は、絵画だったね。うん、あの絵は静謐な情感があって、いい絵だった。

今日は何にするのかな?」


「今日は、小説を書いてみようと思います」


「へえ、それは楽しみだね。出来上がったら読ませてください」


「はい、ありがとうございます。」


「もうすぐ透也の誕生日だね。でも無理はしないようにね。お母さんもお父さんも今のままの透也でよいのだからね」


「はい」


 そう、透也はもうすぐ十五歳になる。誕生日の前は、毎年緊張する。

 その緊張も、今度の誕生日で終わりにしたい。


「お父さんとお母さんは、今日はどうされるのですか?」


「リアルです。頼子さんとふたりで、街に行ってみます。」


「それはいいですね」



 朝食が終わって、透也は、自分専用のプレイングルームに入った。


 椅子に座り、部屋に置かれたモニターに向かって、

「クリエート ノベル」

 と声をかけた。


 モニターの画面に、順次、質問が映しだされた。

 透也は、その質問に答えていった。

 透也の書こうとする小説の、ジャンル、舞台設定、キャラクターが、決められていく。


 透也は、旧世界の歴史をモデルにした、英雄たちの戦いをドラマチックに描いてみたかった。そして、その英雄たちと美女との様々なロマンスも描いてみたかった。

 しかし、そのタイプの物語は評価が低いということも認識していた。

 自分がそのような物語を好む人間であると知られることは、避けなければならない。

 十二歳頃まで、透也は、その類の物語を好んでアクセプトし、クリエートした。


 しかし、その種の類型的で、旧世界の物語で好まれた価値観を包含したような物語は、ロイヤルブルーの評価が低いということを認識してからは、透也は、そのような物語は、アクセプトもクリエートもやめた。


 旧世界の歴史で、稀に存在した平和とよべる時代。その時代に材をとった、高いレベルの歴史愛好家でなければ理解できない経済的思想の論議。

 生命をかけた戦いではない。モデルとした時代の、その時代的制約の中で、人々がより豊かな暮らしをするためには、どのような経済政策をとるべきか。


 それが、今日、透也が創作しようと考えている小説のテーマだった。

 登場人物は、穏やかな性格、高潔な人格者。

 高度だが、穏やかで品格のある経済的論戦。


 女性たちも登場する。

 知的で魅力的な女性たちとの穏やかな恋愛。


 そして、上質な機知に溢れた会話。


 目の前のモニター、もちろん、今の世界のすべてを統べるメインコンピューター「ロイヤルブルー」に直結している。

 画面にラストクェスチョンが映し出された

「下書きレベルは?」


 透也は答えた。


「レベル30」


 レベル100と答えれば、透也が質問に答えていった設定を条件として、「ロイヤルブルー」は、芸術的に、最高の物語を創作する。


 レベル30とすれば、「ロイヤルブルー」が、そのレベルで創作した下書きに、透也は相当な部分、手を加えることになる。むろん、それで透也に、レベル100の物語を創作する能力があるはずもない。


 しかし、透也が、その下書きからかなりのレベルまで高めた物語を創作することができれば、それは大きなアピールになる。


 父も母も、そして透也もノーマルクラスの人間だ。


 各々の人間のレベルは、「ロイヤルブルー」が決定する。


「ロイヤルブルー」には、この宇宙が開始して以来の、人類の知ることのできたあらゆる情報がインプットされている。


その中には、思想も宗教も芸術も、究極の価値、真善美。「ロイヤルブルー」は、それらさえも判断する。価値付ける。


  「ロイヤルブルー」は、最も素晴らしい世界、最も素晴らしい人間のグランドデザインを、持っていると言われている。

 そして、「ロイヤルブルー」は、その価値観により、個々の人間のレベルを決定する。


 能力だけではない。どれだけ高潔な性格かということも、その判断に関わっている。容姿も関わっているのではないかということも密かに言われている。


 透也の父も母も、そして透也自身も、そのレベルは、ノーマルクラス。


 しかし、十四歳の誕生日、「ロイヤルブルー」が告げた透也のレベルは、98.7


 これは、透也は、百人の中で、二番目に相当するレベルにいる、ということを意味する。


もっとレベルポイントが低ければ、透也の年齢であれば、ロイヤルブルーから一定時間以上、決められたラーニング(学習)をアクセプトしなければならない。

が、透也は、決められた基本ラーニングについては、既に十八歳相当分まで修了済だった。


ゆえに、もうなんでも自由にアクセプトできる。


透也は、透也にとっての趣味的内容とともに、その知的好奇心により、どんどんと高度なラーニングに類する内容のものもロイヤルブルーからアクセプトしていた。


 間もなく十五歳の誕生日。


 透也のレベルが、99を超えたら、透也は、百人の内、一人しかなれないエリートクラスの人間になれるのだ。


 透也の体内には、誕生と同時に、ライフレコーダーという極小チップが埋め込まれている。


 誕生以来、透也が見聞きしたこと、そして、透也の行動、言動は、全て「ロイヤルブルー」に直結しているのであった。


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