表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/41

第18話 蛇の魔導士



 ムサシスタッグの整備・改造が済み、いよいよこの街から出発する日になった。

 王都まではあと数日の距離。

 僕たちは街の正門でムサシスタッグに乗り、クラーム先生を待っていた。


「そういえばクロウ。

 クラームさんはどうやって王都へ行くつもりなのかな?」


「……そういえば、聞くの忘れてたな。

 ムサシスタッグに一緒に乗る気か?」


 スペース的に不可能ではないが、コクピットは寝床も兼ねている。

 3人で横になるには流石に狭すぎると思うが。

 考えていると、クラーム先生の声が聞こえてきた。


『二人とも、お待たせー!』


 声の主は、赤褐色の巨大な蛇。

 もちろんクリーチャーギアだ。


「先生、そのクリーチャーギアは……?」


『元々王都に行く予定だったって言ったでしょ?

 クリーチャーギアくらい持ってるわよ。』


「そう簡単に買えるものでもないと思うんだけどな……」


「なんて機体なの?」


『この子?

 "カースコブラ"って言うのよ!』


呪う蛇(カースコブラ)……縁起でもないと言うべきか、魔導士らしいと言うべきか……

 というか、どうやって手に入れたんだ?」


『まあ、そこら辺はおいおいね?

 とりあえず、出発しちゃいましょう!』



●●●



 その日の夜、街道途中にある広場にて。

 ここまの旅ではほとんど他人と会わなかったが、王都に近いだけあって、ここでは複数のクリーチャーギアが泊まっていた。


 簡単な夕食を済ませた後、クラーム先生はムサシスタッグのコクピットに来ていた。


「で、あの機体(カースコブラ)

 村を出た時は持ってなかったよな?」


「仕事の報酬代わりにもらったのよ。」


 事もなさげに言うが、クリーチャーギアはたとえ中古であっても非常に高価な代物だ。


「……魔導士の仕事って、どんなことをするの?」


 セレンが問う。

 もっともこれは、『どんな仕事でそんな報酬を?』という意味ではなく、純粋に魔導士という職業について聞いているんだろう。


「魔力がらみのことなら色々やるわよ。

 占いの他にも、薬を作ったり、魔力を込めて魔弾を作ったこともあるわ。」


「魔弾って魔導士の人が作ってたの?」


「そうよ。

 他にも、クリーチャーギアの魔導炉ジェネレータや神経系を専門に造ってる人とかもいるわね。

 私はその手の仕事はしてないけど。」


「ちなみに、領主様の街の工房にも何人かいたぞ。」


「え、気づかなかった……」


「工房の魔導士は技師と同じ作業着だもの、ぱっと見魔導士っぽくないからねえ。」


 そこまで言って、先生は小瓶の酒をあおった。


「で、私がやってるのはどっちかっていうと古典的な…… クリーチャーギア発明以前のスタイルの魔導士よ。」


「占いが得意って言ってたもんね。

 未来がわかるの?」


「ぼんやりとだけどね。

 人にもよるんだけど、私の場合『未来の変えられない部分』が見えるの。」


「変えられない?

 それじゃ意味がないんじゃ……」


「一見するとそうなんだけどね?

 例えば、『ある村に竜巻が来る』ことが見えた場合、それは変えようがないでしょ?」


「うん。」


「でも、村人を避難させることはできるよね。」


「あ、そっか。」


「何かが起こることはわかるけど、結果どうなるかはその人次第。

 そもそも、占いを聞いたことで変化する『結果』なんて、知りようがないでしょ?」


「ちなみに先生は、村にいた時はよく天気を占ってもらってたよ。

 百発百中で当たるもんだから、木こりや農夫にものすごくありがたがられてたんだ。」


「へぇ……」


 セレンへの説明が終わったところで、一番気になっていた本題を切り出す。


「で、先生。王都で起こる大騒動ってのは、いったい何なんだ?」


「占いで出たのは『巨大』と『混乱』。

 いつもはそこからカンが働くんだけど、今回は『何が起こるか』もぼんやりしてるのよね。」


「……何?」


「多分、災害だと思うんだけど……

 私も知らない種類の災害なんじゃないかな。」


 のんきに言っているが、未知の災害だって?


「それじゃ、王都に向かうのは危険すぎるんじゃないか?」


「そりゃ、私もすぐに避難するわよ。

 でもその前に、危険が迫ってることを知らせないといけないでしょ?

 それともう一つ。

 何が起こるか、はっきり見えない理由に心当たりがあるの。」


「心当たり?」


「『誰かの行動で規模が変わる』タイプの災害なんじゃないかって。

 竜巻そのものは人間の力で小さくすることはできないけど、今回は人間の力で小さくできる災害なんじゃないかしら。」


 人間の手で小さくできる災害。

 それは、誰よりも僕自身……というより、前世の僕(ホーガン)が知っているもの。

 クリーチャーギア発明前は、人類が手も足も出なかった災厄。

 クリーチャーギアの発明によって、人類が対抗できるようになった災厄。


「まさか……メガビースト!?

 クリーチャーギアが普及して、防備が万全なこの時代に?」


「私もまさかとは思うけど……

 いずれにせよ、知り合いの貴族に話してみようと思って。

 一応手紙で連絡は取ったけど、事が事だけにね。」


 確かに、うかつな情報の広がり方をすれば王都がパニックになってしまう。

 直接行って話すべき内容だ。


 話が一区切りついたところで、セレンが手を上げた。


「ねえ、その占いって過去は見えるの?」


「あぁ、セレンちゃんは記憶がないって言ってたものね……

 ごめんなさいね。

 私に限らず、占いでは過去は見えないものなの。」


「そうなの?」


 もし、過去が見えるなら、セレンが誰に何故造られたかもわかったのだろうが、残念ながらそうはいかない。


「先生が前に言ってたっけ。

 過去を見る魔導が仮にあったとしても、未来を見るのとは全く別の種類の魔導になるって。」


「ええ。

 そして先人たちは、未来を見るためには何千年も努力してきたけど、過去を見る魔導を研究してこなかったから……

 どこかの天才が一代で発明してみせたら、話は別でしょうけどね。」


「……クリーチャーギアみたいに?」


「あれはまさに、天才が何百年も技術を進めた例ね。」


 クリーチャーギアという存在を生み出せたことは誇らしい。

 だが、前世ホーガンの話題になるのは、少々気恥しい気もする。


「そうだ、代わりにセレンの未来を占ってもらうのはどうだ?」


「そうね。人生はすぐに変動するから、とってもあいまいなことしか見えないけど。

 話のタネにはなるわよ?」


「いつ死ぬのかわかるの?」


「セレンはいきなり強烈なことを聞くなぁ……」


「寿命は見えないわ。

 というか、『寿命』ってものは存在しないの。一番簡単に変わりやすいことだもの。

 極端な話、人間その気になれば今すぐ死ぬことだってできるでしょう?

 だから、人の未来は本当にぼんやりしたことしか見えないのよ。」


「怖くない?」


「大丈夫、怖くない怖くない。」


「じゃあ、やってみて。」


「ええ、ちょっと待ってね。」


 先生はポーチから鉄製のカードを取り出した。


「カード?」


「先生の占いはカード占い。

 36枚のカードを使って、引いた札から連想して未来を直観するんだって、前に言ってた。」


「いくわよ……」


 カードの束をシャッフルし、それを宙に放り投げた。

 鉄のカードは重さを無視するようにゆっくりと落ち、36枚の内、2枚だけが表向きになっていた。


「カードが示すのは『転機』と『旅人』……」


 先生は2枚のカードを顔の前に持ってくると、目を閉じた。


「……近いうちに何かが起こり、目的、立場がひっくり返る。

 王都に着いた後も、貴女たちの旅は終わらない……ってことかしら。」


 鉄のカードがふわりと宙に舞い、元の束へと戻っていく。


「……なんだか大変なことになりそうだね。」


「他人事みたいに言ってるけど、セレンの未来だからな?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ