表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/41

第16話 故郷の恩師



 森を抜け、次の街に着いてから丸一日が経過した。

 僕は民間の工房と交渉し、ライトソルジャーの残骸一つと引き換えに場所と工具を融通してもらっていた。


「あの隊長が乗っていた機体……調べてみたら、『ヘヴィソルジャー85式』っていう、35年前に採用された機体みたいだ。

 出力はそこそこあるけど、重量はかなり重い。

 それであれだけ動けるんだから、あらためて乗り手の腕前に感心するよ。

 あれほどまで性能の限界を引き出せる人、まずいないだろうな。」


「へぇ……

 そこまですごい人だったんだ。」


「一度会って、話をしてみたいもんだ。」


 分解したヘヴィソルジャー・ライトソルジャーの部品は、ムサシスタッグの予備部品としてある程度確保し、残りは売却することにした。

 手元に残したのは汎用部品の他、長剣、魔導銃、盾、一部の装甲。


「正規軍用の魔導銃が2丁手に入ったから、野盗が使ってた衝撃弾用のヤツと交換しよう。 

 シンプルなのも悪くないけど、多彩な魔弾を使えるのはやっぱり魅力的だ。

 あとは装甲。

 重量のバランスさえ合ってれば、機動性は維持したままもう少し装甲を増やせるはず……

 長剣と盾はモノが良いから、どこかで使い道が……」


「クロウ、わたしが手伝うことはある?」


 セレンに問われ、少し考える。

 今日の主な予定は、改造プランの概略図を描くこと。

 多少の力仕事は工房据え付けのクレーン型クリーチャーギアを使えば済む。

 重量バランスの計算は手伝ってほしいが、こちらは明日でいい。


「うーん…… 今は特にないかな?

 何かやりたいことがあるのか?」


「うん。

 わたし、一人で街を歩いてみたい。」



●●●



~セレン~



 わたしが起動してから、ほぼ1カ月が経つ。

 一人きりになるのは、初めてのことだった。


「……が……でさー。」


「へぇ、そうなんだ? でも……」


 断片的に耳に入る、知らない人同士の会話。


「いらっしゃい!

 どうだい、そこのお姉さん! 見るだけでもいいから!」


 店先に並んだ、知らない物。

 クロウといるときには、気づかなかったもの。

 いつもと違うって、新鮮な気分。

 機械であるわたしが『気分』なんていうのも、おかしなものだけど。


「あっ。」


「あら?」


 余所見をしていたから、人とぶつかりそうになった。

 とっさに避けたけど、無理な動きをしたので転んでしまった。


「大丈夫?

 ごめんなさいね。」


「いえ、わたしが勝手に転んだだけだから。

 それに、怪我はしてない。」


 ぶつかりそうになった相手は、20歳半ばくらいの赤髪の女性だった。

 自分の美的感覚に自信はないが、多分、相当な美人なんだと思う。

 プロポーションも抜群で、それを見せつけるような服装だ。


「でも貴女、服が少し汚れてしまっているわ。

 ほら、ここ……あら?」


 女性はわたしの服を触り、そこで手が止まった。


「貴女、もしかしてクワガタの村から来たの?」


「……どうしてわかったの?」


「この生地きじの模様と染め方、あの村独特の物なのよ。

 懐かしいわね。私もあそこの出身なの。」


「あの村の……?」


「あら?

 でも、あの村に貴女くらいの歳の女の子なんていたかしら?」


「あの、わたしは……」


 どうしよう。

 クロウは正体を隠さなきゃいけないって言ってた。

 だけど、人に聞かれたときなんて言い訳しようか、考えてなかった。


「もしかして、領主アラウィズの街の子?

 クワガタの村の人から貰ったとか?」


「あっ、そう!

 クロウのお母さんに貰ったの!」


 よかった。

 不自然にならずに、なんとか話を繋げられそうだ。


「クロウ?」


「あ、えっと、クロウっていうのは……」


「クロウって、あの『守り神様』にいっつも張り付いてたクロウ?」


「知ってるの?」


「知ってるも何も……あの子にクリーチャーギアの乗り方を教えたのは私よ。」


 クロウに?

 言われてみれば、本の勉強は一人でできても、実際にクリーチャーギアを動かすのは誰かに習わないと無理だ。


「私はクラーム。魔導士をやっているの。

 貴女は?」


「わたしは、セレン。

 クロウの――」


 言いかけて、言葉に詰まる。

 わたしは、クロウの何なんだろう?

 クロウは、煙突の村でわたしを紹介するときは『姉だ』と言っていたけど、この人に嘘は通じない。

 今日は、今まで考えたことのないことばかり考えてる気がする。


「……友達?」


 とりあえず口に出してみたけど、なんだか違う気がした。



●●●



「久しぶりね、クロウ。」


 作業中に声を掛けられ、手を止める。


「え? ……クラーム先生!?」


 話しかけられた声が予想外のものだったため、認識するのに少し時間がかかった。

 子供のころ、僕に様々な知識を与えてくれた近所のお姉さん。

 セレンが、その人を連れて戻ってきたのだ。


「聞いていたけど、あらためて見ると驚くわね。

 本当に守り神様を動かしたなんて。」


「どうして先生がここに……

 セレンが連れてきたのか?」


「うん。

 街を歩いてたら、偶然知り合って……」


 クラーム先生はセレンの頭をなでている。


「随分立派になったものねぇ。

 こんな可愛い恋人まで連れて……」


「恋人!?」


 聞き捨てならない発言が、先生の口から出た。

 一方セレンは、首を横に振っている。


「違うよ?

 わたしは友達だって言ったんだけど……」


「こんな美人さん捉まえて、しかも2人きりで旅してきたんでしょ?

 恋人じゃなかったら何だって言うのよ!」


「……って言って、きかなくって。」


「あー……」


 そういえば、先生はこういうところがあった。

 勝手に恋愛と結び付けて思い込む癖というか、妙なおせっかいを焼きたがるというか……


「それで、あらためて聞くけど……

 先生は何の用で?」


「王都に行くんでしょ?

 私も丁度王都に行こうと思っていたから、一緒に行こうと思ってね。」


「先生が?」


「ええ。

 近いうちに、王都で何か大騒動が起きるみたいよ。」


「大騒動って……」


「知ってるでしょう?

 私の占いはよく当たるって。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ