表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/41

第13話 熱風の甲虫



 なるほど、これは村の人も困っていたことだろう。

 なにしろライノホーンは鉱山の入り口、そのド真ん前に陣取っていたのだから。


「VoOoUuuuu……!」


 既に距離は100メイルほど。

 いかにお互い鈍足とはいえ、メガビーストとクリーチャーギアの巨体にとっては近すぎる距離だ。


「大きいね。

 キチジさんと会ったときの……ヴェロキールだっけ。

 あれの倍くらい?」


 ゴーグル型デバイスの計算では全長30メイル、全高18メイルほどと出た。


「ああ、メガビーストの中でもかなりの重量級だ。

 ヴェロキールは軽量級の部類で、あの時はキチジが疲弊させてたおかげもあったけど……」


 まずは飛び道具で先制攻撃してみる。

 左右の魔導銃から、衝撃魔弾を2連射。

 頭部に直撃したが、


「やっぱり、衝撃魔弾程度じゃビクともしないか……」


 分厚く頑丈な皮膚には傷一つついていない。

 しかし、ダメージはなくとも敵意は伝わったようだ。

 ライノホーンが突進してきた。


「来るよ、クロウ……!」


 速度は遅くとも、小山に等しい巨躯が迫ってくるのは凄まじい圧迫感がある。。

 だが、ムサシスタッグなら――


「……捕えた!」


 6本の脚を突っ張り、正面からライノホーンを迎え撃つ。

 一本ヅノがムサシスタッグに届く直前。巨大な鋏が逆にライノホーンの首根っこを捕えた。

 衝撃で機体が揺れるが、ライノホーンの足は止まる。


「VOoo!?」


「このまま締め上げる!」


 レバーを操作、さらに魔力を注ぎ込み、出力を上げる。

 ミシミシと骨がきしむ音が鳴る。

 ライノホーンも必死に体を突っ張り、抵抗するが、少しづつ鋏の食い込みは深くなっていく。

 楽な仕事だったな、と思いかけた時、


「Voooooooooo!!」


 ライノホーンが、鋏を食いこませたまま前進を始めた。

 鋏に出力を集中しているため、踏ん張りが効かず、押され始める。

 ムサシスタッグの背後には、壁状に切り立った岩肌。


「こいつ、まだ抵抗を……!

 崖で挟んで押しつぶす気か!?」


 ムサシスタッグの強度なら、押しつぶしを十分に耐え抜き、このまま締め付けて殺すことはできる。

 だが、機体のフレームや駆動部に相当な負荷がかかってしまう。

 そうなれば、長期整備はまぬがれない。


「折角直したばかりなのに、また工房送りは御免だ……!」


 クリーチャーギアを整備するのは嫌いじゃないが、壊されるのは嫌いなんだ。


「丁度いい、あの(・・)機能の実地テストだ……!

 『強制放熱』!!」


 音声コードの入力により、ムサシスタッグが変形する。

 いつもの人型形態ではない。

 装甲板の隙間を開け、角度を変えるだけの小さな変形。


「Voo?」


 直後、ムサシスタッグの全身から、高温高圧の蒸気が噴き出した。


「VoOOOooooooooooo!!?」


 至近距離でそれを浴びたライノホーンは苦悶の叫びを上げた。


「元々は、パフォーマンス低下の予防につけた放熱機能だけど…… 使い方次第で武器にもなる!

 生物なまもの相手なら殊更ことさら効くなぁ!!」


 蒸気として放出しているのは、魔導銃の改造用に提案した特製の冷却液だ。

 気化しやすく、少量でも放熱効果が大きい。

 使い捨てのため使用回数に制限はあるが、デメリットはほぼゼロだ。


 顔面に蒸気を吹き当てられて平気でいられる生物せいぶつなどいない。

 とっさのことに鋏に対抗する筋肉の突っ張りが弱まり、一気に鋏が閉じた。


「VoOoo……!!」


 首に深々と食い込んだ鋏は頸椎に達し、そして切断した。



●●●



「おおぉ……!

 本当に倒しおったわ……!」


 村長他数名の村人を呼び、死骸を確認してもらう。


「ありがてぇ……!

 このまま鉄が採れないようじゃ、村が干上がっちまうところだったからな……!」


「いやぁ、驚いた!

 虫型クリーチャーギアっていっても、使い方にもよるもんだなぁ……!」


「うむ、わしの言った通りじゃろう?

 虫型でも強いものは強いんじゃ!」


「いや、真似はお勧めしませんけどね?

 クワガタ独特の戦法ですし、結局出力任せなところもあるし。」


 喜び、興奮する村人に一応釘を刺しながら、僕自身も結構満足だ。

 ライトソルジャーから取った部品の質が良いおかげか、想定よりもムサシスタッグの調子が良かったからだ。


「むしろ、100年前より調子が良い……?」


「クロウ、何か言った?」


「あ、いや、何でもないよ。」


 いかん、独り言をセレンに聞かれてしまった。

 別にバレて困る正体でもないが、説明が厄介なことに違いはない。


 ともあれ、仕事は完了。

 報酬を貰って……


「折角だし、名物の鋼材でも買っていこうかな。」


 さっき、思いついたアイディアがある。

 どこかで加工機械を借りるまでは形にできないが、ムサシスタッグの積載量なら多少の荷物が増えても問題ないはずだ。



●●●



~煙突の村の村長~



 ライノホーンが退治された翌日。

 村の者は、遠くに去っていく深緑のクワガタムシを見送っていた。

 その内の一人が口を開く。


「しかし……村長の昔話の通りだったな……」


「うむ、わしも驚いておる……」


 クワガタムシ型クリーチャーギアに乗っていて。

 フラッと村にやって来て。

 メガビーストを倒して村を救い。

 鋼材を買って、去っていった。


「村長が子供のころ、爺さんから聞いたって話とまったく同じなんだからな。」


「ああ、不思議なもんだ。

 違うことといえば、昔話だと老人で、今は子供ということぐらいか?」


 ふと、祖父がこの昔話を語っていた時の顔を思い出した。

 今、目の前にいる村の衆と同じように、興奮に目を輝かせていた気がする。

 我々にとってあの少年がヒーローのように感じたのと同じで、祖父にとってはその老人がヒーローだったのだろう。


「もしかしたら、あの少年。

 100年前の老人の生まれ変わりかもしれんのう。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ