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「なぁ、賢者さんよぉ?いつになったら勇者と聖女に会えるんだ?」

大賢者アクトの悩み


僕は賢者アクト=クー=カニング。


大賢者アクトと呼ばれている。僕は今とても悩んでいた。




何度やっても、何度やっても、勇者は召喚できなかった。


どうやっても、どうやっても、聖女も召喚できなかった。




賢者の塔にやってきた勇者と聖女の仲間になる冒険者たちは苛立ちを隠せずにいた。


「なぁ、賢者さんよぉ?いつになったら勇者と聖女に会えるんだ?」


と詰め寄るのは王国一の剣士と名高いラファエットだった。




「あ、あと一月お待ちいただければ」


どうしよう。魔法陣作っても、生贄ささげても、呪文を保険のため3倍の時間詠唱しても、煙と共に現れるのは何かの文字が書かれた紙ペラ一枚だけで、それらしい人間はどこにも出てこない。




「あのさー、魔法陣書いて召喚の儀式するのに半年もかかるわけ?」


と軽蔑のこもった眼差しで僕を見る魔女のサラディーナ。




「はいとしか申し上げようがないのですが……」


くそ、なんで勇者と聖女、出てこないんだよ!泣きたいよ僕は。




ドンッと机を叩いてガラの悪い目つきの悪い男が


「ふざけんな!勇者の仲間なめてんのかっ。納期守れや、コラ」


と僕を怒鳴りつける。盗賊のダミエルだ。




「ははは、異世界の召喚リスクを私が全部背負うことはできないと契約書にありますし」と言い訳する僕。




「悪魔の召喚じゃねーんだぞ?女神にお願いするだけの簡単な仕事だろっ」




そうだとおもったんだけどなぁ。


安請け合いしすぎたなぁ。とほほ。半年もかかると思わなかったから、赤字だよ。




僕は王都の大賢者。ってきくと金持ちそうだろ?でも実情はそうでもないわけ。


賢者は儲かるって勘違いする人多いみたいだけど、原価結構かかる商売なのよね。


専門書は高い。魔法陣を書くための塗料は特殊。おまけに希少な生物の生贄……。




くそ、こうなったら。もう、王都で適当に人みつくろって勇者と聖女に仕立て上げるか!とやけになる僕。あ、意外といい考えかも。




こうして僕は王都の賢者から悪徳賢者にジョブチェンジをすることになった。


その方が儲かりそうだし、客がうるさいのが悪い!もう真面目に賢者なんてやってられるかってなもんだ。




よし、こいつら勇者と聖女の仲間たち候補が帰ったら早速人選にとりかかろう。




魔王が倒せなくて困ったって、僕が死ぬまで世界が滅びなければノープロブレムだ。




僕は召喚した紙ペラに「日本語」という謎の言語でこう書かれていることにその時はまだ気づいていなかった。だってさ、日本語って難しいし。




「女神です。ご迷惑おかけしております。勇者と聖女の候補が日本で『いまのところ』死ぬ気配がないので、お時間頂きます。二人とも準備が整い次第魔法陣に送ります。なにとぞご容赦お願いいたします。」




本物の勇者と聖女が現れて、はちゃめちゃな事態に陥るのはまた後の話。


まぁ、全然後悔なんてしなかったけどね?




「今も召喚作業中です。その業務に支障がでますから、今日のところはなにとぞ、お許しください」


というと、勇者と聖女の仲間たちはそれぞれ、罵詈雑言を並べながら、


「っち仕方ねぇな」と言い、去ってくれた。ふー、たく、客だからっていい気になるなよな?こうなったら思いっきりの不良品を納品してやるからな、今に見ていろよ!




僕はそう思いつつ魔法の水晶玉を起動し、必要な情報を音声入力していく。




「世界一のビッチで聖女に見える女」


水晶玉は光を放ち、しばらく時間を置いて、一人の少女の姿を僕に見せる。




次、


「世界一のクソ野郎で勇者に見える男」


現れる一人のイケメンの顔。




くくく。大賢者アクト様を怒らせてただで済むと思うなよ!


さぁ、彼らを早速スカウトに行こうか。

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