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再戦

「ハァッ!」

 シズクちゃんの繰り出した剣の攻撃はリーダーの肩口を貫いていた。

 そのまま身体を捻って剣先を無理やりに引き抜くと、その勢いを載せてもう一方の剣で突き攻撃を繰り出す。

 まだまだ動きは覚束ないところもあるが、<双剣>によるラッシュで少しずつ敵の体力を削っていく。

 攻撃特化型というだけあって自分の<盾剣>よりも与えるダメージが大きい。いや、削れ方が早いのだ。

 単純に考えれば攻撃チャンスが二倍ということか……? というのはさすがに安直が過ぎる気もするな。

 リーダーが後方のシズクちゃんへの警戒を優先するつもりか、グルリと身体を反転させた。

 振り向きながら角材の一撃がシズクちゃんに迫るものの、ギリギリのところで回避して反撃に移る。

「……ウグッ!」

 その動きが急に止まった。……いや、今のは敵の攻撃によって止められたのだ。


「蹴りか!」

 シズクちゃんの腹部にリーダーの蹴り攻撃が叩き込まれたらしい。

 武器ばかりに注意を向けていたのが失策だった。武器を持っているのだからそれ以外の方法で攻撃してこないと勝手に思い込んでしまっていた。

「シズクちゃん大丈夫!?」

「痛くはないから大丈夫です! すっごくびっくりしましたけど!」

 体力は大きく削られたものの、治癒薬を使って安全域まで回復させているのを確認して胸をなでおろす。

 シズクちゃんは後ろに下がり、リーダーの蹴り攻撃を警戒しているようだ。

 しかし、まだリーダーはシズクちゃんを狙う気のようで少しずつ間合いを詰めていく。

 これはオレがリーダーの背後をとるチャンスが来たということだ。ただ、それでも安易には飛びつかずに状況を把握するのが先決だろう。

 今までシズクちゃんの動きを見ていたが、この子はどうにも攻めっ気が強すぎる。<双剣>使いの気質としては性に合ってるのかもしれないのだが、まだまだ危うい。

 なら、ここは盾を使って安全を確保できる自分が無茶をするほうが多少はいいハズだ。


 音を立てないように静かに剣を持ち上げ、切先をリーダーの背中へと向ける。シズクちゃんに攻撃の意思を伝えるためだ。

 コクリという小さく頷いてくれた。そして、一拍の間を置いてから全力でとびかかる。

「オラァッ!」

 右手で剣の柄をしっかりと握りこみ、左手は柄頭をしっかりと抑える。

 距離こそ短いものの体重を乗せた一突きが“瓦礫の兵士”の背面を貫いて、反対側から剣先が僅かに飛び出す。

 手ごたえは大きい。敵の背中を蹴るようにして深々と突き刺さった剣を引き抜く。


 リーダーの視線がこちらに向いた。

「ん?」

 この動きはさっきも見た気がするな。身体を反転させながら角材を振り下ろす攻撃が来るハズだ。さっきシズクさんのほうを向いたときと同じならではあるけれども。

「ドンピシャ……!」

 どうやら推測は当たっていたようだ。読み通りの振り下ろし攻撃に合わせて盾を構えて攻撃を横に逸らす。

 すかさず[反撃]による盾突き叩き込み、そのままの勢いを乗せて跳躍。

「チャンス!」

 渾身の振り下ろし攻撃を叩き込む。敵の頭部を打ち抜く一撃で敵の耐久力を大きく削り取った。


 <盾剣>が強いといわれるのも納得できる話だ。

 落ち着いて敵の動きを観察し、行動パターンや対処法を探れるという点が非常に優れている。

 ボスなどの耐久力が桁違いの相手と真っ向勝負の削り合いで勝てるわけがないのだから、いかにして勝機を見出すかの戦闘には持ってこいだ。

「シズクちゃん、正面は蹴りが来るから注意! 横に回り込んで攻撃するんだ!」

「おぉ、オッケーです!」

 パターンはおおよそ見当がついた。

 角材を振り回す攻撃は全体的に予備動作が大きい為、回避が容易だ。故に気を付けるべきなのは素早く繰り出される蹴り攻撃になる。

 蹴りは対象が正面近くに居るときには使えるが、そこ以外を蹴ろうとすれば姿勢に無理がでる。側面や背後から攻め込むのがよさそうだ。


 それからのシズクちゃんの行動は早かった。

 敵の左側面に滑り込むようにして潜り込むと、双剣による連撃を右左交互に繰り出していく。

 リーダーは武器を右手で持っている為か左側面への攻撃は僅かにだが遅い。武器を構える動きを見てからでも十分に避けられそうだ。

「シズクちゃん、屈んで!」

「ハイッ!」

 態勢を低くしながらのステップ移動でリーダーの横振りの攻撃を回避する。

 前に進む勢いを使った<双剣>の連続突き攻撃の後、締めにひときわ強烈な突き攻撃で“瓦礫の兵士”の身体を少し吹き飛ばした。


「あ……」

 快調に動き回っていたシズクちゃんの動きが急に止まった。よくよくみると息遣いが荒く肩が大きく上下しているのがわかる。

「うぅ、体が動きません……」

「スタミナ切れか!?」

 攻撃や回避などの行動はスタミナを消費して行われる。スタミナは消費されていると少しずつ持続的に回復するというのが仕様だ。

 今までは慎重に動いていたためあまり気にならなかったが、シズクちゃんは急に動きまわったためにスタミナの消費量が回復量を上回り、さらには使い果たしてしまったということだ。

 そうなるとスタミナが最大値になるまで攻撃も回避も行えない。今の状態で出来ることは歩行移動くらいになる。

「下がって休んでて」

「うぅ、スイマセン……」

「シズクちゃんは悪くないよ。ほとんどひとりで敵の相手させちゃってゴメンね」

 今度はオレが頑張る局面だな。シズクちゃんと入れ替わる形でリーダーへと近づいていく。


 少し悩んだが正面から切り込んでいくことにした。蹴りには注意が必要だが<盾剣>としては敵に攻撃してもらうほうがチャンスが増えるから選択肢としてはアリだと思う。

 狙い通りの蹴り攻撃のモーションが見えたところで盾を構えて[反撃]を叩き込んでいく。

「さすがにコレくらいじゃ崩れないか」

 片足をあげているところに突進を当てれば態勢を崩せるかとも思ったが、相手は石を寄せ集めて作った人形だ。そもそも重量が違い過ぎる。

 といっても、重量差という概念がこの世界にあればの話にはなるのだが。

 身体を横にグルリと一回転させ、一歩踏み込みながら剣を思い切り横に振りぬいた。

 

「……お?」

 剣の傷痕から黒い霧が噴き出す。それと同時に“瓦礫の兵士”を形作っていた石や木の破片がすこしずつ崩れ落ちていき、最後にはただの瓦礫と化してしまった。どうやら討伐成功したということらしい。

「えー、終わっちゃったんですか?」

「いやいや、シズクちゃんが敵の体力を削ってくれたおかげだよ」

 スタミナが回復してこれから、というところで敵を倒されてしまったということもあってか、シズクちゃんは少し不服気味のようだ。

 オレのやったことなんてたかが知れてるんだよな。少し気になったので、討伐情報の詳細を見るとダメージトップはシズクちゃんということになっている。

 それを教えてあげるとシズクちゃんは嬉しそうに顔を緩ませた。満足してくれたようで助かった。


「おつかれさまです」

「みるくさんも。ありがとうございました」

 奥をみると、不自然な瓦礫の山があちこち築かれているのが見える。

 俺たちがリーダーを倒している間にすべて倒しきったらしい。さすがである。

「みるくさんありがとう! ユキさんもね!」

「シズクちゃんもおつかれさまです」

 いつの間に抱き着いたのか、シズクちゃんがみるくさんに抱きかかえられてよしよしと頭をなでられている。大型犬の相手してるような雰囲気だけどいいのかな?

「さて、お二人に伝えなければならないことがあります」

「お、なんでしょうか?」


 コホンとひとつ咳ばらいをすると、みるくさんは真剣な面持ちで口を開く。

「【訓練場跡地】エリア1の攻略おめでとうございます。そして、この先あとふたつエリアが残っています」

 その言葉を聞いて、いままでの疲れがドッとのしかかってくるような気がした。

 あれで終わりじゃなかったのか……!?

 今のような戦闘がまだ続くと考えると、今はちょっと重たい。楽しみなのもあるんだけど休みたいという願望のほうが勝っている。

「今行ってもいいですし、一度帰還して色々準備を整えても構いません。どうしますか?」

「帰還で」

 その回答に一切の迷いはなかった。

雰囲気を感じていただきたかったのでここまで一括投稿させていただきました。

お目汚し失礼しました。

続きはボチボチ溜まったらまた載せます。多分。

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