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パーティー初戦闘

 ダンジョン全体が『悪魔の霧』の影響を受けているためか薄暗く感じる。

 近くを見る分には問題はないのだが、遠くを見ようとすると霧が濃くなって全くと言っていいほど見えなくなる。……ひょっとすると遠方の描画処理を抑えるためなのだろうか?

 そんなシステム的なことは置いておいてだ。オレ、シズクちゃん、みるくさんの順番でダンジョンを進んでいくこととなった。

 みるくさんはあんまり手出ししすぎないようにと下がった結果、盾持ちオレが前に出たほうが安全ということになったからである。

 

 少し開けた空間でる。

 木製の簡素な小屋が建てられており、看板には『警備員詰め所』の文字がかすかに読める状態で立てかけられているのが見えた。

 その文字を読めるのかは分からないが、二体のちいさな“瓦礫の兵士”が持ち場についている。

 向こうもこちらに気付いたのか、手に持った角材を振り上げてこちらを威嚇してくる。

「ユキ君、気を付けて進んでください。シズクちゃんは敵の攻撃後の隙をついて攻撃していきましょう」

「了解です」

「はーい」

 “瓦礫の兵士”は警告が通じない相手だと悟ったのか、すぐさま戦闘態勢に入る。

 どこか人間みたいな考え方をするのだな、というのはオレの考え過ぎか。


 盾を構えながら少しづつ敵との間合いを詰めていく。

「……ッ!」

 こちらの前進に合わせて繰り出された角材の振り下ろし攻撃を盾で防ぐ。

 全力の攻撃を受け止めたにしては衝撃はあまり感じなかった。ドッヂボールの球を当てられたくらい、かな。多分。

 そんなことを考えていると、横から敵に飛び込んでいくシズクちゃんの姿が視界の隅に映った。

「ハァッ!」

 精一杯の気合の声と共に、まっすぐ振り下ろされた<双剣>のふたつの刃が敵を切り裂き、地面へと突き刺さる。

 渾身の斬撃を受けた“瓦礫の兵士”は形を維持できなくなったのか、バラバラと崩れ落ちた。

 そして、“瓦礫の兵士”にまとわりついていた黒い霧が溶けるように宙へと消えていく。

 こうして冷静になってみてみると、あの霧が石や木に憑りついて操っているようにも見えるな。


「気を抜かないで! まだ敵はいますよ!」

 そうだった、ゲーム的な事を考えてる場合じゃなかった!

 もう一体の敵に目を向けると、丁度こちらを狙っているところだったのか腕を引いて攻撃の構えをとっているのが見えた。

 これなら間に合うだろうか。敵の突き攻撃の軌道を読んで、胸の高さで盾を構える。

 木の棒と盾が衝突した重たい音が響く。それと同時にキンと軽いシステム音のようなものが頭に響いてくる。

「……なるほど!」

 左足で力強く踏み込みながら、構えた盾を前方へと突き出すように地面を強く蹴った。

 体重を乗せた盾による一撃は敵の胴部を捉えて大きくよろめかせた。

 今のが<盾剣>スキルのひとつ[反撃(カウンター)]というものか。タイミングを合わせるのさえ覚えてしまえば確かに強いかもしれない。

「いいですね! そのまま追撃してください!」

「は、はい!」

 敵を弱らせることはできたが、まだまだ敵の体力は残っている。態勢が崩れている今のうちに攻め込むべきだ。

 剣の柄を両手で強く握って上段から思い切り振り下ろす。

 相手の左肩から胴部にかけて斬撃が走り、深く切り裂く。そのまま黒い霧は宙に溶けて、“瓦礫の兵士”は崩れ落ちた。

 パーティーを組んでの初戦闘。やや危ないところもあったが無事切り抜けることはできたようだ。

 ホッと胸をなでおろした。


「ふたりとも、いい動きでしたね」

「えへへー」

 ほめられたのがよっぽど嬉しかったのか、シズクちゃんは両手でピースサインを作ってみるくさんに好調をアピールしている。

「オレはまだまだかなぁ。みるくさんのサポートがなければ危なかった訳ですし」

「そんなことないと思いますけどねぇ」

 いや、さっきの[反撃]が成功したのは偶然といっていいだろう。二人が居なければどうなっていたかもわからない。

 特に最初にひとりでここに来た時は、ただただ闇雲に暴れては攻撃を受けるということを繰り返して何度も瀕死になっていた。

 パーティーを組むというのは、心に余裕を生む効果もあるのかもしれないな。

「ともかく、この調子でドンドン進んじゃいましょう!」

 シズクちゃんも似たような心境なのか、最初に出会った時のような悲痛な表情は浮かべていない。それどころか嬉々として戦う相手を探しているようにも見える。

「やる気だなー。負けてらんないぜ」

「ええっと、おふたりだけに任せてしまうというのも申し訳ないので、次のエリアは私が行きますね」

 自分たちの練習なのだから気にしなくてもいいんだけどな。とはいえ、みるくさんの戦い方を見せてもらうのも何か参考になるかもしれない。

「それじゃあ、お願いします」


 自分の認識が甘かったのだといえばそれまでだ。

 今、目の前には敵だった三つの瓦礫の山が転がっている。

 状況を振り返る。このエリアでは三体の“瓦礫の兵士”が現れた。前方に一体、左右にそれぞれ一体ずつという配置。

 誰か一体に的を絞って攻撃すると、他の二体が襲い掛かってくる陣形なのだろう。自分も最初に苦戦した記憶がある。

 みるくさんは正面の敵に駆け寄って大振りの攻撃をする、というの止めて後方に跳んだ。

 すると、敵の三体の攻撃がそれぞれ空を切った。

 それに合わせてみるくさんは身体を横に一回転。大剣による横薙ぎで三体の“瓦礫の兵士”を一瞬で葬り去ったのだ。

「なんだか、同行していただくのが申し訳なくなるぞコレ」

「みるくさん強すぎー!?」

 格の違いを見せつけられただけな気がしなくもない。

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