表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

人の生というものは

存在と錯覚

作者: 支那勿忘草

どうしたものか、今目の前にいる人が

自分であることが信じられない。

自分の存在を裏返しているそれを不思議と

殺したくなる。

手を伸ばしても伸ばしてもカツッカツッとなるだけで実態に触れることは出来ない。

名前を呼ぶ声が聞こえるが、

確かあれは自分の名前だったとぼんやりと感じるだけで、はっきりと返事を出来ない。

歳のとった女性に声をかけられた。

どうしたの?

と。どうもこうもありはしないが。

一見広いように見えるが、

とても狭く心地の悪い何かが流れ込んでいる空間に閉じ込めてくる人だ。

手を伸ばして頬に触れてみると、

たちまちそれは無かったことのようになる。

何も無かった。何も生み出せなかった。

あのなかにあるのが、実態をもったもので、

こちら側にはなにも無かったと。

言われているような気がしてくる。

触れられるのに届きはしないものに、

ニタニタと笑われながら。

目に見えていた。

目の前の人は涙を流していた。

生臭く香る匂いに、煌煌とした表情。

実態をもったものはとても楽しんでいたようだった。

殺したくなり、また手に持ったもので切りつけるが、ギュッキュッキィーと擦れる音しかしない。

すると、その人が急に心臓の位置をさしだした。

ここが、ここなら届くぞと言わんばかりに。

ニタニタと気味の悪いがどこか儚げで、

美しいような目と鼻と口とをしていた。

閉じるつもりは無かった目を閉じてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ