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第8話 ゴーレムを虜にした秘術

「喰らえ、美しき探偵さん!」


 アレクサは、私を完全に無視してリリアンに狙いを定める。植物に足を絡め取られ、リリアンに一瞬の隙ができているように感じられた。転ける事はおろか、足を止めるだけでも容赦なくボーガンの矢が飛んで来るのだ。


 カーンという音がして、ボーガンの矢が周囲の木に刺さる。リリアンは、柔らかい体を用いて、ギリギリ矢を躱していた。ボーガンは強力な武器だが、連射できないという弱点がある。


 アレクサは、植物による魔法攻撃と併用させる事により、その弱点を補おうとしていたようだが、リリアンには通用しない。威圧感タップリに彼女に近付いて行き、敵わない事を悟らせようとしていた。


 足元から火が出て、一気に彼女の矢と植物を焼き払っていた。辺りの建物は火に包まれ、夜の闇を赤く色付けていた。恐ろしいと思う反面、美しいと思う景色に私は心を打たれていた。


「無駄よ! あなたの植物は、妾の炎に焼かれてしまった。魔法使いとしても、妾の方が圧倒的に強い。ゴーレムを返して、妾と一緒に来い。安心して良いよ、悪いようにはしないから……」


「ふん、その手には乗らないわよ! 植物を一瞬燃やしたからなんだって言うのよ? あなたが足を止めたら、今度こそ終わりにしてやる!」


 アレクサは、激昂して怒りの表情を強めていた。皮膚は緑色の文字を浮かび上がらせ、リリアンの炎とは対照的に、周囲を緑の光で照らし出していた。ダークエルフの皮膚が高価で高く売れるという事を納得するほど幻想的な風景だった。


「キレイ……」


 私は、2人の魔術師が戦う景色に心を躍らせていた。まるで花火でも見ているかのように、戦いの最中である事を忘れる。リリアンが負けたら、自分も同じ目に合う事も忘れてしまっていた。でも、アレクサの光から彼女の悲しさを感じ取っていた。


「くう、なんて可哀想な光なの……。私では想像も絶するほどの苦痛を味わったというわけなの? どちらも凄過ぎて、私が介入できるレベルではない……」


 私がそう呟くと、リリアンが私の方を見て笑いかけて来た。どうやら、まだ余裕があるらしい。私を励まして戦力にしようとしているのだろうか?


「ふふ、やはり、妹ちゃんの分析能力は素晴らしいものがありますね。この魔力から出る光を敏感に感知できるとは……。水系の魔法ならば、すぐにでも習得できそうですね。成長の可能性を感じるわ」


「私が、水系の伝統魔法を? 基本的な知識も無いのに?」


「ふふ、私が教えてあげますよ。剣と水は相性が良いかもしれません。これを習得させれば、攻撃に優れた女性剣士の誕生ですかね? 実は、生活にも便利なんですよ?」


 私とリリアンが話していると、アレクサが会話に加わって来た。戦闘中だというのに、緊張感もなく私に話しかけたのが気に食わないらしい。魔法攻撃で植物を出しつつ、ボーガンで攻撃しようとする。反対側の手には、何かを持っているようだ。


「このお、私と戦っている時に、余裕の表情で女子トークしてんじゃないわよ! 真っ先に、あんたから殺してやるよ!」


 アレクサの体が緑色に光り、再び植物を繁らせようとしていた。リリアンは、私との会話を中断して、彼女の攻撃に対応する。余裕ぶっているが、実は結構際どいようだ。相手を挑発させて、アレクサの攻撃を誘発させていた。


「余裕ですからね……。ほら、これで、あなたは魔法攻撃が使えませんよ?」


 リリアンは、足を使って何らかの魔法を発動させた。地面を足で踏むような仕草をしただけだが、周りに変化はない。魔法が失敗して、不発の状態なのだろうか? 私がそう思って心配していると、驚くような声を上げたのはアレクサだった。


「何、何なのよ? 私の魔法が、発動しない!?」


「ふふ、魔法にも優劣関係が存在するのですよ。植物属性に強いのは、根元を支える土属性です。大木や森林を生えさせる強力な魔力を持つならともかく、あなたの弱い魔力では妾の土魔法で一瞬で封じる事ができるのです。


 妾は、火と土と風の魔法を複合して扱う事ができる。あなたの植物魔法では、妾に一矢報いる事もできぬわ。さあ、良い勝負をするなら、ゴーレムを操った秘術を披露するしかありませんよ? それ以外は、あなたの攻撃では妾に届く事はない」


「くっ、舐めるな! 私には、まだ武器がある!」


 アレクサはボーガンを使って攻撃するが、難なくリリアンに避けられる。しかし、避けた先に飛んで来るナイフが見える。アレクサが彼女の行動を予測して、先にナイフを飛ばしていたのだ。おそらくナイフにも麻痺性の毒が仕込まれている事だろう。


「ふん、そんな物理攻撃では、妾に擦り傷1つ負わす事はできない。逆に、武器として使ってやろうか? お前が生きたゴーレムになる未来も予想できるだろうからね!」


 リリアンが鞭を振るうと、アレクサの投げたナイフが弾かれた。弾いたその先には、攻撃して来た本人のアレクサがいる。彼女は必死で攻撃を避け、なんとか麻痺する事から逃れていた。息が上がり、相当追い詰められている事がわかる。


「くう、はあ、はあ、危なかった……。魔法だけでなく、鞭まで手足のように操れるとは……」


「自分の弱さを痛感しましたか? そろそろ諦めてはどうかしら? 足腰立たなくなっているようよ。体は正直ね……」


 リリアンが言うように、アレクサの体は急激に体力を消耗して、動きが鈍くなりフラついていた。体力がないというのは本当らしく、ボーガンを持つ手もぶるぶると震えていた。私から見ても、彼女が戦えなくなっているのが見てとれた。


「クッソ、私は、お母さんとお父さんに会いたいだけだったのに……。一目見て、少しでも私を愛してくれれば、それで良かったのに……。攻撃されて、挙げ句の果てに、化け物扱いされて、こんな奴らに追い詰められるなんて……」


 アレクサは、膝をついて泣き始めた。どうやら演技ではなく、本当に両親を探して『エルフィン』を訪れたようだ。エルフ達の対応が悪かったために怒り始めたが、本来の目的は彼らを傷付ける事ではなかったようだ。


「マリアーンちゃん、油断しないで。本当の勝負は、ここからなんだから……。ついに、都市を滅ぼすほどの実力を持ったゴーレムを操った方法がわかるわよ。ほら、何かの武器を取り出したわ」


 私は、リリアンに言われて、再びアレクサを警戒する。フードの中から小型の弦楽器を出して演奏し始めた。幻想的な音楽とリズムに、体が支配されていた。持っていた木刀を、リリアンに向かって叩き付ける。私の意思とは無関係に、ムリやり動かされていた。


「きゃあ、マリアーンちゃん? 」


 私の背後からの攻撃に、リリアンはダメージを受ける。頭部に木刀の一撃を受け、綺麗な顔から血が流れていた。怪我自体は大した事ないが、右目が流れ出る血によって塞がれていた。拭っても、すぐに視力を遮ってしまう。


「薬も無しに、ゴーレム化を……。なるほど、わずかな時間だけど、『ゾンビの秘薬』と同じ効果を与える洗脳曲というわけね。曲でゴーレムを操り、自分の師匠に致死量レベルの攻撃を加えて倒し、その後は『ゾンビの秘薬』をゴーレムに使って、完全に自分の操り人形にしたというわけか……」


「くっくっく、その通りだ。勝ったと思ったのに、なぜお前は操られないんだ? 耳栓をしているわけでもあるまいに……」


「ふふん、簡単な理由よ。妾も音楽が得意で、人を操れる能力を持っているからよ。あなたよりも上級レベルの音楽を聴かせて、心も体も私の僕にしてしまおうかしら? 頭にダメージを負ったのは、数年ぶりだからね……」


 リリアンもフルートを出して、綺麗な曲を吹き始めた。音による洗脳同士の対決により、私は一時的に解放される。頭がとても痛く、寝不足になっているような感じだった。お互いの音楽技術は拮抗しており、どちらが勝ってもおかしくない。


「ちっ、第1曲を完璧に封じられたか……。並みの音楽家ではないね。エルフに伝わる伝統の技を完璧に対応してみせるなんて……。しばらく曲を弾く事ができない……。あんたは余裕そうだけど……」


 先に曲を弾いていたアレクサが、弦楽器の音楽を止めた。それに合わせて、リリアンもフルートから口を離す。彼女も呼吸が荒くなっており、必死で付いて来た事がうかがえる。いつも運動しているのか、肺活量は相当訓練を積んでいるようだ。


「ふう、その曲『エルフ王の旋律』と呼ばれる人を操る術でしょう? 本来は、曲を聴かせて、強制的に他人を踊らせる程度の技だったでしょう。それを、思い通りに操れるようになるとは、恐れ入りましたよ。


 ですが、基本的には同じ曲、打ち破る事は可能です。その技を破る方法は、2つ。1つは、別の演奏家が曲と全く逆向きに弾く事。もう1つは、演奏している弦楽器の弦を切る事です。後者を選んでも良かったのですが、やはり実力で勝ってみたくなりました。


 残念ですが、あなたは次の曲を弾くまでに体力を回復させる必要があるのに対し、妾は数時間ほど曲を演奏する事ができるのです。種族の差と訓練の差が勝敗を分けましたね。これで終わりです!」


「しまっ……」


 アレクサは曲を弾こうとするが、リリアンが演奏するスピードには対応できなかった。徐々に、彼女の自由が奪われて行き、完全にリリアンの命令通りに動くようになっていた。服を脱ぎ始め、下着姿で屈辱的なポーズを取らされる。


「うふふふ、とても可愛いわよ。マリアーンちゃんは、妾の頭を直接割った罰として、この水着を着てもらおうかな? もちろん、生着替えでね!」


「なあああ、止めてください。みんなに見られちゃう……」


「ふふ、みんななんていないわ。この都市の人は、ゴーレムに恐れをなして逃げてしまったもの。あなた達の華麗なダンスを見れるのは、勝利者の妾だけなのよ。だから、安心して着替えてくださいね」


 マリアーンは、曲に合わせて生着替えを開始した。服を自分で脱いで行き、下着姿でセクシーなポーズをつける。本人は嫌がっているが、リリアンの命令によって、強制的に笑顔で着替えていた。


「ふふ、とびっきりの笑顔じゃないと可愛くないわ。さあ、ブラジャーとパンティーを外しなさい。ふふ、大切な部分だけは見えないように隠して着替えさせてあげるから、ゆっくりと水着に着替えるのよ」


「あん、見えちゃう……。止めてください、許して……」


 マリアーンは、リリアンの命令通りに、笑顔の状態で巧みに大切な部分を隠しながら着替える。オッパイや股間が露わにされるも、私の手によって一瞬も見える事はなかった。リリアンはドSのようだが、女の子の気持ちも理解しているようだ。


「ふふ、ちょっとはスッキリしたかなぁ。マリアーンちゃん、とっても可愛いですよ。では、メインディッシュのアレクサに移りましょうか? 自らの持ってきたヤバイ薬で、心は嫌がっても行動してしまうゴーレムに御成なさい」


「ヤダ……、止めて……」


 アレクサは身包みを全て剥がされ、マリアーン同様にセクシーな下着姿にされてしまった。別に、サービスシーンというわけではない。どんな武器を隠し持っているか分からない以上、下着姿にでもしなければ危険なのだ。


「いやあああああああああ」


 自分の意思とは関係なく、リリアンから『ゾンビの秘薬』を処方されそうになり、彼女は思わず叫び声を上げ、涙が溢れ出ていた。美しいエルフの顔は、悲しみと恐怖で震え始めていた。自らが一番その秘薬のヤバさを知っているのだ。


「ふん、可愛い顔じゃない。恋愛系の薬にしてやった方が良いかしらね? 男達に、身も心も奪われる方がお好みかしら?」


「くう、止めて、許してください、リリアン様!」


 リリアンは、アレクサの泣きじゃくる顔を見て、興奮し始めていた。このままでは、彼女は本当にヤバイ薬を飲まされ、強制的に男達を愛するゴーレムとなってしまうだろう。そこを、リリアンの手を止めて、美女の悲劇を阻止する勇者が現れた。

アレクサが、潤んだ目で見つめて来た。

どうやら、仲間になりたいみたいだ。

仲間にして上げますか?


⓵精神分裂性の薬を投与する。

⓶恋愛爆発系の薬を投与する。

⓷魅力だけでメロメロにする。


結果は次話に持ち越されます!

これは、水着姿のマリアーン。

挿絵(By みてみん)

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