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第6話 VSゴーレム ジャクソンの実力

 お兄ちゃんとジャクソンは、ゴーレムに潰されに行ったようなものだ。破壊力は相当高く、一般の剣士などでは勝てるはずもない。足止めとか、初めからできる次元のレベルではないのだ。唯一の勝機は、ゴーレム自体を彼らで操る事ができるかにかかっている。


 ゴーレムに近付くにつれ、地震のような地響きと倒壊する建物の音が聞こえる。ゴーレムは移動していても分かるくらい巨大で、圧倒的な破壊力を持っている。ジャクソンは、ゴーレムの1キロメートル以内に入ると、恐怖を感じていた。彼の足が止まる。


「大きい……。こんな巨大なゴーレムは、初めてだ……」


 ゴーレムは優に30メートル以上の高さを誇っている。都市のお城とほぼ同じ高さなのだ。瓦礫1つを彼らに投げ付けるだけで、勝負は決まってしまうほどの腕力だった。剣で戦おうなど狂気の沙汰でしかない。しかも、お兄ちゃんの武器は木刀なのだ。


「怖いのか、ジャクソン?」


「ふっ、怖いとか、勇敢になれないという問題ではない。勝てるビジョンが全く沸いて来ないのだ。このままでは、戦闘もする事ができず、潰されるのが落ちだ」


 勇気とは、勝てない相手に無鉄砲に向かって行くことではない。強大な敵にも勝てる可能性があるから奮い立てるのだ。経験値のあるジャクソンでさえ、最大級のゴーレムには攻略法も浮かんでいないようだった。


「確かに、剣一本でゴーレムを止めるのは不可能だろうな。だが、ここは無人の都市と化しており、自由に使える武器が大量に置いてある。剣が50本もあれば、お前ならば動きを止めさせるくらい楽勝だと思うが……」


「なるほどな。ゴーレムも人型という弱点があったか……。その方法ならば、確かに勝てる! わしに任せて貰おうか? 一瞬でも足手纏いになりそうだった雪辱を晴らしてやらねば!」


「なら、俺は見守っているだけにするぜ。ミスって死んだ場合は、俺が倒してやるから安心して死んで良いぞ!」


「ふん、マリーちゃんの花嫁姿を見ずして死ねるかよ! もちろん、その隣にいるのはわしじゃがな!」


「俺と張り合おうとするとは、良い度胸だ。彼女が女となるまで死に物狂いで付いて来るんだな。俺が直々に引導を渡してやろう」


 お兄ちゃんとジャクソンは、近くの武器屋へ入って行く。丈夫そうな剣をカゴごと掻っ払って行く。店は無人であり、店主は避難しているようだ。お代も払わずに、彼らは25本ほど剣の入ったカゴ1つずつを背負って移動する。ゴーレムの目の前に姿を現した。


「ふふん、これだけの剣があれば、お前を倒すのは可能だ! わしが50回勝てば、ゴーレムは動きを止める。逆に、一回でも負ければ、死ぬのじゃよ。だがな、剣王という名は伊達ではない。剣の勝負においては、一度も負けぬから剣王と呼ばれておる!」


 ジャクソンは、一本の剣を持ち、ゴーレムに挑んで行く。ゴーレムのパンチを掻い潜り、人間でいう所の膝の裏に、剣を突き立てた。ゴーレムは動きを変える事なく、彼に攻撃を加える。ジャクソンはギリギリで避けて、また剣を取って構える。


 その戦闘を、1キロほど遠くの建物から眺めている人物がいた。そいつがゴーレムを操っており、ジャクソンとゴーレムの戦闘を観察していた。ゴーレムの動きが止められない事を知っており、余裕の表情でジャクソンが苦しんで戦っているのを笑っている。


「くっくっく、剣でゴーレムを止められるか。ここから射殺するのは簡単だが、奴の体力が尽きて、ゴーレムに潰されて死ぬのを見る方が面白いな。肉体も残らずにグロテスクに飛び散り、直接地面のチリになるが良いわ!」


 そいつはボーガンを背負っており、フードを被って正体を隠していた。それ以外にも武器はありそうだが、ジャクソンが愚かだと思い、傍観する事に決めていた。しばらくは余裕を持って見ていたが、彼が30勝する時点でゴーレムの敗北を悟り始めていた。


 ジャクソンの刺した剣が、次第にゴーレムの動きを鈍らせていたのだ。攻撃は全てゴーレムの膝裏に集中しており、移動スピードが急激に落ち始めていた。二足歩行で歩くというのは容易な事ではない。1つの関節を破壊するだけでも、動きを止める事ができるのだ。


「くっ、巨大で無敵なゴーレムだが、関節を動けなくして倒そうとするとは……。思っている以上にやる奴のようだ。しかし、私がお前と同じ攻撃をすれば、一瞬でゴーレムに押し潰されるのだ。派手に飛び散ってチリとなれ!」


 術者は、ゴーレムとの戦闘に集中するジャクソンに狙いを定める。人体を容易に貫通する威力を持つ矢が、奴のボーガンから放たれた。ジャクソンには完全に死角であり、避ける行動さえもない。


(勝った! 奴は、我が矢に貫かれ、動きを止めた所をゴーレムに潰される。1人の人間が、一瞬のうちに死ぬというのは、呆気なさ過ぎて笑いさえ込み上げて来るわ!)


 術者は、ジャクソンの敗北と死を悟り、狂気の笑みを浮かべる。後数メートルという所まで無慈悲な矢が迫っていた。しかし、奴の笑みがそれほど長く続く事はない。お兄ちゃんが矢を木刀で薙ぎ払うと、奴の笑みが消える。


「やはり、遠くからゴーレムを操っていたか。ゴーレムがジャクソンに負ける事を悟り、遠距離から攻撃を仕掛けてきた。だが、それは俺が仕組んだ囮だ。これで、術者がいる場所が特定できたぜ!」


 お兄ちゃんは、矢が飛んで来た方を見ると、術者と目が合う。ゴーレムを操っている事や、遠距離からの射撃を見る限り、奴は接近戦に不向きのようだ。自分の居場所が知られた事を悟り、ゴーレムを捨てて逃げ始めていた。


 術者が遠くに離れた事により、ゴーレムの動きが単調になり始めた。ジャクソンは残りの剣を全て使い、ゴーレムが動き出さないように関節を破壊する。痛みを感じているそぶりさえ見せないが、剣と剣が打つかって、ゴーレムの動きが止まっていた。


「いくら痛覚が無くて、筋力が増大でも、この剣による攻撃は有効のようだな。時期に、魔力エネルギーが切れて、ただの岩と化すだろう。魔力エネルギーとは、機械でいう所の電力のような物。エネルギーを補給せずに、動き続けていれば、いずれは止まる」


 ジャクソンは、ゴーレムが動けないのを確認すると、一気に気が抜けたように座り込む。ご老体には、ゴーレムとの戦闘は相当キツかったらしい。剣50本を背負うだけでも一苦労なのだ。


「ジャクソンは休んでいろ。術者は、俺が倒してやる!」


 お兄ちゃんは、ジャクソンを1人残して、術師が逃げた方向へ走り出した。術師が逃げ出してから5分ほどが経過しており、私とリリアンの方が先に奴を見付ける事ができた。どうやら相当の手練れらしく、リリアンも迂闊に近付けないでいた。


 遠距離でも殺傷力の高いボーガンを手に持ち、私達と対峙する。数人に追い詰められているはずだが、奴には慌てる様子さえ見せなかった。ボーガンを構え、私達2人に標準を合わせる。


 初めての殺気に当てられ、私は緊張で動く事が出来なくなっていた。私よりもリリアンの方が厄介だと悟り、奴の狙いはリリアン1人に絞られている。奴は、体をすっぽりと覆うフードを被っており、表情も他の武器も隠しているようだ。


「やれやれ、今日は厄日だな。こうもアッサリ居場所を見付けられるとは……。遠距離から愚かなエルフや人間どもが死ぬ瞬間を見ようと思っていたのにな。我が楽しみを奪った罪は重い。お前達の綺麗な体をそのまま剥製にして愛でてやろう! 」


 奴は、私とリリアンを見て舌舐めずりをする。どうやら美少女は大好物のようだ。男は姿形も残らないように抹殺するが、美少女は最小限の傷だけで仕留めようとするらしい。少しでも傷付けば、体が麻痺する矢を準備していた。


「くっくっく、超小型の矢で心臓を撃ち抜く事もできる。しかし、お前達の綺麗なオッパイを傷付けたくはない。体を麻痺させて、生きたまま捉えて、我が忠実な奴隷としてやろう。安心して良いぞ、人間では無くなるだけだ」


 奴は、危険な科学者でもあるらしい。ゴーレムを作る事もできるし、人体からゴーレムにする事もできるようだ。ここで奴に捉えられた場合、私もリリアンも生きた人間のゴーレムにされてしまうのだ。奴の異常な笑い声が周囲に響いていた。

ゴーレムが助けを求めてジャクソンを見ている。

仲間になりたそうだ。

仲間にしてあげますか?



⓵剣を抜いて欲しいか? と言って焦らしプレイ。

⓶この都市の美少女を全て連れて来い! とムチャブリ。

わしの全てを見て♡ と動けないゴーレムに精神的な苦痛を与える。



どれもムカつくので、お兄ちゃんが後でジャクソンを処理しておきます。

それはもう、ゴーレムに潰されるくらいのダメージを与える予定です。

キモい、キモい、と言いながら50本の剣を彼に突き刺し続けます。

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