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第5話 ゴーレムと荒廃した都市

 私達はゴブリンと別れ、次の街を目指していた。ここを中継地点として滞在し、疲れが取れてから、この国の首都である城下町へと向かう予定だ。この国には数個の都市があり、街や村を管理している。


 魔王が現れるまでは、国王の統治下で国民が幸せに暮らしていた。7つの大都市とそれが管轄する小都市や街、村を管理していた。しかし、数年前に魔王が現れ、7つの代表者が次々に倒されて行き、今では国王のみが残すのみとなっていた。


 国民は必死で魔王軍に食らいついていたが、情勢は良くない。国民の全てが、魔王軍に攻められ、お城が落とされそうになった時、魔王が全てを統治すると思った。しかし、魔王軍は急激に撤退して行き、今の拮抗状態に戻ったのだ。


 魔王軍の進撃は後退して行き、討ち払われた2つの都市が回復して、今は3つの都市が国の半分を管理している。残りの半分は、魔物がはびこる暗黒の領域と化していた。魔王がなぜ引いたのかは分かっていないが、彼にも娘がおり、脱走した事が原因らしい。


「ここまで行けば、次の大都市『エルフィン』があるわ。噂では、ここはエルフが住んでいて、知識や技術が発達している魔法都市だと聞くわ。私、剣の他にも魔法というのが使ってみたいわ!」


 魔法少女になることを夢見てはしゃぐ私だが、お兄ちゃんとジャクソンは反対意見を出す。どちらも個人的な好みだった。ハッキリ言って、聞く価値はない。


「マリアーン、魔法少女なんていうが、大半はただのコスプレなんだぜ? 自分で作った服を着て、ニンマリとするようなオタクな少女なんだ。人に見せる事はせず、自分で着て楽しむだけのような奴を真似してはダメだ!


 素晴らしい完成度ならば、しっかりと路上でアピールしておかないと! 撮影は禁止、お触り禁止なんてふざけているとしか思えない! マリアーンがそういう格好をしたがるのは分かる。だが、その格好を、俺だけには見せてくれないと……」


「ああ、ブレイクの言う通りだ! コスプレは、見られて初めて真価を発揮する。個人で楽しむなど、害悪でしかない。そりゃあ、ポッチャリならフタをして閉めてしまいたいが……。美女は露出を多くして、男達を喜ばせないと……」


 私は、2人を無視して次の都市の方を見る。すると、荒廃しかけているのろし煙が上がっていた。都市の数カ所に火の手が回り、空と大地を赤く染め上げていた。時刻は夕暮れ時だが、恐ろしさを感じる空模様が広がっていた。


「たった今、攻められているんだ……。敵は、魔王軍なのかしら?」


 私が呆然としながらそう言うと、ジャクソンは望遠鏡を使って街の様子を確認し始めた。私達がいる場所は、少し高台になっており、都市全体の様子が手に取るように分かる。


 都市とはいっても、1000棟くらいの家屋が並ぶだけだが、中心の都市部には大きな建物が立ち並んでいた。5回建はある、城壁のような建物だ。そこを、巨大なゴーレムが破壊していた。すでに3分の1は破壊され、瓦礫の山と化していた。


「ふむ、巨大なゴーレムが原因のようだな。ゴーレムは、機械人形のような物だ。操る奴がいなければ、決められた行動しかとらない。だが、動きを見る限り、何者かが操っているようだな……」


 私達は、急いで都市へ降りる。すると、エルフ達が集団で逃げ出していた。どうやら魔術師達が応戦しているようだが、ゴーレムには手応えがない。コスプレのような見習い魔術師は逃げ出していた。私達の事も無視して通り過ぎる。


「ゴーレムの防御力が強過ぎて、攻撃が効いていないんだ。なんとか、ゴーレムを止めないと都市が壊滅してしまう……」


「土も水も火も効いていない。ゴーレムの規模が大き過ぎる。有効な対抗策は、同じゴーレムで迎え撃つ事だが、相手が強過ぎて足止めさえできていないな……」


 私とジャクソンが分析し始めている中、お兄ちゃんだけは上の空だった。どうやらエルフ達が美女揃いで注目し始めたらしい。ブン殴りたいという気持ちが私の中に芽生えていた。すると、都市へ入る門の所で1人の女性に出会う。


 女性と目が合い、あっ、と声を出していた。彼女もゴーレムを倒すために、都市の中心部に入る目的のようだ。美女だった為に、お兄ちゃんは彼女に注意を集中していた。彼女に駆け寄り、手を握っていた。


「どうやら同じ冒険者のようだ! ですが、女性1人が都市部に入るのは大変危険です。どうですか? 俺と共に一緒に冒険しませんか? 剣の腕が立つ俺なら、どんなモンスターが相手でも勝てますからね! まずは、あのゴーレムを倒してご覧に入れましょう!」


「ウェッイ! 何、軽いノリでナンパしてやがんだ! 私へのプロポーズの告白はどうした? 一瞬で他の美女に目移りか? このクソお兄ちゃんが!」


 私は手刀で突っ込むが、お兄ちゃんにはサラリと躱されてしまった。後ろに目でも付いているのだろうか。当たる気配が全くしない。それでも、害悪から女性を引き離すことに成功していた。なんとか女性から話を聞くことができる。


 女性は、黒髪ロングを軽くカールさせて、フワッとした髪の毛にしていた。バストもDカップはあり、清楚な白地に、赤色の装飾の施されたチャイナドレス風の服を着ている。仕草から高貴な出身であることが見て取れる。自信たっぷりな表情でこう語り出した。


「お前達も、この騒動を聞き付けてやって来たのか? 巨大なゴーレムが都市を進撃しているというのにやって来るということは、それなりに腕に自信があるという事だな。だが、ゴーレムを止めるのは不可能だ。やるなら操っている奴を倒した方が良いぞ!」


 女性はそう言ってアドバイスをくれるが、お兄ちゃんはその意見を突っ撥ねた。彼も自信満々にこう語る。なんか、お兄ちゃんとこの女性は相性が合わないタイプのようだ。


「ふふ、忠告には感謝する。だが、1つの情報が不足しているぜ。俺は最強だから、ゴーレムだろうが、操っている術者だろうが、どっちを狙っても勝てるのだよ。俺は、真正面からゴーレムと戦い、勝ってみせるさ!」


「ふん、バカな奴だ……。なら、二手に分かれるか? わらわは術者を倒しに行く。お前達は、ゴーレムを倒しに行くが良い。たとえ倒さなくても、足止めくらいはしてくれるのだろう? うん?」


 女性は、私をチラッと見て笑いかける。お兄ちゃんと一緒にいると、苦労するぞと言っているようだ。手で、彼女に付いてくるように、私を誘惑する。どうやら、彼女と私、お兄ちゃんとジャクソンで戦いに出ることを提案しているらしい。


「私、操っている術者を捕らえに行くね。お兄ちゃんとジャクソンさんで、ゴーレムの進撃を止めてくれないかな? ゴーレムは、必ずしも一体とは限らない。複数出現する可能性だってあるんだよ。なら、術者を止める方が先決だよ」


 私は、女性に手を引かれて、一緒に走り出していた。女性からとても頼もしい印象を受けていた。私は、頼れる姉御肌の女性を求めていた。お兄ちゃんはヘタレだったし、家の中では私が一番賢いのだ。彼女が悪い人ではないと思うと、体が自然に動いていた。


「良いの? 妾は悪女かもしれないんだよ? 素性のハッキリとしない人物に付いて行くのは、かなり危険な賭けだよ? もしかしたら、妾がゴーレムを操っている張本人かもしれないのにさ」


「もしも、不穏な雰囲気を感じたら斬ります。ですが、あなたは悪い人ではないと思います。ゴーレムは、半径数メートル以内に術者がいなければ、動きを制御する事はできません。ゴーレムからここまでは、5キロくらいの距離がありますので、あなたが操るのは不可能だと直感しました。ならば、味方であろうと信頼します」


「ふーん、モンスターの特性を良く知っているね。正解だよ! 頭が良いっていうのは本当みたいだね! でも、悪い女かもしれないのは事実だよ!」


 女性は、そう言って私にウインクしてくる。友達が欲しいという雰囲気が表れていた。男にとっては悪女かもしれないが、私にとっては良い姉御になるだろうと感じる。彼女の明るい笑顔が、それを保証してくれていた。


「ふっ、マリアーン、安心して付いて行くが良い! このタイミングで現れるという事は、年齢的にも雰囲気からしてもお姫様本人だろう。武器はおそらく鞭であり、かなりの手練れである事が予想できる!」


 お兄ちゃんがお得意のタイミングによって、彼女の素性を言い当てた。女性は一瞬、鋭い眼差しでお兄ちゃんを見る。私が彼女の顔色にビックっと恐れを感じると、途端に優しい笑顔になって接して来た。


「ええ、まあ、そんなところよ! 私が、お姫様の『リリアン』よ! 以後、よろしくね!」


「どっちの方のだ?」


 こうして、お姫様のリリアンが仲間に加わった。だが、お兄ちゃんが不安になる一言を語る。そう、お姫様とは、国王の他に、魔王にも娘がいるのだ。外見だけでは、どちらが人間の娘か判断できない。


「まあ、どちらでも同じ事だ。俺にとってはか弱いお姫様、ナイトが怪物を退治してご覧に入れましょう!」


 お兄ちゃんは、彼女の回答を聞かずに戦闘に出る。木刀を手に持ち、ゴーレムと戦うつもりのようだ。木刀では、岩で出来ているゴーレムに敵うはずもない。私が止めるよりも早くジャクソンと2人で飛び出して行った。本当に大丈夫なのだろうか?


「じゃあ、行きましょうか?」


 リリアンは、私に手を差し出して、笑いかけてくる。高貴さでは、圧倒的にお兄ちゃんよりも上であり、頼り甲斐がありそうだった。手こそ繋がなかったが、すでにお姉ちゃんと心の中で呼んでいた。


挿絵(By みてみん)


【マリアーンのモンスター情報】


 ゴーレム


 全身が岩や砂でできており、強大な腕力と防御力を持っている。

 弱点は一般的に、真理と書かれた石版や紙だと言われている。

 ヘブライ語で真理と書かれているらしく、一文字を消せば、ゴーレムも消え去るという。


 基本的に集団で生息する事はない。術者が必要に応じて、複数体作り出す。

 機械のように単純な命令を与えられている場合のみ、自由に活動する。

 術者はゴーレムよりも強い場合もあるが、剣術などの接近戦に弱い。


 危険度 Aクラス(使用している素材による)

 見た目 人型の巨人で、土や岩で出来ている。

 有効な攻撃 ゴーレムを操っている術者を消すのが一番早い。

ゴーレムがつぶらな瞳でお兄ちゃんを見つめて来た。

仲間になりたそうだ。

仲間にしてあげますか?


⓵奴は生かしていては危険だと攻撃する。

⓶俺の仲間になれと説得する。

⓷仲間になったフリをして、不意打ちを狙う。



気のせいだった。

どれを選んでも潰しにかかって来るぞ!

ゴーレムに説得など初めから無理なのだ。

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