野盗の肉
気が付くとそこは見知らぬ森のなかであった、森のなかは非常に薄暗く、上を見上げると木々が生い茂って空が見えない、俺の身なりは前の世界と一緒で白いジャージ姿、すると足元に何やら黒い封筒が落ちていた、俺は封筒を開けて中身の手紙を呼んだ
「なになに、、、貴方の能力についてのご報告、貴方の能力は他者を食べることで、その者がもつ命と知識を取り入れる能力です、できれば有効にお使いください、、、魔法とかじゃないんだ、、、」
思っていた能力とは違ったが最近の異世界主人公はこういう無駄な能力を巧みに使って活躍するものだ、俺も今後どこかで使うことがあるのであろう
しばらくその辺を散策するとあることに気がついた、〘俺遭難している〙と、ここらへんの地理は全くわからない挙句に俺がここに入っていったわけではない、突如森のなかに来たがゆえに森を抜けるための手立てがない、このままでは異世界に来て数日で死んでしまう、、、【異世界に来たと思っていたら餓死した件!】、なんて話は誰も求めていないだろう、何としてもこの森から抜けなければ
《ガサガサ!!》
突然物音がした、動物であれば逃げなければ、人であれば助けを求めようと物音が下方向をじっと眺めた、すると物音の正体は4人ほどの人間であった、しかし獣の皮を羽織って、ひげを携え、背中には斧を背負ういかつい男たち、明らかに野盗である、あんな男たちに助けを求めたらどうなるか、、、
『ヘ~イ、私迷子ね、助けてほしいね!』
『おう!、こっちへ来い!』
『ありがとう!』
『なあに、お前は俺達の夕食に成るのさ、ぐへへへへ』
みたいな状態になりかねない、ここまで行かずとも下手すりゃ奴隷商に売られてしまう、
「===ー・=ー-0-00」
「ーー!===ww」
盗賊の方から声が聞こえてきた、しかし何を言っているか全くわからない、まず助けを求めるにも俺はこの世界の言葉すらわからない、、、これじゃあ歩いている奴が野盗じゃなくても助けなんて求められないということに初めて気がついた、このままでは本当に森で野垂れ死ぬ可能性が出てきたことに焦りを感じる、とりあえずこのままではやばいと思い俺はそっとこの場を離れた。
しばらくその辺を散策したら、さすがは森の中、食料はたくさんあったため食料には困ることはなかった、しかし森の水は飲めない、飲めば病気になってしまうためだ、つまり食料があってもそう長くは持たない、さらに現在いる場所は森のなかでも結構奥の方であり水分なしに抜けられるような場所ではなかった
さらにしばらく歩いた、流石に体も冷えてきた、喉も乾いてきたしいよいよ限界ではないであろうか、そう思った時また足音が聞こえてきた、次こそは野盗以外の人間であることを願いながら足音の方を向いた、すると次は綺麗な鎧を着た兵士のような者達が10名ほど歩いている
「貴様誰だ!!!」
ここで俺の存在を気が付かれた、俺は手を上に上げながら近寄って行く
「俺は酒旗 犬次といいます、実はここら辺で手持ちの葡萄酒を無くしてしまい、非常に困っていまして」
俺がそう言うと兵士の中から金色の髪の女性がこちらに歩いてきた、目は蒼く、髪は短め、まさに女騎士といった感じの女性である。
「うむ、しかしその赤い服は何なんだ、、、変わっているな」
「旅のものでして、、、しかしそろそろ旅も辞めたいと思っています、ははは」
俺がそう言うと女騎士は俺の手を掴んだ、そして俺に立つように促すと葡萄酒を少し分けてくれた
「実は私たちは遭難してしまってな、その様子だとこの森を抜ける道は分かっているのであろう、案内してくれないか?、街に戻れば少し食事ぐらいなら振る舞えるし、水分は多めに持ってきている」
願ってもいない機会である、街まで護衛してくれるのと同時に水分難も解消、さらに街まで入れてもらって食事まで出される、案内役ぐらい全然苦ではないが故にすぐにそれを俺は引き受けた
「喜んで、お名前お聞きしてもよろしいでしょうか?」
女騎士は笑顔で俺の問に答えてくれた、優しい人で助かったとこの時ほんとうに思った
「私はモスコー・ミュール、サントル帝国9番隊隊長だ、よろしく頼む」
こうして俺達は森を抜けた、道中は薄暗い森はどんどんと暗くなり、遂には薄暗いどころか完全に暗くなり、彼女らが持つランプがなければ今頃どうなっていたかわからなかった、
森を抜けると青い月が空に浮かんでいて、赤く光る星は空に散りばめられていた。
「おお!、森を抜けれた!、たしか此処からであれば街は近い、助かったよ犬次殿」
ミュールは笑顔でお礼を言ってきた、しかし俺とて助けられた身でありむしろ礼を言うのはこちらである
「いえいえ、お礼ならばこちらこそ、本当にありがとうございました」
そう言って早速街まで向かうことにした、せっかく森を抜けたのに街まで行けなければお笑いものだ、道中は草原であったり変わった虫がいたりと、異世界と言う感じを改めて実感させるものであった。
しばらく歩くと街についた、すでに夜ということもあり活気はない、石の外壁に囲まれたその街の中は赤レンガの建物が立ち並び、ずっと奥には領主の屋敷と思わしき大きな豪邸が見える、綺麗に舗装された道に赤レンガの町並みとくれば中世ヨーロッパを意識させる町並みだ
「おお、すごい綺麗な町並みですね」
俺がそう言うとミュールがとても嬉しそうに話しかけて来た、青い月に照らされた彼女はとても綺麗である。
「そうだろう、この街は私達9番隊の主語地域でな、この町並みを守るのが仕事なんだ、さて、酒場に行くぞ」
そう言われて俺は手を惹かれて酒場に連れ込まれた、酒場の中は酒の匂いが充満し、無造作に並んでいるテーブルに色々な人が座って酒を飲んでいる
「さぁて!、隊員全員に命令だ!、飲め!休め!、生還祝いだ!」
ミュールがそう言うと他の兵士が全員適当にテーブルに座ると酒を頼んだり料理を頼み始めた
「犬次殿すまないね、宿はこの時間からは入れないから飲み明かすしか無いんだよ」
納得だ、この時間から受付がやっているとは思えない、タダ飯をおごってもらえるのだからと俺も遠慮なく酒と料理を頼んだ、俺が頼んだのはビールと鴨肉のステーキ、テーブルの前に座っているミュールは蜂蜜酒とパンを頼んだ
頼んだ品が届くまでの間少々雑談をした
「しっかし、君がいなければ今頃森のなかでどうなっていたか、ほんとうに助かったよ」
「いえいえ、俺だってそうですし」
ミュールはテーブルに肘を付き頬杖をした、そして少々期待した目で俺に訪ねてくる
「君、旅を辞めたいって言っていたけれども、やめた後は何をするんだい?」
唐突な質問に少々驚いた、まず旅なんて本当はしていないし、何をするって、どうしようかずっと考えている状況である
「それだ、何をするか全然決めていないんですよね、お恥ずかしながら、ははは」
俺がそう言うとミュールが少し身を乗り出して俺にある提案をしてきた
「どうだい!、ちょうど森とかに詳しい人が欲しかったんだ、うちの部隊に来ないかね?、今なら歓迎するよ!」
それは願ってもいない話だ、この世界で職にありつくことはかなり困難であろう、そんな中公務員になれるというのだから儲けもの、俺は考えるまもなく返答した
「俺なんかで良ければ是非とも」
俺がそう言うと頼んでいた物が来た、少し小さいテーブルの上に並べられた物のうち、ミュールは蜂蜜酒を手にとって俺にジョッキを向けてきた
「乾杯だ、新兵君!」
「そうですね、これからお世話になります。」
「「乾杯」」
そう言って乾杯をして、少しにがめのビールを飲んだあとに鴨肉を頬張った、鴨肉は味付けが濃く、非常に美味しかったので思わず感想が口に出てしまった
「鴨肉美味しい!、あの野盗の肉は固くて酸っぱかったからな~」
「え?」
「あ、なんでもありません、料理美味しいですね、ミュールさん」
「はは、そうだな」
こうして異世界生活か始まってから運良く職業が決まった、明日からは仕事に勤しむ社会人、頑張っていきたいと思う。