卒業アルバム。
*登場人物紹介*
○京香・・・大学2年生。地元の大学に通っている。
○詩織・・・大学2年生。地元を離れ都会の大学へ。今日は春休みで地元友達の京香の家に来ている。
「あっ!詩織見てみて、懐かしい~。てか、みんな若いよ!」
私は詩織の肩をたたきながらそう言った。
「本当だ!卒業アルバム見るのなんて久しぶり。昔から私ら仲良かったよね。でも京香の顔って小学校から変わってないね」
「いいじゃん。わかりやすくて。詩織も顔変わってないよ!」
「あっ本当だ。人のこと言えないや。私にも見せて!」
私達は小学校の時の卒業写真を見ながら盛り上がっていた。どのページをめくってもみんな笑顔だ。卒業アルバムを見てると、楽しかったあの頃に戻りたいとつくづく思った。
「あれ…?これ…?」
ページをペラペラとめくっていた詩織の手が止まった。
「どうしたの?」
私は笑顔でそう言った。
「こんな子…いた…?ほら、京香の隣…」
ページは集合写真の場面だ。クラスのみんなが写っている。詩織は私の隣にいた髪の長い女の子を指差しながらそう言った。
「いた…かな…?詩織名前とか覚えてないの?」
「覚えてないから聞いてるんじゃん。京香の隣にいるっていうことはこの子と京香仲良かったんじゃないの?」
「え…。知らない。クラス名簿に名前とか書いてるんじゃないの?」
「たしかに…。ちょっと待ってね、見てみる」
そう言って詩織はページをめくった。
「いない…名前書いてないよ…」
詩織は顔を青くしながらそう言った。
「え…。じゃあ隣のクラスの人が写ってるとか?」
「でも私のすぐ隣だよ?普通気がつくでしょ?」
私は心の疑問を口に出した。
「そうだよね…。じゃあ…。誰なの?」
その時だ。
「ちょっと…。京香……。この写真の女の子、今動かなかった?」
「やめてよ!詩織!怖いこと言わないでよ!」
「なら見て見なよ。最初この女の子うつむいてたよ。今は前、向いてるよ…」
「え…。ウソ…」
私は恐怖を我慢しながら集合写真を見た。
「なんなのよ…。この写真。もう、見るのやめよ!」
そう言って私は強引にアルバムを閉じてゴミ箱に捨てた。
「それじゃ帰るね。今日はありがとう」
「うん、じゃあね。次の休みまた地元に帰ってきなよ」
私は詩織にそう言った。
「わかった。向こうに着いたら私から電話するね」
詩織は突然降りだした小雨を気にしながら帰っていった。
「もうあの卒業アルバムは捨てよう。本当に気味悪い…」
私はさっきいた部屋に入った。
「あれ…。なんで…」
私は不思議な光景を目にした。ゴミ箱に捨てたはずの卒業アルバムが机の上に開いた状態で置いてあるのだ。ページはあの集合写真のとこだ。
「トントン…」
誰かが私の肩をたたいた。
「誰…?」
私は後ろを向いた。
そこには髪の長い女の子が立っていた。恐怖に顔が歪む私に向かって女の子はこう言った。
「ワタシヲミツケテクレテアリガトウ。イッショニイコ!シャシンノセカイニ」
「ねぇ、京香と連絡とれた?」
「いや、とれてない。どこいったんだろうね…京香…」
あれから京香とは連絡がとれてない。いったいどこにいったというんだろうか。悩んでた様子もなかったし。私は頭を抱えながらそう思った。
「はぁ…。寝よ。あれ?」
布団の上に卒業アルバムがある。朝、大学に行く時にはなかったのに。
「あれ…。なんで…」
その時、私はまだ気づいてなかった。
後ろで笑っている髪の長い女の子に。