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レム  作者: Onisoh
蓮人編
9/25

蓮人の力

 「ところでさぁ、君が持ってた剣、今日は出せないの?」


 話が一段落した後、再び湧き始めた魄を、手にした鉤爪状の武器ーーーなんだっけ。確かパンテールとかそういった名前立った気がする。ーーーで切り刻んでいく。御影には見られなかった、近接武器ならではの鮮やかさだ。そういえば御影はーーーあぁいた。味方に誤射しないよう、遠くで違う敵を相手にしてる。


 「起きた時はなかったんですけどーーー。それって出す条件とかあるんですか?」


 「うん?単純にイメージすればいいだけだけどーーーっていうか、昨夜を思い出せばいいんじゃないの?」


 「はぁーーー。」


 そう言われ、昨夜のあの瞬間を思い出そうとするけどーーー。やっぱりダメだ。特に何かをしていたようには思えない。っていうか、きっかけは御影だしなーーー。


 「無理っぽい?」


 「ーーーはい。」


 「じゃぁ、どこかでそれを嫌がってる自分がいるんじゃないかな。ーーーっと!」


 「うわっ。」


 目の前で魄が血飛沫をあげ、息絶える。こちらにも返り血が飛んで気持ちが悪かったけど、それはやがて黒い霧となって本体とともに消え失せた。


 「『それがあるのが当然』って考えるのがオレらの力だからさ、どっかで化物になるのをおそれてんじゃない?今の君の能力といい、さ。」


 「つまり、今も僕はこの世界を信じてない。もっと言えば、まさに夢のように思ってるってわけですか。」


どれだけの傷を負おうと、認めない。ーーもとからそんなものはなかったと言いたげに発動するこの能力。御影が言うには、心の奥底やらなんやらが能力に関係してくると聞いたけど、、、それはあながち間違ってはいないのかも知れない。


 「ま、そうなるかな。」


血飛沫の中、陽気な鼻唄を中断し、瞬火さんは


 まだ夢の中、か。ーーー夢を壊された今じゃそれは最高級の皮肉だけど。とりあえず、自分の頬と抓ってみる。ーーーうん、痛い。夢じゃない。

 

 「いっそ夢だったらいいのにーーー。」


 同じ境遇の瞬火さんには聞こえないよう呟き、下を向く。


 「あ、、、、え!?」

 

 するとそこには、最初からそこにあったといっても信じられるほど、あまりにも普通に、


 「朱肚ーーー。」


 昨夜のその刀が、存在していたーー。



 「んー。どうしたんだい井守クンーーーって!」


 僕の間の抜けた声を聞いて、振り向いた瞬火さんも気付いたらしい。同じような声をあげ、その場に固まる。でも、なんだろう。ただ単純に驚いただけの僕とは少し違うようなーー!。少しオーバーというか、表情が引きつってるというか。


 「やっぱり、か。


ーーーどうやら本当にいわくつきみたいだねぇ、その刀。」


 「え?」


ゆっくりと眼を細める先輩。その姿に、思わず後ずさる。

そんな僕を、瞬火さんは一切気にせず、今度は眼を開き、いつもの薄い笑みを作った。


 「知らない?寂しがり屋の幼子の憑いた真っ赤な刃の妖刀。ーーー朱肚っていうんだけどさ。」


 「妖刀ってーーー。笑えない冗談をーー。」


こちらへじりじりと距離を詰めてくる瞬火さん。再度後退しそうになるけど、すんでのところで踏みとどまる。


 「いんや、実際にあった話らしいよ?ここらでずっと語り継がれてる伝承なんだけどさぁ。」


 「んー。語りたいモードですねぇ瞬火さん。いいですよー。大方の敵はやっときますから。」


 「ありがと。」


 いつの間にか傍に寄ってきた御影の申し出に、全く驚くことなく先輩は礼を口にした。先輩の表情もさっきとは打って変わり、得意げに語るその姿は何故か楽しそうだ。

 

 「伝承って、ーーーこの刀がですか?」


 「うん。やっぱり人の思念の集合体が魄だからさ、地方の伝説とかがもとになってるのも多いんだ。」


「へ、へぇ、、、」


歩を止めず、こちらへ近づいてくる姿に、僕は完全に気後れしてしまっている。


「だから一応マイナーなものまで調べてた時期があったんだけどーーーー。」


お互いの息がかかるくらいまで近づいて、彼はやっと足を止めた。


「朱肚ーーーその刀もそんな中の一つでさ、設定自体がかなり異質だったから今でもハッキリ覚えてるよ。」


 「っ!?」


目の前から先輩が消えた。そう思ったら、彼は只腰を下ろしただけのようだ。ーーーそろそろ能力といい、今といい、、、臆病過ぎやしないだろうか。


「やー、蓮人君も構えない。そこに座って。


退屈しないよう、精一杯面白オカシク話してあげるから、さ。」


自分のルーツを知っといて損はないだろう?そう言った先輩の目は、買って貰ったオモチャを自慢したい、子供のそれに見えた。

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