夜が明けて
一昨日から投稿していたはずが何故か投稿されてませんでした、、、
取り敢えず三話同時に上げときます
チュンチュン。
「んあ?朝……」
瞼を越えて朝日が、耳には鳥のさえずりが入ってくる。なんだろう、とても長い夢を見ていたような……
それが思い出せず、意識が徐々に覚醒していくのを待つ。
「あ?あーーーーーっ!!」
唐突に頭に流れ込む、大量の映像の波。大部分は思い出したくないものだったりするけれど。
「夢、、、?にしては大分リアルだったし……。でも、」
夢だったのではないのなら
「何で……腕があるんだ?」
昨夜謎の怪物に吹っ飛ばされた左腕は、しっかりと僕の左肩についていた。
「あぁくっそ、何なんだあれは。」
左腕の動作を確認しても、一切問題はない。狐につままれたような気分になって、また目を閉じる。
丁度その時だった。玄関のドアから、やかましいノックが聞こえたのは。
「っっ!」
こういうとき、無意識に警戒態勢を取ってしまうのが、僕の悲しい習性だ。……あぁ、ほら、父親の仕事の関係で。
だが、次に聞こえた声で、その警戒はすぐに緩むことになる。ゼロではないのだけれど。
「蓮人さーん。あーさでーすよー。」
「はぁ!?御影!?」
乱暴に開けたドアの向こうにいたのは、昨夜斬られて倒れたハズの女だった。となると、昨日のは夢じゃない……?
「あ、おはようございます……ってあれ!?」
向こうも向こうで驚くことがあったらしく、こちらの左腕を強引に掴む。
「蓮人さん!」
「何すか」
「何で腕があるんですか!?」
「いや、アンタも背中切られてたじゃない。」
当然と言えば当然の僕の反論。出来ることなら、このまま昨夜の件は夢だったということにしたいんだけれど。
「あー、それについてはきっちり治療いたしましたんで。」
大胆に肩口をはだけさせ、彼女は言う。
ーー思った以上に、大きな傷だった。思わぬタイミングで自己嫌悪に陥っている目の前で、
何せ保護者にに心配されるのでーーーー。そう続けた御影の眼は、何故かとても悲しそうに見えた。
「いやぁしかし、縫うの大変でしたよ、背中は。」
「縫ったのかよ!」
とても僕よりひとつだけ上の女子とは思えない。
「あー、話がそれましたねぇ。もう一度聞きますよ。」
「僕にもわからねえって。」
僕より知ってるやつが分からないことを知っているはずがない。大体、あの世界に関してだって、まだ納得のいかないままだし。
「イモリ……なんですかねぇ。」
御影が独り言のように呟いた。
「ん?イモリって何だ?」
「ほら、あの両生類の」
「いや、それは知ってるんだけどさ。」
イモリ……そういえば、昨夜もそんなことを呟いたような……。
「そう、それですよ。あそこの世界だと……まぁ、普通に意識下なんですが。全てのものは『知覚』されることによって存在できるんですよ。」
私が昨日出した武器だったり、蓮人さんの刀だったりとか。あるいは私たちの存在そのものだったりとか。御影はそう続けた。
「で、僕の存在とイモリが、どう繋がるんだ?」
「人が『知覚』できるものは、大抵何かに例えられなければならないんですよ。いかに美しいといえども、
比べるものがなければ、無に等しいですし、いかに強大な存在であろうと、戦う相手がいなければ認識されない
でしょう?」
だって、夢の中ですから。
「はぁ……」
分かったような、わからないような。取り敢えず僕は、情けない相槌を打つことしかできなかった。
「必然的に比べる対象に近づいていくので、あそこで『人のままでいられる』ことはあまりないですね。」
「へぇ。僕の場合、その対象がイモリだったと?」
あの奇形の妖刀。色合いからすれば、まさにアカハラーー即ちイモリそのまんまだろう。それにーーこの腕。同じような形のトカゲなんかを思い浮かべれば、この再生能力にも頷ける。
ん?トカゲとイモリは別種か。まぁ、どうでもいいや。
「蓮人さんの能力はそのままイモリですかぁ。ま、分かりやすいことこの上ないですが。」
「何で?」
「は?」
「いや、僕の場合、ってか誰だってそうだろうけど、イモリを愛するなんてキモい奴じゃないし、見たことすらないんだぜ?何で他にもある中からイモリ?」
ついでに御影のも気になるところだ。
そんな裏で御影は、いやぁ……。と、頭を掻きながら笑いながら言いにくそうに言った。
「おそらくなんですが……名字……?」
「……ッ」
井守蓮人ーーイモリレントーーイモリ……
何て安直な……ッ!?