瞬火先輩
大変長く開けて申し訳ないです><
先輩の言葉の、やけに自嘲的な響きに思わず姿勢を正す。そんな僕とは対照的に、先輩は腰を上げた。
「そんなところさ。」
「......え?」
「申し訳ないねぇ、あまりに尻切れトンボだとは思うんだけど、『オレ』としての記憶に、ここから先はないんだ。」
「そんな……」
あっけからんとして言う先輩に、御影は不機嫌そうだ。
「なぁにが『記憶がない』ですか。ただ単に兄さんの人格を自分自身に投影しているだけでしょうが。」
「そうかもね。」
食ってかかる御影だったけれど、先輩は気にもしていないように返した。けど、
だけれど。
と、先輩は続ける。
「『俺』はさ、信じたいんだ。弟を想う兄の思いを。『オレ』という人間を。」
「ふん。」
先輩は珍しく感情のこもる喋り方をしていたけれど、御影は全く取り合わないで反対側を向いた。
「そこで、だ、蓮人クン。」
珍しく……もないのだろうけれど普通ではない怒り方をする御影が気になり見やっていると、反対方向から声をかけられる。
「君には、『オレ』と弟……瞬の手伝いをしてもらいたい。」
「へ?」
「なぁに、難しいことは無い。多分瞬にとっては君自体がストレスだろうからね。」
なんて酷い事を。流石にショックを受けたので反論しようかと思ったのだけれど、何かを察した御影が、僕の考えを遮る。
「...あっ成程。酷い事をしますねぇ弟に。」
「さっきまで『オレ』を認めなかったくせに...まぁ、御影にはできないことなんだ。助けるつもりだと思ってくれよ蓮人クン。あぁ、御影はサポートを宜しくね。」
さて、そろそろオレの方は時間のようだよ。
こちらが問いただす前に、そう言って先輩が薄れていく振り返ると、御影も既に半分ほどが薄れていた。
こちらの顔を見て何がおかしいのか。御影が微笑みながら手を振る。
「やっと……これで決着がつきますよ。蓮人さん、よろしくお願いしますね?」
そんな言葉を残して消えていく御影。待って下さい先輩方。僕はまだ1度も了承していない。切に叫びたかったけど、ふと俯いて見た足が薄れていた。……僕もそろそろの様だ。
出現したばかりの魄がこちらに気付き、襲ってくるが……ざまぁみろだ。
静かに微笑みながら、意識が遠のいていく。