過去【井守蓮人の場合】
言い忘れてましたがストックが尽きました。頑張らなきゃ、、、
ーーー真っ暗だ。
途方もない闇の中に、自分一人ーーーそんな、普段だったら狼狽えているであろう状況に陥った僕の頭にあがったのは、情けないほど場違いな感想だった。どれだけ目を凝らしても見えるものはなく、ーーー自分の立っている地面さえ、本当にあるのか、思わず一歩踏み出すことさえ躊躇してしまう程の暗闇の中に、僕は立っていた。
ふぅ。
なんて息をついてみたって、目の前の闇がはれるわけじゃない。いや、わかっちゃいるんだけどさ。
ホントに、ここ、何処だ?
頭に浮かんだ当然の疑問の答えを探すべく、僕は一歩を底知れぬ暗闇へ踏み出した。
「ーーー、ーーー!」
ーーー泣き声?それも子供の・・・。
声がした方向へ目を向けーーー僕はその場に凍りつく。
ーーーーーー
「蓮人さん!?どうしたんですか!?蓮人さん!」
急に倒れた蓮人君を、御影が必死に揺さぶっている。そして、それを引き起こした張本人ーーーって決めつけちゃっていいのかな。朱肚君は、何てことない顔で、御影の手を引き剥がす。
「起こしてやるな。蓮人はただ眠っているだけ。ま、見ている夢は良いものとは限らないけどな。」
「一体何をーーー」
朱肚君に止められ、一歩下がった形になった御影は、怒りに満ちた目を、そちらに向ける。
ーーー珍しいな。彼女はもう割りきったとか言ってたのに、、やっぱり目の前で人が死ぬのは辛いんだろうか。
「殺意を剥き出しにしないでくれないか?話せることも話せやしない。」
「取り敢えず、話を聞こう御影。」
「瞬火さん、、、」
襲いかかってしまう前になんとか引き留め、手の出せないギリギリの距離まで下げさせる。と、いうかその目をオレにも向けないでくれるかな、心臓とか取られそうだ。
「で、朱肚クンで、いいんだっけ?」
「あぁ。だけど、君づけはやめろ。正直むず痒い。」
言葉を行動で示すように、その場で軽く身じろぎする朱肚。なんていうかな、やっぱりこの子には歳不相応の何かがある。
お節介だとは思うけれど、オレはそれを暴いてみたい。
ーーーーその裏にある、蓮人君の闇も。
「じゃあ、朱肚。一つ聞こうか。」
だから、オレは余計な一言を口走ってしまう。
「井守蓮人。彼は何だ?」
ーーーーーー
「っくし!」
くしゃみが出た。なんていうかな、小説の場面転換じゃよくみる手法だけど、現実では見たことがない。だから多分、日頃の生活習慣のせいなんだろうと、
僕は、心底それを恨んだ。
少し前
目の前では葬式が取り仕切られていた。それが誰のものか、というか、何でこんなところで?というのが普通の疑問なんだろうけど、僕には何故かその問いだけ抜け落ちていた。
取り敢えず、乱入していくわけにもいかないから、物陰からずっと見ていたけれどーーー一番目を引くのは、やっぱりあの子。
「なんで!?なんで死んじゃったの!?」
大声で泣きじゃくっている何処かでみたことのある少年。ーーっていうか、あれ、僕だ。でも、何でだろう?葬式に出席した記憶は無いんだけどな。あの取り乱し方を見ても、かなり関係の深い方が無くなったんだろうけどーーーー。ん?
『葬式に出席したことがない』?
いや、でもこの光景は見たことがある?
「どういうことだよ・・・」
何かが引っ掛かっているのに、引き出せない感覚。その不快さに、目を細めた瞬間。
「っくし!」
自分で驚くくらい、間抜けなくしゃみが出た。
「あー。これは、、、」
辺りから聞こえていたすすり泣きやらが消え、全員の視線がゆっくりこちらを向く。泣いていた過去の僕(多分)も、例外ではなくこちらを向きーーーー
「ようこそ蓮人。待ちくたびれたよ。」
先程までの涙はどこえやら。彼は確かにそう呟いた。