3-2
次の日から、ヴィクターはノルンに自分の話を少しずつし始めることにした。
その前に、ノルンに一つ、言われた。
「言葉遣いは気になさらないでください。普段通りで構いませんから」
「しかし」
「私に仕える以上、無礼は出来ない、ですよね。ですが、そんなにかしこまられては、私も少し構えてしまいますし」
「ノルン様は、構わないのですか?」
「構いません。……あまり、かしこまられて会話されるのは、苦手なのです」
ノルンはそう言った。
一国の姫、という立場故の言葉なのか、とヴィクターは思った。
「それに、年齢も近いですし。お友達のような感覚で接して頂けると」
「……友達、ですか? 身分も違う自分と?」
「身分は気にしません。本音を言うと、お友達が欲しいのです。ずっと、……一人ですから」
そう言ったノルンの言葉は、どこか悲しそうな声音も含まれていて。
なぜ、そう聞こうと思ったヴィクターは、グレイテルに言われた事を思い出した。
――姫様の事は、誰にも聞いてはいけません。特に生い立ち、過去の事です。姫様自身にも、私にも、この城の者にも、街の者にも。
恐らく、踏み込んではいけない事項だと感じたヴィクターは、ノルンに言った。
「ノルン様がよろしいのなら、私を友達だと思って頂いて構いません」
「……本当、ですか?」
「はい。私でよければ」
表情は変えないものの、ノルンはヴィクターの手を取って、言った。
「ありがとう。ヴィクターさん」
声音はどこか嬉しそうな、優しそうに聞こえた。
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