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2-3

 あの日、訓練を終えて、自室に帰ろうとするのを前の騎士団長だったデニスに呼びとめられた。


「ヴィクター。お前に大切な話がある」


「何でしょうか」


 がっしりとして強面のデニスは、怒るとかなり怖いのをヴィクターは知っていた。

 てっきり何か自分がしでかしたのかと思い、デニスに着いて行った先には、団員が全員部屋に揃っていた。

 正直、全員の前で怒られる事をした記憶が全くないヴィクターは、何を言われるのかと内心ひやひやしていた。

 デニスが中央に立ち、その横にヴィクターは立たされた。


「皆、聞いてくれ。俺は、ヴィクターを次の騎士団長として指名したい。賛同してくれるものは挙手を」


 デニスがそう言うと、全員が賛同するらしく、手を挙げた。

 一瞬、何を言われたのかわからなかった。


「ちょ、ちょっと待ってください、デニス団長。俺はまだここに入団して一年の若輩者です。なので、俺にはまだその命を受けるには早すぎるかと……」


 ヴィクターは慌てて反論すると、デニスは言った。


「役職に早いも遅いもねえよ。そんだけお前が信頼されてるってことだ。それに、お前の実力は俺も皆も知ってるからな。光栄な事だぞ? 素直に喜べ」


「ですが」


 反論を遮るように、デニスは言葉を続ける。


「後、もう一つ。ヴィクターをノルン姫の専属騎士にする」


 その場の全員が、その言葉を聞いて驚きを隠せない表情をした。

 それはヴィクターも同じだった。

 騎士団に入って一年の自分が、そんな大役を引き受ける事になるなんて。

 頭の中は、正直パニックだった。

 騎士団長と〝黄昏〟のノルン姫の専属騎士、という二つの大役なんて、自分には早すぎて、務まるのだろうかと。


「今まで俺が姫様の傍に仕えていたが、騎士団長になる以上、それを引き受けてもらわないと困る。これは命令だ、ヴィクター」


「ノルン姫、とは〝黄昏姫〟のノルン姫で間違いないのでしょうか」


「ああ。別に悪い話でもないし、年の頃も一緒だ。別に俺はお前に押し付けるわけじゃない。こうして引き継ぐのも、俺の仕事だからな。それに、お前なら姫様を守れると信頼している」


 デニスに大いなる信頼を得ている、それは理解出来た。

 だけど、やはり自分には荷が重すぎる。

 しかし、断るという事は許されなかった。


「ヴィクターを団員全員でサポートするように。俺もそちらに回るし、お前の将来性に賭けているからな。頑張れよ、ヴィクター団長」


 そう言われて、デニスに気合いを込めて背中をばしんと叩かれる。

 反論の術を失くしたヴィクターは、ただ何も言えなかった。


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