7-13
夜に来れば、こんなにもこの城は騒がしくなかったのかもしれない。
ほんの少し後悔したが、その後悔も、今はどうでもよかった。
城の前に待ち構えていた衛兵を殺したリューミエルは、堂々として、城の中へと歩を進める。
ノルンさえ自分のものになれば、この城にも来る事はないし、この城の人間がどうなろうと、知った事ではない。
「待て! 魔女!」
城内に入ったところで、目の前に立ち塞がった青年――騎士が正しいのだろうか――の声で制止させられた。
鬱陶しい、と言うような目で、騎士を見る。
真っ暗な闇の色、漆黒の髪と、堂々としていて、それでいてぎらりと鋭い漆黒の瞳。
「お前の相手は俺だ。ノルンには……姫様には指一本触れさせない」
騎士――ヴィクターは、目の前にいるリューミエルに向かってそう言った。
その言葉で、何か感づいたのか、リューミエルはにやりと口元を歪ませた。
「――そう。あなた、名前は何と言うの?」
急に問いかけられて、戸惑いながらヴィクターは答える。
「ゼスティ騎士団、騎士団長のヴィクターだ」
「あなたも中々魅力的。――だけど、残念。私はあなたじゃなく、〝黄昏〟のノルン姫様に用があるの」
「だから通せない。俺はノルンを守る義務がある」
「……義務。あなたは、そこまでして、ノルン姫を愛しているのね」
核心を突かれて、ヴィクターは表情を強張らせた。
その表情を見逃すはずがない。
そして、彼は何も知らないのだとすぐに感じた。
悪戯っぽく。
目の前にいる彼に、魔女は真実の言葉を放つ。
「――あなたは、愛しいノルン姫を〝殺そう〟としているのよ」
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