7-11
「すまない、ヴィクター。お前の役職はわかっているんだが、緊急事態でな。……俺が指揮を執る」
団員全員を目の前に、デニスがヴィクターにそう告げてから、言った。
「イソレイドに魔女が現れた。狙いは〝黄昏〟のノルン姫様だ。俺たちの使命は、姫様をお守りする事、そして、魔女の討伐だ。あの魔女は手強い、心してかかれ。以上だ」
簡潔に内容を告げたデニス。
魔女の話は、噂程度にしか聞いた事がなかったヴィクターだが、今は質問している暇もなく、皆と同じようにその内容に応じる。
――魔女が、ノルンを、どうするつもりなんだ?
魔女、という存在がわかっていても、それがどのようなものなのか、ヴィクターは知らなかった。
ただ、胸がざわついていた。
嫌な事が起きそうな予兆がするからだった。
この事を、ノルンは知っているのだろうか。
そして、こんな時こそ彼女の傍にいたいのに。
〝会えない〟という事実がある以上、そうはいかない。
ヴィクターはただ、気が気でなかった。
彼女の為に出来る事は、今はただ、その魔女の討伐、という任務を遂行するだけ。
――自らの命を賭してでも、必ずノルンを守ろう。
内に秘めた闘志は、ただゆっくりと燃えあがりつつあった。
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