7-4
ヴィクターは、自室のベッドに横になって、考えていた。
いつもなら、今頃ノルンと話して、同じ時間を共有しているはず。
なのに、今日に限ってそうじゃない。
確かに、人間体調が急に優れない日もある。
納得は出来る。
けれど、最近のノルンの事を思い出していた。
初めて会った頃よりも、ノルンの表情は暗くなり、元気がないようにも思えた。
会話をしていても、ヴィクターがほぼ一方的に話す事には変わりないが、聞いているノルンはどこか上の空。
やっぱり何かが引っかかる。
ノルンは大丈夫だろうか。
こんな時にこそ傍にいたい、だけどそれは叶わない。
「……俺は、無力なのか」
ぽつり、呟く。
愛する彼女の為に、何も出来ない自分がいる。
とても歯がゆい事だった。
会う事も叶わず、何が原因なのかわからないまま。
「……今すぐにでも、会って抱きしめたい気持ちでいっぱいなのに」
傍にいる事も、抱きしめる事も叶わない。
――ノルンの過去に触れてはいけない。
ふと、脳裏をよぎった言葉。
口止めするほどの過去。
教えてはくれない、聞いてはいけないから。
「……ノルンは、過去に何があったんだ……?」
よく考えれば疑問だ。
普通に接してきて、改めて色濃く疑問に感じた。
自分は何も知らなさすぎる。
――誰にも、聞いてはいけない。
「何を隠す必要があるんだ? ……どうして……?」
考えても、答えは出ない。
そう呟いても、誰も答えてはくれない。
今は何も出来ない自分に、歯噛みした。
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