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7.真実
「会えない? どういうことですか?」
「今日は体調が優れないので、ヴィクター様にはお会いできない、と姫様が」
ノルンがヴィクターに会うのを拒んだのは、初めてだった。
理由は簡潔。
体調が優れない、だから会えない。
グレイテルにぴしゃりと言われて、ヴィクターは黙るしかなかった。
「申し訳ありませんが、今日のところはお引き取り下さい。明日、またお越しください」
引っかかる。
何かが引っかかる。
ヴィクターはそう思い、グレイテルに再度問いかけようと思った。
だが、グレイテルが放った言葉に、問いかける言葉を失った。
「……明日、また来ると、姫様にお伝えください。それでは」
もやもやする。
わからない違和感を胸に、ヴィクターはその場を去った。
その背中を見ながら、グレイテルは小さく呟くように、聞こえないように言った。
「……申し訳ありません、ヴィクター様。私は、姫様との約束を守らなければならないのです」
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