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ノルンは、両親に大切にされ育ち、幸せに暮らしていた。
ノルンには、二つ年の離れた兄がいた。
しかし、兄は二年前、ノルンの知らない間に忽然と姿を消した。
どこへ行ってしまったのかを問いかけても、誰もがその問いかけはしてはいけないと言う。
両親に問いかけても、表情を陰らせ、たった一言「死んでしまったのよ」と言った。
そして、それ以上は聞かないように、この日を境にこの話は誰にもしてはいけないし、聞いてもいけないと言われていた。
ノルンは幼いながらそれを守り、兄がいた、という事実を胸の奥底に閉じ込めていた。
自分がこうする事で、波風が立たないなら、その事実もそっとしておこう。
そう思って、何事もなかったように振る舞う毎日だった。
ただ、自分の部屋にある写真立てに映る兄の姿だけは、鮮明に残っていた。
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