5.蒐集
孤島の国であるイソレイドから少し離れた場所に、エリカカという森がある。
夜は当然、日中ですらその森は薄暗く、誰もが近付かない森。
誰もが近付かない理由はそれだけではない。
その森には、魔女たった一人が住んでいる。
魔女の名前はリューミエル。
老婆のような姿ではなく、声もしわがれていないリューミエルは、闇のような漆黒の長い髪を持ち、焔のような赤い瞳が印象的な、美しい〝女性〟と呼ぶにふさわしい魔女。
そんな彼女の趣味は、少しばかり変わっている。
〝蒐集〟が趣味なのだ。
彼女が求めるのは、彼女が認めた〝綺麗な人間〟。
男女関係なく、綺麗だと思った人間は彼女によって〝呪い〟をかけられ、殺した人間を奪って、自らの蒐集の一つへと加えてゆく。
亡くなった人間は、彼女の人形になり、飾られる。
但し、彼女に危害を加えた国や人間は滅ぼされてしまうという噂があり、誰もエリカカの森には近づかないし、彼女にも次第に近づかなくなっていた。
やがては一人、エリカカの森でひっそりと暮らすようになったリューミエル。
彼女からしてみれば、つまらない日々が過ぎて行く。
そんなある日、彼女の耳に届いたのは、そんなつまらない日々が一転するような話だった。
それは、イソレイドで、新たな姫が誕生した事。
その姫は、白い肌を持ち、淡い金色の髪を持ち、青い澄んだ瞳を持っているのだと言う。
誰しもが彼女を見目麗しいと言い、それを知ったリューミエルは、興味を持った。
「一目、見てみようかしら」
不敵に笑んだリューミエルは、エリカカの森を抜けて、誰にも気づかれないようにイソレイド城へと向かった。
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