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「それはきっと、恋ですね」
「……恋? 私は、何かの病気なのですか?」
「違いますよ、姫様。それは病気ではありません」
「病気では、ないのですか?」
「ええ。少なからずとも、重大な病気ではありませんし、年頃の女性にはよくあることですよ」
「グレイテル。その、〝恋〟というものは、何なのですか?」
グレイテルはその問いかけに少し考えてから、ノルンに答えた。
「姫様のご質問はとても難しいご質問ですが、簡単に答えるならば、こうでしょうね。姫様は、ヴィクター様に惹かれているのですよ。……端的に申し上げるなら、ヴィクター様の事が〝好き〟なのです」
「……好き……」
「ええ。姫様のお話をお伺いするに、そうだと思いますよ。ヴィクター様が好きで、恋をしていらっしゃるのです」
「……私が、恋……」
にわかに信じられなかった。
この気持ちや感情が〝恋〟だということ。
「姫様はまだお若いですから。そのような事の一つや二つ、経験ですよ」
グレイテルはそう言って微笑み、食事の終わった食器を下げ、部屋から出て行った。
その後ろ姿を、ノルンは見送る事しか出来なかった。
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