概念?概念?
目の前に概念がぼーっと座っている。
その瞳には、色々なものが映り込んでいるけど、当の本人は何も見てなさそうだ。
こういうところを見ていると、あいつとは違う。
あいつは好奇心旺盛で、でも気取った照れ屋のいじっぱりだったから、いつもすまし顔をしていたけれど、目だけは違った。
目だけは自分の気持ちを隠しきれてはいなかった。
概念が、足をぱたぱたと動かしている。
にしても、変な奴である。
結局、僕はこいつを追い出せなかった。
まずどうやれば人外?を追い出せるかわからないし、本人曰く無意味らしいし・・・っていうのも、理由のひとつだけど、
最大の理由は、きっとあいつにそっくりな見た目をしているからだ。
それにしても、我ながら、死んだ幼馴染にそっくりだから、なんて理由でこんな得体のしれない生物?を家にかくまってしまった自分が少々情けない。
いまからでも、保健所にでも連絡するべきだろうか・・・
まあ、今日は土曜日だし、ゆっくり考えられる。
・・・こんなこと考えてる時点で負けかもしれないけど。
「なあ。」
足のぱたぱたが止む。
「その姿、変えられないのか?」
「なぜ?」
「その・・・僕の幼馴染にそっくりで、混乱しそうだから」
・・・じゃないと、まともな対処なんてできないし。
「確かに、見分けがつかないのは困る」
「じゃあ」
「無理。わたしは好んでこの姿をしているわけじゃないから」
「・・・どうゆうこと?」
「わたしが大きなる概念から切り離されて、わたし自身というひとつの概念になってから、この場で一番強く感じられているわたしの中の概念の姿をしている」
「その目覚め・・・って、さっき?」
「多分」
ああ、なるほど・・・。
僕が、あいつの夢をみていたからか・・・
「でも、今は別にあいつのこと、考えてないけど?」
「無意識に意識してる」
ぐうの音もでない。
「ところで、三宮大和。あなたは、わたしをここにおいてくれるの?」
概念の表情に少し不安が見える。
僕は頭をかきつつうなずく。
「ありがと・・」
ほんのりと笑みを浮かべるその姿に、ちょっと胸が高鳴る。
久しぶりに見た幼馴染の笑顔の破壊力は半端じゃない。
さすがにこの地域随一の美少女といわれてただけはある。
もっとも、そっくりさん、なんだけど。
「いいってば。というか、フルネームはやめて。よく知った顔にフルネームで呼ばれるの、きついから」
「彼女はあなたをなんて?」
「・・・大和」
「ところで、大和。食事というのはまだ?」
「・・は?おまえ食事するの?」
「一個体として脆弱になった今、エネルギーが必要」
「・・・・はあ?概念は自分で概念だなんていってる以上概念じゃないのかよ?概念は食事なんて・・・」
いってて、自分でもよくわからなくなってきた・・・。
「えっと、とりあえず食事にしない?それから、呼び名変えていい?混乱する」
「なんと?」
・・。なんだろう・・。
「とりあえず、食べながらかんがえよっか」