爆発しろ!
人の幸せは、祝いましょう。
「リア充なんか、爆発しろお!」
「そんなこと言って、ホントに爆発するわけないだろ──」
知ってらあ! そんなこと……でも、今学校の廊下を一緒に歩いている弘には、彼女がいるわけで……
「いいよなぁ、お前は彼女が居て」
「何だよ。なら洋だって彼女作ればいいだろ。それなりにお前、顔整ってるんだしさ。あ、でも無理か。オタク卒業しない限り──」
と弘はいたずらっぽく笑う。
確かに……俺は小学校高学年から、あるアニメと漫画に人生を捧げてきた。
部屋には飾りきれないほどのフィギュア、壁にはポスター、ベッドの枕横には好きなキャラのぬいぐるみ……。
これはこれで充実しているので、満足しているが──
「それでフラれるとか、もったいなさすぎだろ」
「いいんだよ! 自分の趣味を理解してくれる人と付き合うんだ──!」
そう、あれは俺が高校生になって、初めて好きになった子に告白した時だ。
ストレートに告白した俺は、彼女が放った言葉に固まり、膝が震えたのを覚えている。
その言葉は今でも、一字一句鮮明に思い出せる──
『……私、オタクと付き合うとか無理なんだ……。あのお店、アニメイト……だっけ? そこを偶然通りかかった時、見ちゃったんだよね。青い袋両手いっぱいに持って、スゴく満足そうにニヤついてたの──』
固まったね、俺は。膝もガクガクしてさ、ほんとに膝ってガクガクするんだなぁって、その時初めて知ったよ。
そして、今更ながら結構長い言葉をよく覚えてるもんだ──
「まあ、いんじゃね? 多分そんな人いないだろうけど」
「そんなのわかんないだろ! くそ〜っ、リア充爆発しろお──!」
その時だった。
ボンッと何かが爆発した音がしたのは──
「え……?」
一緒に歩いていたはずの弘が消えていた。
「……弘?! 弘!!」
名前を呼んでも、ただ数人の戸惑う生徒に見られるだけだった。
「何で──?」
さっきの言葉が? そんな、だって……本当に消えるとか……──
「ありえない……」
とりあえず、教室に行こう! そうすれば、きっと……
*
「……嘘だ──」
教室には、数十人の生徒がいた──彼氏、彼女がいない人たちだけ──
「夢なら……」
覚めろ、覚めろ、覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ覚めろ──!
気が狂ったように、壁に頭を打ちつけた。
痛ええぇぇっ……。これは、夢じゃ……
「ないのか……っ?」
頭を打ちすぎたせいか、クラクラして意識が飛んだ──
*
「ん……んん……?」
気づくと、自分の部屋にいた。
「……夢?」
頭を触る。たんこぶが出来ているわけでも、へこんでもいない……。てことは──
「夢だったんだ! そうだ、弘に電話……」
アドレス帳から弘の名前を探して、呼び出す。
数回の呼び出し音がして、もしもし──と弘が出た。
「もしもし弘?」
『うん、どうした?』
「いや、今変な夢見てさ」
『へえ、どんなよ』
「何か、俺がリア充爆発しろお! って言ったら、本当に消えた」
『マジかよ、ありえ──ボンッ……ゴトトッ……』
夢で聞いた爆発音と、何かが落ちる音がした。きっと携帯が…………。
俺は静かに、携帯を閉じた──
本当にこうなったら、嫌ですね……。
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