〜第1話 月光蝶〜
あれから何ヶ月が過ぎたのだろうか。
私には分からない。
否、分かる必要もない。
あの時の誓いは、脆くも崩れ散ろうとしていた。
止められない、制御できない自分の気持ちは、日に日に強さを増していく。
その気持ちを必死に押さえつけ、平然を装う。
自分自身でも一番気づきたくない感情。
もう二度と持たないと誓ったあの感情が、私の中で芽生えている。
認めたくない。認めたくない。認めたくない。
――捨てたはずなのに!!
自己嫌悪に陥る。
だって、そうでしょ?
私が持ってはいけない感情は他でもなくソレなのよ?
また種を蒔くつもり?
はっ、馬鹿じゃないの?
もう一人のワタシは私を笑う。
――それでも、止められなかった
どうしていいか分からない。
今まで、自分を偽りすぎたから。
また、楽しい時間にピリオドを打つつもりなの?
嗚呼・・・ これを“呪い”と言わずして何と言おうか?
貴方に“嫌い”と言われるのが怖かった。
現実を突き付けられるのが恐ろしかった。
――自分が傷つくのが怖かった
私が傷つく?私は何を言っているのだろうか。
いつ私が傷ついたというの?だったらあの時のあの人のほうが・・・
――じゃあ、あの人はいつ傷ついたと言ったの?
私が苦しみ、涙したのは事実であっても、
あの人が、どう感じたかは私の勝手な予想でしかない。
結局、私は最初から現実など見つめていなかったのだ。
言い訳をし、偽り続けた私の気持ち。
本当に傷ついたのは私から見れば私だったということ。
臆病な私は気付かないフリをしていただけなのだ。
そして私は気が付いた。
何よりも愚かなのは自分を殺し、偽ることであり、
大切なのは過去より今であるということに。
私の行動は私の責任。
なら、何を恐れることがあろうか?
真実を告げることに何の罪があろうか?
そうして私は一歩踏み出す。
貴方に“好き”と伝えるために。