無謀な挑戦
タクト視点
「ようやく決勝になりましたね…………。」
「いやいやいや!!目黒は普通に言ってるけど一年でストレート勝ちで来るのは基本無いから!!」
私のクラスでは希留葉、秋原、目黒、ヤッちゃんと私というメンバーでスポーツ祭のバスケの決勝戦まで勝ち上がっていた。
「フン、所詮運良くくじ引きでシード、その後もそこそこな三年などの微妙な実力な所やサッカーに力を注いだチームばかりに当たっていただけじゃないか。」
「…………何話ぶりに出てきた?オタイチ………?」
「俺は秀一だと言ってるだろ!!」
しかし希留葉の言う通り、最近見かけなかった気もする。まぁ、それはそれとして、なぜか滅茶苦茶疲れているヤッちゃんの方に向かう。
「なんでヤッちゃんはそこまで疲れてるんだっけ?」
「お前等とは………別の……事も……してんだよ……。しないと俺は死ぬ…………」
まるでエベレストを登り終えた後のように息をゼハゼハと出しているヤッちゃんは鬼気迫る物があった。
「おいおい、そんなんじゃあ勝てねぇぞ。つーかなんで疲れるんだよ?」
「誰のせいだと思ってやがる……………。」
理由は分からないが、ヤッちゃんは希留葉に途轍もないほどの怒りを向けていたが、希留葉は気付いていなかった。
「おーい、そろそろどっちがビブス着るのかを決めないといけないんだが~。」
チーム内でそうこうしている内に、三年生のチームの人がこちらに向かってきていた。
「じゃあ代表のジャンケンに行ってきますね。」
「まぁ先攻後攻が決まるわけじゃないから気楽に行けよ~」
競技はバスケであり、ジャンプボールで始めるため、先攻後攻のジャンケンは存在しない。そう思っていると、目黒がジャンケンが終わったのか帰ってきた。
「………ゆっさんとジャンケンでしたけど、また負けてしまいましたよ………。」
どうやらサッカー部の部長さんが相手チームにいるらしかった。
「しきりに仁をチームに入れないか?と言われましたけど、キッパリと断りましたよ!!」
「いや、真名部は女だからチームには入れないだろ?」
秋原の言うとおり、仁は男の容姿だがれっきとした女なのだから、チームには入れられないだろう。
「とはいえ、バスケ部の部長、エース、サッカー部の部長に生徒会長で力仕事満天の演劇部副部長のチームが相手というのは厳しいな………」
「部長ばっかりのチームかよ!!」
「………………やっぱり無謀すぎない?この勝負……。」
私は本気でそう思った。運動部部長が集まるチームには勝てないだろう。サッカー部三人にがり勉(オタゲー好き)に元女子の私が叶うわけ無いじゃないか!!
「タクト………がんばって。」
「いや、夏音………さすがに私はあのメンバーに勝てる気がしないよ。第一これまでは運が良かっただけで実力じゃあ……」
「……大丈夫。タクトなら、やれる。」
「その眩しい瞳はやめて!!余計にプレッシャーになるから!!」
夏音のまぶしい瞳から私は逃げることができなかった。いや、本当にあのメンバーに勝てる気はしませんよ。うん。
「な、なぁ……星也、勝てよ。お、応援してるから…。」
「はい!!仁!!僕は絶対に勝ってきますからね!!」
そして、チームになって円陣を組んだ。
「「「せめてパーフェクトだけは取られないようにするぞ!!」」」
これは私と秋原、希留葉の三人であって、次の二人は無謀にも「「絶対勝つぞ!!」」と叫んでいた。
「…………とりあえず、目黒と真名部のイチャイチャのせいでハードルあげてる奴もいるけど無様にはやられないようにするぞ!!」
そう言っていた時期が私達にもありました。しかしそれはバスケ部のエースの佐倉 レイアによってあっという間に打ち砕かれた。
始まりのジャンプボールで私は佐倉さんと向かい合った。バスケ部のエースなので確実に取られてしまうことは想定していた。そのために攻めるのではなく守りのために私達のチームはマンツーマンで相手を全員マークさせていた。
「プレイ!!」
審判役の先生が叫ぶと同時に、私は跳んだ。なるべく高くボールに向かって腕を突きだした。…………が、そこから見えた風景はあまりにも信じられないものだった。
佐倉さんはジャンプボールで掴んだボールを誰かにパスするように叩きつけるのではなく、手首をスナップさせてそのままシュートした。
当然のように誰も反応できない。マンツーマンで守っていたので自陣のゴールの事なんか気にしていなかったのだ。
「……よし。OK。」
佐倉さんは当たり前のようにそう言って、前に進んだ。ゆっくりと、そして誰も彼を止めなかった。いや、止められなかった。ただ呆然としてボールを見つめていた。
ボールは綺麗な半円を描き、ゴールにスポッと入ってしまった。それにより、相手側のスコアボードに3が追加された。
もしもバスケのゴールの仕方に芸術点があるのならばかるく10点や30点程取れる。距離によって違う幅がもう少し多く長かったら10点はなる場所からだ。それを手首を軽く捻っただけであそこまで届いたのが私には未だに信じられなかった。
「さすが、天才。こうでなくちゃ。」
体育館の中で誰かが呟いた気がした。それから私達の試合は進んでいくのだ。………すみません、無理です。100点ゲーム軽々行かれそうです。
伊「他の作品に掛かり切りになって遅くなりました。すみません。」
魅「でも段々と主人公であることを忘れかけられている自分もいるんですけど……」
伊「………主人公なんだこら出番はあると思うよ……。」
魅「次回、天才は不器用で大雑把。」
佐倉「……………?」