再会の笛はトキメキとともに
紫苑視点
「あ、紫苑ちゃん。そっちのクラスも負けたの?」
部長が私のクラスを応援しているときに話しかけてきた。
「今試合中なんですよ。でも劣性なので多分負けますね…………って、あ。負けました。三年生は強いですね…」
すると部長はえっへんと胸を張った。
「でしょ?やっぱり三年生は一年に負けるわけにはいかないのよ。」
そう自慢げに言っている部長が急に宙に浮いた。後ろから天城さんが持ち上げたのだ。
「そーゆー俺達は両方一年に負けてるんだが?」
「そ、それは………その………運が悪かったんだよ!!」
「まぁあのスパイクサーブだけでマッチポイントまで行った奴は正直スカウトしたいがな……。まぁ、もう運動部入ってそうだし。」
「いやいやいや!!まだ入ってないと思うよ!!だってあの子他の運動部からもスカウト受けてたけど全部断ったじゃん。しかも彼氏いるらしいよ!!」
「それは妬みか?まぁお前みたいなちんちくりんを貰ってくれる物好きはいないだろうしな。」
「ムッ、何やらロリをバカにするような言葉だよ!!ちんちくりんの私への冒涜だよ!!恥ずかしくないの!!」
部長はそう言って天城さんを殴ろうとするものの、簡単にかわされて首根っこを掴まれて宙ぶらりんになっていた。
「大体普通の身長だったとしても我が儘な性格と自分勝手な性格のどちらかは直せ!!だから幼なじみはお前の妹とか姉とかを嫁にしたいと思ってるんだよ!!」
「幼なじみって誰の事ですか?」
「まぁ、俺のことなんだが。ちなみにコイツの姉と妹はあんまり我が儘言わないぞ。休日に無理矢理買い物に連れ出そうとしたり人が昼飯用意しようとしてるところで家に引っ張られて試食させられたり、一緒に風呂入るとか言ってきたりするぐらいなんだ。」
「それも十分我が儘だと思うんですけど………」
すると、天城さんは少しだけ黄昏ながら言った。
「少なくともな、実質大道具兼小道具が一人の状態で気分でヤる劇を変えられるのはきついんだよ!!轟にも分かるかもしれんが最初にロミオとジュリエットやると言っていてやっぱりアラビアンナイトやろうとか言い出してはやっぱり明智光秀の本能寺の変とかやろうとか言ったあげくにやっぱり恋愛物の恋○やろうとかで舞台は全部新品でねとかいうやつに比べたらどんだけましか!!しかもその間に衣装の制作やらなぜかしらんがやらされる部費集めのバザー用の編みぐるみもやらされてさらにコイツのショッピングの荷物持ちまでさせるやつは中々いないんだよ!!」
天城さんはそう言ってからしばらくしてハッとしたように言った。
「やべっ!!俺のクラスの試合出ないといけねぇんだった!!チビに轟!!やること無いなら来い!!」
そう言ってから天城さんは試合会場に行ってしまった。
「まぁ、ギャラリーは多い方がいいらしいからねぇ。」
「というより部長って姉妹の方がいらしたんですね。てっきり一人っ子かと思ってました。」
「なぜか皆そう言うんだよね~。我が儘とか言われることも多いし身近にまとめる人がいなさそうとか言われるからね。」
まぁ、ここでだべっていてもしょうがないので移動する事にした。
「まぁ、どちらにしろ決勝戦だからね~。ちなみに紫苑ちゃんのクラスは三位決定戦で負けていたからね………決勝は一年と三年生らしいけど。ちなみに天城のクラスは優勝候補だけどね。生徒会長とバスケ部のエースと運動部部長が二人いるからね………まぁ、一年生もかなりやるらしいけどね。」
そんな呑気な部長の声を聞きながら決勝の行われる第一体育館に向かった。
第一体育館に着くと、係りの人が忙しそうにビラを配っていた。それを部長が一枚受け取っていた。
「なんか新聞部が大急ぎで刷ったみたいだね………決勝のメンバーの紹介が書かれてるね………。」
どうやら決勝戦の対戦する人の写真が貼られているらしかった。私は部長が貰っていたビラをのぞき込んだ。その中には生徒会長や天城さんの写真もあったのだけど、私は一年生チームの写真を見て、ガバッと選手達の集合している場所を見た。
転校生、伊吹 タクト。
それが、あの人の名前だと初めて知った。合宿の時に助けてくれた、王子様みたいな人に、私は再会した。
「同じ………………高校だったの?」
思わず私はその言葉を口に出していた。口に出さずにはいられなかった。
「こんな偶然って…………あるんでしょうか?」
「?一年と三年の決勝なんて何回もあるけど?」
部長が的外れな意見を言っているけれど、それすら耳に入ってこなかった。
ピィィィィィとホイッスルの音が鳴り響いた。試合開始の合図だった。その笛の音とともに、私は天城さんの応援ではなく一年生チームを応援していた。
「頑張れ。タクトさん。」
私はそっと声を出しながら、タクトさんの応援を始めるのだった。
海「更新が遅くなり申し訳ありません。次回更新も恐らく別の作品などの関係で遅くなるかもしれません。」
伊「次回は久しぶりに私視点の話なんですよ~。」
海「ようやく準主役のオーラがでてきたな…………………」
伊「気にしてること言わないでくださいよ!!次回、無謀な挑戦。」