異常の二人の愛の告白 前編
仁視点
私は、普通の女の子の顔が良かった。
平凡な女の子の顔が良かった。
女の子の顔なら、誰だって私を普通に見てくれたんだ。
なんでこんな顔なんだろう?
醜くはないけど、私の体には合っていない。
この顔で一生過ごすなら、醜い方がマシだ。
私は、毎日この言葉を繰り返しながら自分の顔を鏡で見るのだ。
産まれたとき、両親は私を半分男、半分女の扱いで育てていた。それが、私を崩していくと知らずに。
しかし当時の私はそれでもあまり気にせずに両親に流されていた。男の子の服は動きやすかったし、女の子の服も十分着れた。
私の顔は私の性別が男の方の良い顔なのだ。
女性として綺麗とか、可愛いとかでなく、男性として格好いい、、イケメン、ハンサムなどなど、顔だけならこんな事を言われることが多かった。
しかし、そんな人達も、私の女としての体を見ると、途端に気持ち悪いと騒ぎ出す。そんな事がないように私は前髪を貞子のように伸ばしていった。
声も、小さくしないと女の声だとギリギリ言える声が出ない。普通にしていると私の声は何かの乙女ゲームの声優さんのような声が出るのだ。世界中を回っても、素でこの声が出る女の人は少ないだろう。そのくせ、この声は段々とかっこよくという形になっていくのが悲しかった。
自分は声すらも男なのかと嘆くようになった。
子供の頃は男の子に間違えられる程度の事なので別に良かった。制服だって無かった。中学も私服で男女混合だから、何も気にしなかった。プールもなければ男女分かれての作業も全くなかったから、この頃はややノビノビとしていた。弊害として、怒鳴るときにドスを効かせるテクを覚えてしまったのだけど。
それに、胸も大きくなかったから、問題なかったのに、何もしてないのに高校に上がる頃に徐々に大きくなり始めた。それから、私の不幸は始まったのかも知れない。
元々男っぽく育ってきたのだけど、中学でなった思春期という物は恐ろしく、私は段々と男の子らしい行動をしなくなっていた。外で遊ぶよりも中でゆったり本を読んでいたり、裁縫とかしていたり、料理も始めていた。だけど、周りの人達は私が女だということを認識しておらず、私は高校になるまで別に大丈夫だろうと思っていた。
私が最初に受かったのは少し上品な女子校だった。学校側にも男ではないと説明されていたので、私はそのまま高校に行くことにした。まぁ、それでも前髪は伸ばしまくっていたけと。
それから三日ぐらいは平和だったのだけど、私は女子のいじめや嫌がらせ、噂の伝達力などを知ることになる。
女の子と話すことも少なかった私には、とてつもなくキツかった。
最初の高校では少しだけ仲良くなった女子が面白がって私の髪を捲り上げたのが原因だ。 そして、男が紛れ込んでいる!!とかオカマとか言われまくった。
まぁ、男の顔男の声なのに胸があり女子の制服着て女子校にいたら、普通は通報物だろうね……私は本当に女なんだけどね。
そして、その事に耐えられなくなり、、高校を父さんの転勤にあわせて変えることにした。
アパートは引き払い、今度はどうなるかと怯えていた。
せっかく入れた高校を辞めるのは気が引けたが、正直言ってあの高校にいたら私はこわれてしまうのではないか?と思うと、いつの間にか逃げ出していた。
それから別の共学に入っても結果は同じ。
今度は父さんの実家の祖父母の家に私だけ引っ越すことになった。父さんの姉の旦那さんが凄腕の家庭教師なので最悪大検で大学に行ける知識は手にはいるだろうということだ。
城九乃坂は、祖父母宅にもっとも近い高校だった。だから、そのまま転校した。
そして、昨日、城九乃坂でもバレてしまった。私の自業自得なのか、それとも私に対する因果応報なのかは和からないが、私はただ、バレた後に叫んでその場の空気を誤魔化し、その場で逃げるしかなかったような気分だ。
バレた日は訳の分からない言葉で私を宥めようとする奴や驚いて開いた口が塞がっていない子もいた。
次の日も私は登校した。
私をいじめてくるやつらが行動を起こしたのは次の日からな事が多かったからどうなるかと思ったのだ。
そして、今日は昨日いなかった奴が私の事を心配しているのだろうかは知らないが、私にしつこく詰め寄った。
私は叫んでからまた逃げ出した。
自分の言ったことは正しい。もう不登校になるだろうし、その内退学届けも出すかも知れないから、私はこのクラスにはもういなくなるだろう。私は、その場から最近行き方が分かった屋上へと向かっていた。
屋上へ行く間に、しつこく言ってきた奴………目黒星矢を見て、私は普通の女の子がなるような感覚に襲われた。これまで散々男っぽい格好でしかも顔と声が男、体は女の組み合わせで絶対に引かれるか嫌われると自分でも分かっているくせに、なんで一目惚れのような感覚になっているんだ私は!!と、自分にミーハーな部分があることに驚いていた。
屋上に着いた後、屋上の入り口を方を振り返り、私は息をのんだ。
そこには、息を切らしている目黒がいたのだ。
なんで私を追いかける必要があったんだ?しかも、息切れするぐらい必死で?
私は別にいなくなっても、あいつには何の問題も無い筈だ。
「はぁ………はぁ………。」
息切れしている目黒の言葉がはっきりしてから私は目黒に問いかけた。
どうせ、私の事を同じクラスだから大切にしないといけないぐらいにしか考えてないんだろう。そんな偽善は別にいらない。そう思っていた。
「真名部………僕は君がクラスからいなくならないで欲しいんだ…………。」
私は、あぁ、やっぱりただの偽善じゃないか。
「あぁ、そーかよ!!まぁ私はクラスに戻ろうと思ってねぇんだ。悪いけど、偽善なら諦めてくれ。」
私は、そう冷たく言いながら少し低いフェンスに寄りかかった。メンドクサくなってきたら、さらによっかかって死んでしまおうかとも考えた。
「…………偽善じゃない。僕の………僕の勝手なワガママなんだ。」
私は、呆れながら目黒に向かってこう言っていた。
「じゃあなんなんだよ。クラスのためじゃないならなんでここにいるんだよ!?」
気が付くと、私が見る世界が少し潤んでいた。
何で私は今こんな風になっているんだ?そう感じていた。
目黒は、私の予想以上の事を言ったのだ。
「真名部 仁さん…………僕は、貴女のことが………好きです。つきあってください。」
…………その瞬間、私の顔は多分物凄く赤くなっていたんだろう。まぁ、前髪で隠れているんだけど。
星「僕は、綺麗なだけの女の人を愛せない。かといって、歪んだだけの人も愛せない。そんな僕が、初めて一目惚れをした。だから……………。」
次回、異常な二人の愛の告白 中編