女だったのにひどいや
タクト視点
「はぁ~。これで買い出しも終わりだなぁ~。」
無くなりかけていた調味料と数種類のお菓子、後洗濯機で使う洗剤の予備を買ってから我が家へと歩いていた。
「今日はネオンはボランティア、ツァルトと龍水は小学校で桜餅を作ろう!!イベントに行ってるから今日は思う存分ゴロゴロできる~。」
お昼は手抜きで人参とベーコンのチーズ炒めで大丈夫だろうし。
「さ~てと、片づけてからゆっくりしますか~。」
そう言って私は洗剤を補充するため、脱衣所のドアを開けた。
魅恩視点。
30分ほど前…………。
「久しぶりの我が家だなぁ~。」
ドレスから着替えて制服に戻るついでに、我が家のお風呂を久々に使おうと、僕は風呂に入った。
「はぁ~。こんな風呂もたまにはいいなぁ~。」
いつもは他の人と入ったりするけど、少しだけ広い風呂を一人だけでつかるなんて事をしばらくしていないから、かなりさっぱりする。
上がってから、タオルで体を拭いていると…………。
ガチャリと風呂場の脱衣所のドアが開く音がした。
「洗剤の補充しないとね………。」
知らない男の人だ。
その人は、僕に気づくと、顔を赤くした。
「へ…………。」
「え…………だ、誰…………?」
その視線が、一糸纏わない僕の体に向いていると分かると、なぜか僕の顔まで赤くなる。
「そ、そ、そ………。」
僕は手に持っていた洗面器を振りかぶる。
「それはこっちのセリフだぁーーーーーーーー!!!!!!」
目を瞑ってはいたが、間違いなく洗面器は彼の頭にクリーンヒットした。
タクト視点
あぁ、気を失う前に確認しておこう。
あの子は誰なんだろうということと、私の顔がなぜ赤くなっているかだ。後、ついでに股間に違和感があるのは多分下ネタだから触れないでおくにしても………。
私だって元女だ。
まぁ、女の子らしいのは歌を歌うことが好きなこととかだろう。少し格好が男っぽいとか中性的なもの………スカートを穿いていなかったら男の子と間違えられるし、声だって少し低いから歌の時は重宝したけど…………。
でも、女だからそれなりに女の子のこんな姿は何回も見たことあるのになんで今顔が赤くなっているんだろう…………?
目が覚めると、制服を着たあの子と海覇さんが立っていた。
「あー、だから説明してなかったのは悪かった。まぁ、ノックしないで開けたアイツも悪いってことで。」
「………というか、兄様はこんなことしょっちゅうですよね?」
兄様?え~っと、ちょっと待って。
確か海覇さんを兄様と呼ぶ人物が…………。
「あぁ、紹介する。元男の染宮魅恩、俺のいとこだ。で、あっちが元女の伊吹タクトだ。」
「「えええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!」」
私と魅恩さんは二人で叫んでいた。
「ちょっと兄様!!聞いてないんですけど!!もう一人いたんですか?被害者!!」
「被害者じゃない。こいつは助けた奴なんだよ。ちなみにお前と同じ血液型だった。今はABだが。」
そんなこんなで、私と魅恩は色々と説明を受けるのだった。
「とりあえず厨房には入らないでください。」
「元男に任せる人がいるかと思うけど………。」
「仮にも居候している身なら従って置いてください。僕は未知数のあなたの料理を信じるのは難しいんですよ。」
「ならそれを私に押し付けないでくれるかな………。料理はしてたよ?一応。」
「材料からして手抜きでしたよ?ちゃんと作ってあげますから。」
そう言って作られた料理は人参とジャガイモ、ベーコンを炒めた物だ。それに、何回か味付けしていく。
「というより、ここにあるスパイスとか使わないんですね。あ、これ賞味期限過ぎてますから捨てときますね。」
………はっきり言ってしまおう。悔しいけど………。
私より何段も上だ………。
「これまで私が必死に努力したのは何だったのかなぁ………。」
これでもお母さんの手伝ったりしてたよ?
「そのくらいだと追いつかないぞ、魅恩には。部活動でもやってたし一人暮らし長いからな………。そういや都市島行ってからモンブランとかのオーブン使うお菓子が作れて嬉しいとか言ってたな………。」
とにかく、一口食べる。
もう挫けそうだ、元女のプライド………。
もう良いですよ、元から男だった~で良いですよぉ~。
私の女として暮らしてきた15年間は、あっけなく崩れ去った。まぁ、中学の頃、家庭科の成績はペーパーテストで繋ぎギリギリ5段階評価の2だったし………。
家庭科あるあるは全て達成したかのように思える。勿論、小学生時代も含めてだ。(林間学校含む。)
・野菜を洗剤で洗いかける。
・米研いだ後米ごと水流す。
・猫の手し忘れ指な皮すれすれを切った。
・ピーラーで指を切る。
・魚やホットケーキが真っ黒焦げ。
・送る風が強すぎて火が消える。
・飯盒を途中で開けお粥状態
・針に糸が通らないまま一時間無駄になる。
・ミシンで自分のスカートまで縫いつける
…………なんだろう、言ってて悲しくなってきた。
伊「あんなことがあっても四苦八苦しながらやったんですよ…………。でも、ボタン落ちたら自分の方が夏音につけてあげようか?って言われる立場でしたよ………うぅ………。」
ア「大丈夫ですよ、ちゃんと努力していればむくわれますよ。」
伊「次回、海覇の近親相姦対策の全貌?」
海「まぁ、俺は家庭科の授業では何もするなって危険視されてたがな、中学時代。」
魅「何やったの兄様…………。」