タグに付けろよ男体化
目を開けると、そこは知らない天井だった。
「起きるのに一ヶ月近くかかったな………。やっぱり時飴のせいか?まぁ、いいか。調子はどうだ?」
多分あの時助けてらった人だろうと思う。ボサボサの紫の髪、白衣の時点で分かった。
おかしい響きの一ヶ月という単語は置いといて、
「あ、大丈夫ですよ。むしろ一ヶ月も寝てたとは思えないほどピンピンしてますよ。」
あれ?少し声が低くなっている気がする。
「そうか?まぁ、時飴の後にあの薬だからな………。」
「まぁ、命が助かったなら問題ないですよ。」
「そうか………一ヶ月も寝てたのに、随分と余裕持てるんだな。」
……………一ヶ月?
「って、私は一ヶ月も寝てたんですか!!じゃあ高校は?部活入りたいと思っていたのに遅れたら嫌じゃないですか!!」
そう叫んでからふと胸と股の二つの部分に違和感を感じた。あった物がなくなって、無かった物がある………。
「えーと………これって………。」
「あ、お前は男になってるから。」
「えええええええええええええええ!!!!!!」
叫び声も男の子のように低い。
「まぁ、一ヶ月寝てて起きてからの方が衝撃なんだな。」
「いや、ちょっと待ってください!!男になったって言われても!!」
「はぁ~、これしか思いつかなかったんだよ……。血液型変わるようにこの薬うってから輸血するぐらいだっつーの。」
「え?じゃあ今私の容姿とかって………?」
立ち上がってみると、視点が高い。おそらく10㎝は伸びているだろう。それに、胸も軽い。そのかわりに股にすごく違和感を感じる。
鏡を見ると、そこには黒い髪でショートヘアの男がいた。
多分………いや、間違いなく私だ。
「そーいえば自己紹介がまだだったな。俺は染宮海覇。職業は……。」
どうせマッドサイエンティストだろうと思っていると……。
「小学校で算数を教えている教師だ。」
予想外の答えだった。
「いやいや、なんで算数の教師がこんな薬作れるんですか?学歴は?もしかしたら医学部とかで医者がめんどいから小学校の教師になったとか、大学時代にロリコンに目覚めたからとかだろうなぁ~と思って聞いてみた。
「大学ってどこ出たんですか?」
「大日本テクノロジー研究大学他惑星適応植物研究学部都市島プロジェクトチーム副主任。これが大学時代の肩書きだな。今は私立アフロディーテ女子大学附属小学校の教師だ。まぁ、お嬢様学校になってはいるが、あそこが一番楽できるとこだったからな………。」
「超名門の大学附属って……確かあそこは慶応とか早稲田とかと同じぐらいの名門だったような………。」
「まぁ、楽な授業だよ。頭良いヤツばかりなら基本教えりゃ大体終わるし。あ、あそこで一年目やる新人は多いらしいよ?成績とか良くないとすぐ首になるけど。」
「…………………。」
「覚えてないかもしれないけどもう一人いたろ?あいつ補助教員って感じで入っていてさ。今4月で新学期になってから修行という感じで別の小学校に移動になった。」
軽ーく言わないで、左遷の話。
「で、高校についてだが、どこ受けていた?裏口入学とかはやらせねぇというかむずいんだよ。枠とかの関係で。正直に言ってくれよ?」
「行くところだったのは城九乃坂高校だったんですけど……。あ、学部は普通科総合進学コースでした。」
「城九乃坂高校か、運がいいな。そこ俺の母校だ。」
そして、海覇さんは電話を取り出し、どこかへコールした。
「もしもし?あ、今お前が引き継いでんのか、コウモリ。え?私の名前は光 森夏?知るか、コウモリ。あー、そうだった。要件忘れるとこだった。入試通ってまだ来てないヤツいるだろ?そいつ男にしておいて通わせてくんね?あ、もしやらなかったらお前の部屋に強化型ゴキブリを………、え?やってくれる?良かった。途中誰がお前のことなんか聞いてやるか。好きな人をハゲにしやがって………絶対に聞かん!!とか聞こえたけど空耳かぁー。じゃ、任せるわ。」
少しこの人がなにやったのか、そして強化型ゴキブリとは何なのかが気になったけど高校には通えることが分かった。
「じゃ、男のいろはとかを教えておくか。マニュアルはあるから、それで女子の時との行動を変えろ。えーと、名前なんだ?」
そういえば名乗らせてもらえてなかった。
「伊吹 タクトです。」
「タクト?男っぽい名前だな……。」
「いえ、父が音楽家で、指揮棒のタクトからとったと………。」
「そーいえば電話番号とか知らなかったから親御さんに報告してないんだよ。携帯は充電しておいてやったからそれでかけておいてくれ。」
男になったことを受け入れていないところで恒例の親への報告………最悪だ。
とりあえず父さんの携帯に電話をかける。
その後、一回取られるのが遅いという理由でコールがきれる。
父さんは携帯がなっていてもあまり気にしない人だからな……。昔妹のでるコンクールの日程が書かれたメールが来たのに気付かずに放置して妹がコンクールに出れなかったこともあるのだ。
結果、8分ぐらいしてようやく電話が繋がった。
「あ、ようやく出たか………。もしもし?父さん?」
「お、いいテノールの低い声が出てるじゃないか、タクト。声域広くなったんだなぁ~。」
「一ヶ月家にいなかった娘からの連絡での第一声がそれ?父さん?」
「一ヶ月前?そーいえば母さんについてスゥエーデンに飛び立った時見送りしなかったな………。家帰ってなったのか?不良にはなりたくないって言ったお前が。」
「いや、あの時に事故にあってさ………。」
「大量出血した訳じゃないよな?」
「それが、してしまいまして………偶然通りかかったマッドサイエンティストに助けてもらいまして……。」
「なんだ?人体実験とか犯されたりしたのか?」
物騒だな………。父さんの考えることは。
「いや、それよりも衝撃的で……治療法の関係で、男になりました……。」
「そうか、まぁ父さん達はそんなことでお前を見捨てないと思うし大丈夫だ。母さん喜ぶぞー。男の子欲しいって言ってたし。」
「人の一世一代の報告をあっさりと受け入れたよ………。」
「じゃな、次会うのは母さんの横浜講演のCMが流れてからだな~。じゃ、弟か妹作って帰るかもしれねーから心待ちにしとけよ!!」
「いつまで営みやるつもりだよ!!もう妹は間に合ってるつーの!!」
「弟ならいいのか?」
「できればもう兄妹はいらないから………。」
「なに?新しい生命の誕生の可能性を否定するのか?父さんそんな子に育てた覚えありませんよ!!」
「あー、とりあえず切るよ。いい加減そのバカップルっぷりやめてくれないかな?」
「お前もそうなるだろう!!じゃあまた夏までよろしくな!!」
そういって電話が切れた。
これからどう生きていけば良いのだろうか?
伊「次回も私視点の話になります!!」
海「ちなみにコイツの名前、作者は名字を何にするかめちゃくちゃ迷ったらしい。」
伊「だからなんでメタらしい言葉やるんですか?」
海「そーゆーキャラは必要な時がある。」
伊「いらないと思いますけど、次回予告の時は良いんですよね………。」
海「まぁそーゆー事だ。次回、ブラコンはもう三人いる。」
伊「いや、三人しか分からないんですが。まだいるんですか?」
海「お前はまだ会っていないからな……。」
海「ちなみに、伊吹タクトの名前の由来はイ○○ャラを見れば分かると思う。」
伊「いや、分かりにくいですよ、それ見ても。」