表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/17

結婚…いえ、また恋人から

遅くなりました…(汗)

これにて最終話となります。

「行ってきます」

3月下旬…

制服に着替え、朝食を済ませ、玄関で靴を履いていた。


「稔ちゃん、もう行くのぉ?…」

母さんがパジャマのまま起きてきた。


「うん、今日卒業式だからね」

そう答えると。


「そっかぁ…もう中学年かぁ…しみじみ」


「いや高校の卒業式だよ…」


「ああぁそっかぁ、てへ」


「…」

母さんのこうゆう所は何時もの事だ。


「んじゃ、行ってくるよ」

玄関の扉を開け、出発しようとする。


「行ってらっしゃ〜い、後でアタシも行くからねー!」

手を大きく振り、笑顔で見送りをする母に、稔もとりあえず笑顔で「行ってきます」

と返す。


ーーーーー


家から暫く歩き、何時もの駅に着く。

春近い3月下旬と言っても、まだ北風は寒く、上着とマフラーは欠かせない。

駅にの近くに有るソメイヨシノは、まだ咲く気配が無く、寒空の下で、春の訪れを待っている。


駅の長い階段を上がり、何時ものホームへと立つ。


「…」

稔は思い返す、この高校3年間の事を…

高校入って最初のテスト…出来映えはイマイチだったのを覚えている。

文化祭…女装をやらされ、メイド喫茶で働かされたのはもう思い出したくない。

修学旅行…定番の京都だった、神社仏閣をみんなで回たり……


…うん…いい思い出だ。

楽しかったなぁ…


…………


ふと、稔は辺りを見渡す。

この日も相変わらず人が少なく、妙に静かだった。

マフラー越しに吐く息は、寒さの所為で白くなる。


「白…」

稔はボソリと呟く。

決して忘れていた訳では無い、ただあまり思い出さなかった、思い出したくなかった。

結構辛い思い出なのだ、僕にとって…

多分、彼女にとっても…


あれから一切、彼女とは会っていない。

年に1、2度、手紙で連絡をとっていたくらいだ。

勿論、直接会う機会も有った、電話で話す事も出来た。

しかし、僕等は敢えてしなかった。

姿も、声も、温もりも、再会の時までのお楽しみ、だと。


「…まだかなぁ」

そろそろ電車が来てしまう。

今日は約束の日、高校最後の日だ。

仮にまたこの日にも会えなくとも、構わない。

僕は何時までも待ち続ける、彼女が帰ってくる、その日まで…でも…


やっぱり、今日逢いたい。

今日逢って、今日また伝えたい、大好きと


「…穂香さん」

堪えられず、口に出した、彼女の名前を。

それと同時に涙が滲み出てきた。

2年前、あの日に泣いて以来ずっと堪えてきた涙。


ごぉん…


と、地を揺らし、大きな器械音を唸らせながら電車が来た。

何時もは遅れるのに、今日は珍しく定時に到着した。

普段なら遅れる事を恨むのに、今はちゃんと来た事に、恨みを持つ、皮肉な話しだ。


もう…来ないの、か…

右足を一歩、前へと出し、電車へ乗ろうとする。


グッ。


不意に何かに止められた、目の辺り掴まれて、目隠しをされている。

…いや、掴まれてと言うよりは触れられてる、添えられると言った方がいいだろう。

優しく、柔らかく、心地いい温かさのする手だ。


…この温かさ、覚えが有る。


「だ〜れだ?」

無邪気な可愛い声が、稔の耳に入る。


「…うん」

勿論、答えた分かる当たり前だろ?…


「穂香さん?」


「ふふ、正解ですっ」

添えられていた手が払われ、視界に光が戻る。

振り向くと、見覚えの有る姿が凛と立っていた。

ファッションに無知な僕には詳しく分からないが、黒いジャケットに白いミニスカートに、高い黒ヒール、髪は昔のまま長く、綺麗な黒色だが、結んで、ポニーテイルにしてある。


…なんと言うか…


「…綺麗になったね」


「…ありがと」

昔みたくオーバーな程真っ赤にはならなかったが、薄く、赤く、可愛らしく、穂香は頬を染めた。


「稔さんも…その…かっ…カッコよくなりましたね、身長も結構延びたし…」


「ありがとう、穂香さん」

正直、心臓の鼓動は尋常じゃ無く鳴り響いていたが、昔みたいに、情けなくおたおたする事は無かった。


「穂香さん」

自分でも驚く程、落ち着いた声で、稔は穂香を呼んだ。


「はい?」

穂香も、その大きな瞳で、稔の目を見詰めていた。


「好きだ」

と、稔は言った。


「…」

穂香はキョトンという様な表情をした。

驚いたのか、呆気を取られたのか…


「やっぱり…変わったよ稔さんは…ホント男らしくなったっていうか…」

笑顔で、明るい口調で言っていたが、その瞳は涙で濡れていた。


ポロ…と大粒の雫が穂香の頬伝わって、地面に落ちる。


スッ…と稔が手を出し、穂香の涙をそっと拭う。


「穂香さん」

真剣な眼差しで、稔は言う。


「はい?」

それに答える穂香。


「君は僕が変わったって言ってたけど…僕の気持ちは全くあの頃の…二年前のままだよ?」

「…はい」


「だからさ、答えが欲しいんだ」


「…はい」


「穂香さん、結婚してくれ」

気が早いとは思わなかった。

一刻でも早く、この気持ちを形にしたかった、故にでた言葉だった。


「…結婚とはまた大胆な…まぁ、昔の私も言ってましたけど」

口元に笑みを浮かべ、照れ笑いをする穂香。

「そうですね…でもやっぱり、結婚はまだ早いと思いますよ?」


「…そっか」


「だから…」

グイッ、と穂香は稔の顔を引き寄せ、唇を奪う。


「!?〜〜〜〜」

流石にこれには稔も赤面。

顔を真っ赤にしておたおたしてしまう。


「ふふ、やっぱり稔さんですね」

まるでイタズラに引っ掛かった大人をからかう子供の様な、可愛らしい笑顔で笑う穂香。

「結婚は早いから…もう一度、恋人からスタートです、でも何時かは…ね?」

なんとなくだが、穂香の言いたい事が分かった。

後ろに顔を背けたのは、赤い顔を隠す為という事も分かる。


「…そうですね、まずはやっぱり、恋人から…」


「そういう事ですっ!さ、行きましょう!電車来ちゃいますよ?」


「行くってどこに?」


「学校ですよ!最後くらい行かないと」


「そうですか」


「帰ったら、デートしましょう」


「分かりました」


「じゃあ行きましょう、稔さん」


「うん行こう、穂香さん」


今度こそ、もう離さない、稔はそう心に誓った。

手を繋ぎ、二人仲良く、電車の中へと、歩いて行った。


…二人を見ている僕としては、何時までも、彼等の幸せが続く事を祈るばかりだ。





おわり。






ご購読、ありがとうございました。


そこまで長い話では無いはづなのに、気付いたら一年近くになってしまいました…

自分が不定期過ぎる、所為ですね(笑)

笑い事じゃないですよ…


とにかく、今まで読んで下さいました皆さま、本当にありがとうございました!


では、また。 菊江静

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ