9.まぶたに浮かびし美女(二日目、夜)
こうして二日目の日中は過ぎ、生き残り九人による運命の投票が行われた。しかし、結果は大方の予想に反して、鈴代に六票、葵子に三票――が投じられていた!
この日の空は、それはため息がこぼれるほどの鮮やかな茜色の夕焼けであった。霊媒師鈴代の胸に聖なる杭が打ち込まれ、二日目の処刑は滞りなく執行された。
時は、そろそろ亥の刻(午後九時から午後十一時まで)になるだろうか? 僕は七竈亭の客間で一人寝転んで、広々とした天井の木目を数えていた。小さなテーブルの上にポツンと置かれた蝋燭の炎が、ゆらゆらとくすぶっている。徐々に、僕は思考に耽っていった。今宵、僕はここで、招かざる訪問者によって殺されてしまうかもしれない。僕は北側の障子に目をやった。鍵がかかる部屋ではなし。逃げる場所はどこにもない……。
くよくよ悩むのは止めよう。僕はもう一度、これまでのゲームのやり取りを再検討することにした。まず気になるのは、いまだに天文家が名乗り出ないことである。天文家の情報は、ゲームが進行すればするほど、信憑性が薄くなる。なぜ黙っているのだろう? ひょっとして、すでに天文家は死んでしまっているのだろうか? もし、そうだとすると、村側の勝利は限りなく厳しい。
都夜子さんの優しい笑顔がまぶたの裏に浮かんでくる。彼女だけは何が起こっても信頼したい。失った亭主とは、どのような人物だったのだろう? まだ彼女はそいつに未練を残しているのであろうか?
夜が明けた。あろうことか、僕は生きている! 裏を返せば、どこかに別の犠牲者が? 都夜子さんは無事なのだろうか?