6.恐怖の夜(初日、夜)
こうして初日の議論は幕を閉じ、僕たちは処刑される者を決める投票を行った。投票は無記名で行われ、白票は禁じられている。僕は、宣言通り高椿子爵に投票した。投票は滞りなく行われ、開票された。結果は、高椿子爵に八票、大河内青年に一票、鈴代に一票。菊川に一票が投じられていた。そして、夕刻に子爵の処刑が執行された。子爵の心臓に、聖なる杭が撃ち込まれた。
間もなく、吸血鬼が活動を始める夜になる。吸血鬼は村人の中から思い思いの目標を、毎晩襲うことができる。十一人の中に吸血鬼は二人いた。もし、僕たちのもくろみ通り、子爵が吸血鬼であれば、残りの吸血鬼は一人であるが、そうでなければ、二人が生き残っていることになる。
夜間の吸血鬼たちの攻撃方法には、二つの選択肢がある。二人が同時に一人の人物に襲いかかれば、相手は失血死する。また、二人がわざと別の人物を襲うことも可能だ。その際には、ランクが上位の吸血鬼、すなわち吸血鬼Kに襲われた人物だけが、吸血鬼に感染してしまう。感染した人物は、翌朝になっても見かけはぴんぴんしており、感染しているという自覚症状はない。感染しても彼らの本来の意志は変化しないので、村人であれば村側の勝利を目指し、使徒であれば吸血鬼側の勝利を目指す。しかし、感染した人物は、生きている村人としては数えられない。そして、感染していない村人(ここでは使徒も含まれる)の総数が、生き残っているオリジナル吸血鬼の総数以下となれば、その瞬間に吸血鬼側の勝利が確定する。
山奥にある鬼夜叉村は、夜になれば漆黒の闇に覆われてしまう。しかも今晩は新月だ。そんな中、生き残った吸血鬼が行動を起こした。
そして、憐れな犠牲者が生まれてしまった……。