あとがき
はじめまして&こんにちわ。
この度は、拙作「奏世コンテイル」を最後までお読み頂き、まことにありがとうございました。三人称文体にいちいち苦戦しながら、それでも予定していた物語を消化させて、この物語を完結させることが出来たのは、一重にお読み下さった、皆様のおかげです。何度お礼の言葉を申し上げても足りないくらいです。本当にありがとうございました。
もしも、読んでいないと仰られるお方が、居られましたら、かなり長いお話となってしまいましたが、読んで、物語中に散りばめたわたしの伝えたかったメッセージの一つでも、受け取っていただけたなら、大変嬉しく思う次第です。
この先は「あとがき」という体裁をとった、製作のお話をしたいと思います。ネタバレも沢山含んでいますので、ひとつ本編を読んでから、再びこの先を読んでいただけたらと思います。
今作は、「剣と魔法のファンタジー」として計画を立てました。
しかし、当初の段階では、ハイ・ファンタジーを目指していたのに、蓋を開けてみると、結局現実の現代から遠い延長線上、二千年後の未来という世界設定となり、ロー・ファンタジーとなりました。
さらに、王道からは足を踏み外した内容であり、正統派ファンタジーではなく、邪道のロー・ファンタジーという、かなり変な小説だと、自分では評価しています。
もともと、前回の剣と魔法ファンタジーの小説「トーコと黒いこうもり傘」は、実際に伝わる伝承などをふんだんにモチーフとして取り入れました。物語の骨格から、登場するアイテム、魔物に至るまで、とにかく下敷きを用意したのが、前作です。それに対して、「奏世コンテイル」は、わたしが勝手に考えた設定を多く取り入れて、物語を作っていきました。
毎度ながらに言っていることですが、素晴らしいファンタジー作品なら、このサイトに沢山存在しています。ファンタジーに疎いわたしが、それらになんとかしがみつくためには、独自設定を考えるほかなかった、と言うこともあります。
また、当初よりキーワードに「空想科学」と書いたように、ファンタジーに多少のSF(サイエンスフィクションではなく、サイエンスファンタジー)に近いものを積極的に取り入れようという事を考えていました。その結実は、ダイムガルド軍に顕れている、と思います。
独自設定を作るのは、伝承をいじり倒すより地味に大変な作業であり、時間はかかったものの、好き勝手に出来るというのがありました。おかげで、どのようにでも物語のつじつまが合わせられる部分はありました。
物語は、当初からラストに至る部分まで考えており、前半は冒険モノ的なノリ、後半は戦争メインとなり、極端にシリアスな流れへと変化しまうことも織り込み済みで、それにあわせて、当初読みやすくするために用意した「魔法の言葉」は、中盤から一切使わないようにしました。だったら、最初から使わなきゃ良かった、とも思いますが、大目に見てください。
しかし、本人の予想を上回る流血まつり。それなのに残酷描写ありに設定しなかったのは、そこを強調したくなかったからです。今作には沢山のテーマやメッセージを込められるだけ詰め込んでいます。それが何であるかは、読んでいただいた皆様が考えていただく、としているものの、ひとつは「戦争と平和」がテーマにあります。その上で、人の死は避けて通れません。人が死ぬところが、それほど美しいものであるはずもなく、悲しみや残酷さだけが際立ってしまいます。にもかかわらず、あえて断行したのは、そこに伝えたいメッセージを込めたかったと言う意図があります。
その点において、明るい冒険ファンタジーを期待された方には、大変失礼な事をしてしまったと、反省している次第であります。なにぶん、これもファンタジー門外漢の小説ゆえに、大目に見てやってください。ごめんなさい。
さて、話は変わって。ちょっとした設定に関する裏話を。
物語の初期で使われていた魔法の設定は、すべて拙作「トーコと黒いこうもり傘」から引用しています。ドイツ語をベースとした言葉であり、同時に魔法言語や神々の時代の言葉は、すべてドイツ語となっています。翻訳機にかければ、ある程度意味が分かるかもしれません。
いつも変な共通点を設ける登場人物の名前ですが、今回はこれといった拘りはほとんどありません。アルサスの名前は、イギリスの「アーサー王伝説」の主人公アーサーを読み替えたものです。正確には「アルトス」ですが、異世界ファンタジーを書く際の主人公などの登場人物の名前にしようと、あたためていた名前です。今後の雪宮ファンタジーでも、ちらほらとその名が登場するかもしれません。
また、マリア・アストレアですが、マリアは聖母マリアから、アストレアはタロットカードの「正義」にも描かれている女神「アストライアー」から取ってあります。
他は、戦車の名前や、好きなハリウッド女優の名前などから取ってあり、比較的散漫とした名前の付け方にしています。
各軍のイメージも差異をつけたつもりです。センテ・レーバンはいわゆる中世ヨーロッパの王国をイメージし、ガモーフは十字軍やテンプル騎士団などのキリスト教系の軍隊をイメージしました。そして、ダイムガルドは旧日本軍や近代軍隊のイメージを投影しています。もちろん、そのままではなく、かなりアレンジを加えています。
また、後半に登場するアスカロンなどの剣の名前はすべて、伝承などのものを採用しています。結構節操なくあちこちから響きの好きなものを選びました。
その一方で、アルサスの剣「ナルシル」と「アンドゥーリル」は、伝承ではなく「指輪物語」の主人公の一人が持っている剣の名前から取りました。あえて、アルサスの剣だからと言って、エクスカリバーにはしませんでした。
他にも、部分部分で、伝承や「指輪物語」から名前だけをチョイスしている部分があります。探してみると、面白いかもしれませんよ。
余談ですが、十二章を書いている間、ずっと「BUMP OF CHIKEN」のアルバムを聞きながら書いていました。物語とは関係ありませんが、何故か筆が進みました。
制作期間六ヶ月。全部で百十六回、十二章、約六十五万字に及ぶ今回の物語は、これまでわたしが書いた物語の中でも最も長編となりました。非常に長い時間をかけ、何度も心折れそうになっただけに、今作にかける愛情はひとしおです。
しかし、上手くかけなかったところや、尺の都合から割愛した部分があります。(例えば、四章と五章の間で、アトリア山脈を越えるところとか)
そういったところは、今作最大の反省点であり、誤字や脱字、文章力を含めて次回作への課題点となりました。次回が、ファンタジーがはたまた別のジャンルとなるかは、まだ明かせませんが、日々精進していきたい所存ですので、是非今後ともよろしくお付き合いくださいませ。
また、わがままと知っていながらも、皆さんのご意見をお聞かせいただきたくも思います。ご意見・ご感想、質問などはいつまででも受け付けておりますので、重ね重ねよろしくお願いいたします。
それでは最後にもう一度。お読み下さった皆様、お気に入り登録して下さった皆様、感想をお書きになってくださいました皆様、本当にありがとうございました。
それでは、また次回作でお会いできることを楽しみにしつつ……。
雪宮鉄馬 2011/3