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第24話 幻竹林の守護者と、極上の絶景露天風呂

第24話 幻竹林の守護者と、極上の絶景露天風呂

 深い安らぎに包まれた夜が明け、新しい朝がやってくる。

 無名の浜辺に打ち寄せる波の音は、まるで地球という星の呼吸そのもののように、静かで、力強く、そして等間隔のリズムを刻んでいた。

 洞窟を拡張して創り上げた僕の拠点、オーシャンビューのリビングには、水平線から昇る太陽の眩い光が差し込んでいる。天井に埋め込まれた魔光石が、自然の光と調和するようにゆっくりと輝きを落としていく。

 極上の柔らかさを誇るボタニカルベッドの中で、僕はゆっくりとまぶたを開けた。

「……ん、今日もいい天気だ」

 昨日、柔毛羊(コットン・シープ)の毛と天雲綿(あまぐもめん)を魔法で織り交ぜて創り出した『究極の複合素材(ハイブリッド・ファブリック)』のルームウェアは、一晩寝た後でも全く型崩れしておらず、シワ一つない。それどころか、エンチャントされた『自動浄化』と『温度調節』機能のおかげで、寝汗の不快感など微塵もなく、肌触りはまるで淹れたてのミルクのように滑らかだった。

 ベッドの隣に目をやると、特Aランクの雷影狼(ライトニング・シャドウ)であるクロが、漆黒の毛並みを朝日に輝かせながら、無防備に腹を上に向けて大いびきをかいている。さらに窓際の巨大クッションの上では、焔翼の獅子鷲(フレア・グリフォン)のアカが、真紅の翼に顔を埋めて「……むにゃ、ちょこれえと……もっと……」と、寝言のような念話を微かに漏らしていた。

 彼らのこの平和すぎる姿を見るたびに、僕の心の中の澱(おり)のようなものが浄化されていくのを感じる。

 前世の僕の朝は、絶望とストレスの連続だった。親父の会社が倒産し、家庭の空気が凍りついてからの日々。顔を合わせれば金や因習の話ばかりする親戚たち。妹の髪色一つで大喧嘩になる両親。そんなドロドロとした泥沼の中で、僕はただ息を潜め、自分の存在を消すようにして生きていた。誰の期待にも応えられず、誰の役にも立っていないという無力感。

 しかし、神様にすべての過去を消し去ってもらい、この異世界に降り立ってからの僕は違う。

 僕が創り出したこの楽園には、僕の作った飯を心待ちにし、僕に絶対の信頼を寄せてくれる家族(相棒)たちがいる。誰に気を遣うことも、誰の顔色をうかがうこともない。

「よし、今日も美味い飯を作って、思い切り遊ぶか」

 ベッドから抜け出し、冷たい大理石風の床を裸足で歩く。魔導水道設備の蛇口を捻り、浄化された冷たい水で顔を洗うと、頭の芯までがシャキッと覚醒した。

 テラスへ出ると、魔水晶の従者(ゴーレム)であるゴレとレムが、パタパタと短い足で駆け寄ってきた。

(マスター、オハヨウゴザイマス。本日ノ農地データ、異常ナシ。甘乳牛ト柔毛羊ノ朝ノケア、完了シテイマス。現在、水魔稲ノ生育ハ第二段階ニ突入シマシタ)

「おはよう、ゴレ、レム。毎朝完璧な仕事ぶりだな。ありがとう」

 陶器のように滑らかな彼らの頭を撫でてやると、目元の青い光が嬉しそうにチカチカと明滅する。彼らが拠点管理のルーティンを担ってくれるおかげで、僕は完全に自由な時間を手に入れている。

 キッチンエリアに戻り、朝食の準備に取り掛かる。

 昨日は極上の味噌汁とチョコレートという和洋折衷の極みを楽しんだが、今朝は冷蔵庫(魔力冷凍庫)にストックしてある食材を使って、最高にジャンクで濃厚な一品を作ろうと思い立った。

「よし、今日は『極厚クロックマダム』だ」

 僕は土魔芋(どま芋)から作った自家製食パンを、厚さ三センチほどの極厚にスライスしたものを二枚用意した。

 火魔石のコンロに鉄のフライパンを乗せ、自家製バターをたっぷりと溶かす。そこに極厚パンを入れ、両面を黄金色になるまでカリッと焼き上げる。

 焼き上がったパンの一枚に、突角豚(ホーンボア)のバラ肉から創った特製厚切りベーコンを乗せ、その上から昨日作った『モッツァレラチーズ』と『パルミジャーノ風チーズ』を山のように削りかける。もう一枚のパンで挟み込み、さらにその上からもチーズを雪のように乗せ、石窯の余熱を利用してチーズがドロドロに溶けるまで一気に焼き上げる。

 仕上げに、フライパンで多めの油を使って白身の縁をカリカリに揚げ焼きにした『巨大鳥の目玉焼き』を、トーストの頂上に乗せた。

 ナイフで黄身を割ると、濃厚なオレンジ色の黄身が、溶けたチーズと絡み合いながらパンの側面を滝のように流れ落ちていく。

 暴力的なまでに香ばしいバターと焦げたチーズの匂いが、リビング全体に爆発した。

(クンクン……ッ!? な、なんだこの匂いは!! 昨日の甘い匂いとは違う、脳みそを直接揺さぶるような暴力的な脂の匂いがするぞ!!)

(うおおおっ! 起きた! 我は起きたぞ主よ! 早くその黄色と白のドロドロが乗った肉の塊を寄越せ!!)

 匂いに釣られて一瞬で覚醒したクロとアカが、目を血走らせながらテラスのテーブルに突進していく。

「はいはい、お前たちの分は特大サイズだからな。火傷するなよ」

 僕は巨大な木のお盆に、クロとアカ用の特大クロックマダムを乗せてテーブルに運んだ。

 二匹は待ってましたとばかりに、巨大な口を開けてパンに喰らいつく。

(…………ッッッ!!! 旨い!! 旨すぎるぅぅ!! 外側はカリカリなのに、中から豚の肉汁と、この伸びるドロドロ(チーズ)が絡み合って、口の中が旨味の洪水だ!!)

(この上の卵! 卵の黄身がすべての味を優しく包み込んでおる! 悪魔の食べ物かこれは!!)

 二匹が狂喜乱舞してパンを貪る横で、僕も自分用のクロックマダムにナイフを入れた。

 ザクッ! という小気味よい音と共に、パン、ベーコン、チーズ、そして卵が渾然一体となる。

 口に運ぶと、バターの香ばしさと塩気、ベーコンの強烈な燻香、そして二種類のチーズの圧倒的なコクが舌の上で弾け飛んだ。黄身のまろやかさがそれらをまとめ上げ、噛むほどに小麦(土魔芋ベースだが)の甘みが顔を出す。

 すかさず、淹れたてのブラックコーヒーを流し込む。

「……最高だ。コーヒーの苦味が、チーズの重たさを完全にリセットしてくれる」

 まさに至福の無限ループだった。

 大満足の朝食を終え、膨れた腹をさすりながらテラスのインフィニティ・チェアに深く腰掛ける。

 海風が心地よく、このまま昼寝でもしてしまいたい気分だが、僕の『地球の知識』と開拓者としての血が、新たなインスピレーションを囁いていた。

「……サウナも水風呂も最高だけど、やっぱり日本人なら『温泉』、それも絶景の『露天風呂』が欲しくなるよな」

 現在は洞窟の中に巨大な岩風呂を創っているが、やはり外の空気を感じ、海や星空を眺めながら湯に浸かる『露天風呂』の風情には敵わない。

 以前、北西の山岳地帯を空から探索した際、火山活動による『霊泉の源泉(硫黄泉)』が湧き出ているのを発見した。あの極上の温泉の湯を、拠点まで引いてくることができれば、最強のスパリゾートが完成する。

 そして、和風の露天風呂を造るなら、絶対に欠かせない装飾と素材がある。

「竹だ。風情ある竹垣と、お湯を注ぐための竹筒。それに、竹があればタケノコが食えるし、お茶の葉っぱなんかもあるかもしれない」

 和食の幅をさらに広げるためにも、竹と緑茶は喉から手が出るほど欲しい素材だ。

 僕はチェアから立ち上がり、相棒たちを呼んだ。

「クロ、アカ。今日は北西の火山地帯の麓まで遠征するぞ! 温泉と、緑の真っ直ぐな木(竹)を探しに行く!」

(温泉……? あの臭い湯が湧いている場所か。まあよい、主が行くならついて行こう)

(うむ! また新しい美味い食材が見つかるかもしれんからな! 我の翼に任せておけ!)

 探索の準備を整え、ゴレとレムに留守を任せると、僕たちはアカの背に乗り込み、北西の空へと舞い上がった。

 空から見下ろす結界内の世界は、今日も圧倒的な大自然のパノラマを広げていた。

 十五分ほど飛ぶと、荒涼とした岩肌が露出する山岳地帯が見えてくる。所々から白い湯煙が上がり、硫黄の匂いが風に乗って鼻を突いた。

 僕は『解析(アナライズ)』を広範囲に展開し、温泉地帯の周辺の植生を探る。

 すると、火山の熱気と、山の冷気がぶつかり合う特殊な気候の谷間に、見慣れた鮮やかな緑色の群生を発見した。

「アカ、あそこだ! あの緑の林の近くに降りてくれ!」

 アカが急降下し、谷間の入り口の開けた場所に着地する。

 そこには、地球の竹林にそっくりな、しかし一本一本がまるで翡翠のように美しく透き通り、ほのかに魔力を帯びた巨大な竹が密生する森が広がっていた。

(名称:幻魔の鋼竹(ファントム・スチール・バンブー)。建築資材・魔道具素材。鋼以上の硬度を持ちながら、極めてしなやか。根元に生える『霊泉筍(れいせんたけのこ)』は、アクが全くなく、フルーツのような甘みとトウモロコシのような香ばしさを持つ)

(名称:天緑茶樹(ヘヴンズ・グリーン・ティー)。食用・飲料。竹林の陰に自生する茶の木。その葉を煎じた茶は、心身の呪いや疲労を完全に浄化し、深いリラックス効果をもたらす)

「あった!! 鋼の竹に、タケノコ、そして緑茶!! 最高の和風セットじゃないか!」

 僕は歓喜の声を上げ、竹林の中へと足を踏み入れようとした。

 ――その瞬間。

 ズシィィィン……ッ!!

 と、地面を揺るがすような重い足音が竹林の奥から響き渡った。

「グルルルルォォォォォッッ!!!!」

 凄まじい咆哮と共に、太い鋼竹をバキバキと薙ぎ倒しながら姿を現したのは、体長五メートルはあろうかという、巨大な熊の魔獣だった。

 地球のジャイアントパンダに似た白黒の模様をしているが、その全身は金属のような硬質な毛に覆われ、額からは一本の鋭い鋼の角が突き出している。太い丸太のような腕には、引き裂かれた竹の破片がへばりついていた。

(名称:鋼笹熊(アイアン・パンダ)。危険度:A+。幻竹林を守護する絶対的な主。鋼竹を主食とし、その硬度を自らの毛皮に取り込んでいる。性格は基本的には温厚だが、縄張りを侵す者やタケノコを狙う者には容赦ない鉄槌を下す)

(主よ、下がらんか! あの熊、ただの図体ではないぞ。恐るべき硬さの魔力を纏っておる!)

 クロが四肢に青白い雷を纏わせ、前に飛び出した。アカも上空へ舞い上がり、真紅の炎を口の奥で圧縮し始める。

「待て待て! 殺すなよ! パンダを殺すなんて地球人の倫理観が許さない!」

 僕は慌てて二匹を制止した。相手はタケノコを守っているだけだ。南のジャングルでの猿たちと同じように、交渉の余地はあるはずだ。

 鋼笹熊は二本足で立ち上がり、巨大な腕を振り上げて僕たちを威嚇している。

「重力操作(グラビティ・プレス)!!」

 僕はパンダの足元の重力を数十倍に跳ね上げ、その動きをズンッと封じ込めた。パンダが「グモォォッ!?」と驚き、身動きが取れなくなった隙に、僕は空間収納ポーチから『とっておき』のアイテムを取り出した。

 昨日大量に作っておいた『幻帝ミルクチョコレート』の巨大な板チョコと、黄金の蜂蜜の入った瓶だ。

 僕は重力を少し緩め、パンダの鼻先にチョコレートと蜂蜜を置いた。

「お前のタケノコと竹を少し分けてほしいんだ。その代わり、この世界で一番甘くて美味いおやつをやる。どうだ?」

 鋼笹熊は、最初は怒りに満ちた目で僕を睨んでいたが、鼻先に漂ってきたチョコレートの強烈な甘い香りと、蜂蜜の匂いに、ピタリと動きを止めた。

 鼻をヒクヒクさせ、恐る恐る短い指でチョコレートをつまみ上げ、口に放り込む。

「……クンッ?」

 咀嚼した瞬間。

 鋼笹熊の小さな黒い目が、信じられないほど見開かれた。

「グモォォォォォォォッッ!!!!??」

 それは怒りの咆哮ではなく、未知の甘美に対する魂の絶叫だった。カカオバターの滑らかな口溶け、濃厚なミルクのコク、そして砂糖の暴力的な甘さ。タケノコのほのかな甘みしか知らないパンダにとって、それは脳髄を直接破壊するほどのオーバードーズだったに違いない。

 パンダはドスンと座り込み、両手で顔を覆って「キュゥゥゥン……」と子犬のような声を出しながら身悶えし始めた。完全にチョコレートの虜である。

「よし、交渉成立だな」

 僕は笑いながら、追加のチョコレートと蜂蜜を大量に渡し、その見返りとして、竹林の中での採取の許可を得た。すっかり懐いた鋼笹熊は、僕の背中をポンポンと優しく叩き、一番美味い『霊泉筍』が生えている場所まで案内してくれた。

「すごいな……土から顔を出しているだけで、フルーティーな匂いがする」

 僕は魔鋼のサバイバルナイフで、傷つけないように慎重に霊泉筍を掘り出した。通常のタケノコにあるようなエグみ成分が一切ないため、アク抜きすら不要だという。

 さらに、天緑茶樹の柔らかい新芽を大量に摘み取り、幻魔の鋼竹を建築用に数十本切り倒して、ポーチに収納した。

 温泉の源泉地帯にも寄り、癒しの泥や硫黄の成分を採取してから、僕たちは大満足で拠点へと帰還した。

 時刻は午後三時。

 太陽が傾き始める前に、一大プロジェクトである『絶景露天風呂』の建設に取り掛かる。

 拠点のテラスの横、海へと続く砂浜と岩場が交わる絶好のロケーション。

 僕は両手を岩盤に当て、『万能創造』を発動させた。

「岩盤成形、浴槽構築、及び竹垣生成!」

 ゴゴゴゴォォ……ッ!

 巨大な天然岩が削り出され、十人は余裕で入れる広々とした岩風呂が形成される。その周囲には、先ほど切り出してきた『幻魔の鋼竹』が一瞬にして美しい和風の竹垣へと加工・配置され、外からの視線を遮りつつ、海と水平線だけを絵画のように切り取る完璧な空間を創り出した。

「次は、お湯の確保だ」

 僕は浴槽の縁に、太い鋼竹で作ったお湯の注ぎ口を設置した。

 そして、ここからが僕のチート魔法の真骨頂である。北西の火山地帯にある霊泉の源泉と、この竹筒の出口を、空間魔法を応用した『転送陣パイプ』で直接繋ぐのだ。

「空間接続(ディメンション・リンク)、及び水流操作!」

 僕が魔力回路をオンにすると、竹筒の奥からボコボコという音が聞こえ、次の瞬間、乳白色に濁った極上の硫黄泉が、湯気を立てながら勢いよくドバドバと注ぎ込まれ始めた。

 硫黄の素晴らしい香りが周囲に立ち込め、岩風呂があっという間に満たされる。源泉かけ流し、地球のどんな高級旅館も裸足で逃げ出す、異世界最強の絶景露天風呂の完成だ。

「……完璧だ。完璧すぎる」

 僕は思わずガッツポーズをした。

(おおお……主よ! 外に風呂を作ったのか! しかもこのお湯、山の火山地帯で嗅いだあの匂いがするぞ!)

(なんと風流な……。海を見ながらこの温かい湯に浸かれるとは、主は本当に天才だな!)

 クロとアカも、露天風呂の完成に大はしゃぎしている。

「お風呂は夜の星空の下で入るのが最高だ。その前に、夕飯の準備をしよう。今日は手に入れたタケノコで和食のフルコースだぞ」

 僕は特設キッチンに立ち、夕食の調理を開始した。

 まずは、摘み取ってきた『天緑茶樹』の茶葉の加工だ。魔法の熱で一瞬にして蒸し上げ、揉み込み、乾燥させるプロセスを超高速で行う。出来上がった茶葉を急須(魔法で創った常滑焼風の急須だ)に入れ、適温のお湯を注ぐと、洞窟の中に、心が洗われるような清涼で深く甘い緑茶の香りが広がった。

 一口飲むと、身体の中に溜まっていた微かな疲労感や毒素が、スゥッと消えていくのがわかる。まさに霊薬のようなお茶だ。

 メインの料理は『霊泉筍の炊き込みご飯』と、『タケノコと水精水晶海老の天ぷら』だ。

 羽釜に研いだ水魔稲の白米を入れ、特製昆布出汁、錬成醤油、そして少しの日本酒(純米大吟醸)で味をつける。そこに、大きく乱切りにした霊泉筍と、細かく刻んだ突角豚の肉を放り込んで炊き上げる。

 シューッ! と湯気が噴き出すと共に、タケノコのトウモロコシのような甘い香りと、醤油の焦げる匂いが混ざり合い、凶悪なまでの食欲を刺激する匂いが放たれた。

 隣の鍋では、油を高温に熱し、水溶き小麦粉の衣をつけた霊泉筍と、地底湖で獲った透明な小エビをサクッと揚げる。

 パチパチパチッ! という小気味よい音が響き、あっという間に黄金色の天ぷらが揚がった。

 夕暮れ時のテラスに、豪勢なタケノコ尽くしの和食膳が並んだ。

(主よ!! 早く!! この黄色いサクサクしたやつと、香ばしい匂いのするコメを食わせろ!!)

(我の胃袋が限界だ!! いただきます!!)

 僕たちは一斉に箸(クロとアカは直接口で)を動かした。

 炊き込みご飯を口に運ぶ。

「…………ッッ!! 旨い!!」

 タケノコのシャキシャキとした食感の直後、フルーツのような鮮烈な甘みと、出汁をたっぷりと吸い込んだ水魔稲のもっちりとした旨味が口の中で爆発する。エグみが全くないため、純粋なタケノコの美味さだけが前面に押し出されている。

 すかさず、タケノコの天ぷらを特製天然塩でいただく。

 サクッ! という衣の音と共に、中に閉じ込められていたタケノコのジューシーな水分が熱々の状態で弾け飛ぶ。エビの天ぷらの濃厚な旨味も加わり、箸が止まらない。

 食中には、淹れたての極上緑茶をすする。

 天ぷらの油っぽさを、緑茶の深いカテキンの渋みと甘みが完璧に洗い流し、口の中を常にフレッシュな状態にリセットしてくれる。これぞ和食の真髄だ。

 狂ったような勢いで夕食を平らげた後、僕たちは膨れた腹を抱えながら、ついに完成した絶景露天風呂へと向かった。

 すっかり日が落ち、空には満天の星が輝いている。

 服を脱ぎ(クロとアカはそのまま)、乳白色に濁った硫黄泉の岩風呂へと足を滑り込ませた。

「…………ぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜…………」

 四十二度の適温。火山特有の豊富なミネラルを含んだ滑らかなお湯が、全身の皮膚を優しく包み込み、筋肉の奥底までじんわりと熱を浸透させていく。

 竹筒からトクトクとお湯が注がれる風流な音。

 遠くで聞こえる波の音。

 見上げれば、数え切れないほどの星々が、まるで宝石箱をひっくり返したかのように煌めいている。

(ふぅぅぅ……極楽だ……。サウナの熱さも良いが、この柔らかいお湯に浸かって星を見るのも、また格別だな……)

 クロが頭に手ぬぐいを乗せ、目を細めておっさんのような念話を送ってくる。

(うむ……。美味い飯を食い、こうして湯に浸かる。我ら特Aランクの魔獣が、まさかこのような堕落した至福を知ることになるとはな……)

 アカも羽を半分お湯に浸し、完全にリラックスしきっていた。

 僕は岩風呂の縁に頭を乗せ、星空を見つめた。

 温泉。緑茶。タケノコご飯。

 前世で僕がどこかで求めていた「本当の心の安らぎ」のピースが、この異世界で、僕自身の魔法と手によって、一つ残らず完璧にはめ込まれていく。

 理不尽な人間関係も、終わりのない家族のトラブルも、ここにはない。

 ただ、この宇宙で一番美しく、心地よい時間だけが流れている。

「……最高だ。これ以上の人生なんて、絶対にない」

 僕は温泉の湯気を吸い込みながら、静かに目を閉じた。

 明日は何をしようか。まだ見ぬ海を越えた先にある島に行ってみるのもいい。新しい魔道具を発明するのもいい。

 名もなき開拓者のスローライフは、極上の和の癒やしを手に入れ、さらに果てしない幸福の海へと漕ぎ出していくのだった。

【ステータス】

名前:なし

年齢:18(肉体年齢)

職業:開拓者

レベル:76

HP:1750/1750

MP:∞/∞

スキル:

・万能創造(クリエイト)Lv.22

・魔力無限(インフィニティ)

・空間転移(テレポート)Lv.8

・全ステータス補正(大)

・地球の知識

・解析(アナライズ)Lv.19

・空間拡張(ディメンション・エクスパンド)Lv.8

・重力操作(グラビティ・プレス)Lv.5

・従魔契約(Lv.9)

・水流操作(アクア・コントロール)Lv.8

【所持拠点】無名の洞窟(各種インフラ・石窯・魔導冷凍設備・魔導スパ・『絶景源泉露天風呂』完備)、開拓農地、牧畜エリア、地下迷宮

【従魔】

・クロ(雷影狼・特Aランク)

・アカ(焔翼の獅子鷲・特Aランク)

・甘乳牛(4頭)

・柔毛羊(6頭)

【従者(ゴーレム)】

・ゴレ、レム

【所有物】究極の複合素材ウェア、霊泉筍、天緑茶樹の茶葉、幻魔の鋼竹、その他極上食材・魔道具多数

ここまでお読みいただきありがとうございます!少しでも面白いと感じたら、画面下から【ブックマーク】と【☆☆☆☆☆】の評価をいただけると、執筆の大きなモチベーションになります!尚、現在新作もよろしく(*´∀`)ノ

しがらみだらけの人生に疲れたので、記憶を消して無人境へ転生します〜無限魔力の【万能創造】で理想の拠点を作ってたら、最強の魔獣たちが勝手に懐いて最高の家族になりました〜

https://ncode.syosetu.com/n3777mp/

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