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第6話 イベントは突然に!


 さて、ジオが自らに名前を付けてしばらくが経過した。


(うーん、やっぱ太陽がないと時間の感覚がなくなるな……)


 果たして今が昼なのか夜なのか。それどころか、この世界にダンジョンとして生を受けて(ダンジョンが生きているのか別として)からどれだけの日が経過したのか、太陽の光も差し込まないダンジョンからでは、まったくもってわからない。


(一週間ぐらいか? 気が付いたときに印を付けちゃいるが……やっぱりわからないな)


 〈ダンジョン改築〉の力を使って、壁に印をつけて最低限魔物たちが寝起きした回数は記録している。今までで八回。大体一週間ぐらいだ。


 一応、風景(ビジョン)を通して洞窟の入り口がないものかと探して回ったけれど、それらしいものは見つからなかった。


 入り口が塞がれてしまっているのだろうか?

 でも、狼たちが侵入してきた以上、どこかで外に繋がっているはずとジオは考える。


(まあダンジョンのレベルを上げていけばいいことか)


 この状況を、ジオは前向きに考えていた。


 というのも、あれから何度か獣にダンジョンが襲撃されるたびに、それを撃破してジオはレベルを上げているのだ。


 現在のダンジョンレベルは5。そして、ダンジョンのレベルが上がる度に、ジオが見ることのできるダンジョンの風景(ビジョン)の距離が広がっている気がするのだ。


 このまま順調にレベルアップを繰り返せば、いずれはダンジョンの外の風景(ビジョン)も見ることができるだろう。


(にしても、レベル3以降は特にスキルの獲得もないんだよな……何か条件とかあるのか?)


 あれから三つもレベルアップしたけれど、新たなスキルの獲得がないどころか、既存のスキルのレベルアップすら出来ていないジオだ。


 〈魔物創造〉に〈ダンジョン改築〉〈ステータス鑑定≪魔物≫〉〈戦闘指揮〉――そのいずれも、Lv.1を保ったまま、ステータス画面に居座っている。


 果たしてどうやったらこれらのレベルを上げることができるのだろうか。そんな風に考えながら、ジオは〈ダンジョン倉庫〉から狼の死体を一つ取り出した。


 それがダンジョンの床に転がれば、リムサたち三匹が一斉に群がる。


(よーしよしどんどん食べておっきくなれよ~)


 狼との戦いから、ジオは魔物を増やしていなかった。

 というのも、ジオに創造されこそしたが、魔物たちも生き物として食事が必要らしく、今のダンジョンはまだ食料を安定して手に入れられる状況にないからだ。


(ボルドクは本当によく食べるなぁ)


 がつがつと肉に食らいつくボルドクは、三匹の中でもかなり食べる。それこそ調子のいい日は自分の体の半分ぐらいの量もぺろりと平らげてしまうのだ。


(にしても、相変わらずケルノストは静かだな)


 そしてケルノストは、ボルドクが食事をしているのを座って眺めていた。それは彼がスケルトンだから、食事など必要がないから――というわけではなく。


(職人肌だよな、ケルノストは)


 ケルノストは、ボルドクたちが食べ終わった後の骨を狙って待っているのだ。というのも、ケルノストは残った骨から気に入ったものを選んだあと、それを磨き、自分の骨と同じサイズにして自分の骨と交換しているのだ。


 交換する骨の多くは、戦いで傷ついたものや、古い骨。どうやらスケルトンという魔物にとっての食事は、自分の骨を交換することだったようだ。


(いつの間にかナイフっぽいのあるし……)


 ついでにケルノストの手には、道具のようなものが握られていた。骨で作ったナイフや、鋭い石の斧などなど、その全てはケルノストが手ずから作った物だ。


(スケルトンって、やっぱり死んだ人の骨が元になってるのか? その時の感覚が残ってるのかも)


 そんな風に考えながら、彼らの足元をジオは見る。そこには、ゆっくりと取り込んだ肉を消化しているリムサが居た。


(なんか踏まれそうでひやひやするんだよなぁ、リムサ)


 スライムのリムサは、普通の人の半分ぐらいしかないボルドクと比べてもさらに小さいミニマムサイズ。だから近くをボルドクたちが歩いていると、ちょっとだけ不安になる。


(それにしても……なんだかリムサ、大きくなってないか?)


 ボルドクの横でいそいそと獲物を溶かして食べているリムサだけれど、日を追うごとに体が大きくなっているような、いなような――


(鑑定とかしてみるか?)


 と、ジオは〈ステータス鑑定≪魔物≫〉を起動する。


〇『リムサ』

 ・Lv.9


 ただ、鑑定のレベルが低いからか、大した情報は乗ってない。

 果たして大きくなっているのかいないのか。それは謎のままである。


(んー?)


 と、そこでステータス画面に変化があった。


〇『リムサ』

 ・Lv.10


(食べるだけでもレベルが上がるのか。にしても、もうレベル10か)


 或いは、それがスライムの特性なのか、ともあれリムサのレベルが上がったようだ。初の二ケタ突入に、なんだか感慨深い気持ちになる。


 果たしてレベルはどこまで上がるのか。今後が楽しみになってきたジオであった。


 ただ――


(ん、なんだ?)


 リムサのレベルアップと共に、それは急に起きた。


〇『リムサ』

 ・Lv.10 

 ――眷属が進化します


(へ?)


 風景(ビジョン)に写るリムサが淡い光に包まれる。同時に、ダンジョンとしてのジオの脳内にアナウンスが響き渡った。


『経験計測――環境測定――個体計算――進化算出――――――進化完了』


 何が起きたのかわからないまま、気が付いたらリムサを取り巻いていた光は収まっていた。


(……り、リムサ?)


 そして先ほどまでリムサが居た場所には――まるで布を被ったお化けのようなシルエットをしたリムサが居た。


(進化……? いや、ボルドクと同じくらいの大きさになってるから進化かこれ)


 いかんせ元がスライムなものだから、丸いシルエットが若干丸くなっただけで変化があまり感じられないが――もともとボルドクよりも小さかったリムサは、いまやボルドクと数センチ変わらないぐらいの大きさになった。


 急な出来事に、ボルドクも目を見開いて驚いている。それからすんすんとリムサのにおいを嗅いだり、背を比べてみたりと騒がしいボルドクだ。


(ちょ、ちょっと確認……)


〇『リムサ』

 ・Lv.10

 種族【ダンシングスライム】


(ん?)


 ふと、確認してみればステータスに項目が増えていた。

 それと同時に脳裏に再びアナウンスが流れる。


『スキルのレベルが上がりました』

『〈ステータス鑑定≪魔物≫ Lv.1〉→〈ステータス鑑定≪魔物≫ Lv.2〉』


(いや、いきなりすぎるわ!!)


 突然の連続で混乱したジオは、怒鳴るようにそう叫んだ。

 何はともあれ――


「ふよふよ」


 進化したリムサは、楽しそうに丸いシルエットの体を揺らして踊っていた。


 

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