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第24話 転生してダンジョンになった話


 暗い世界に光が差した。

 目が開く。


「お、おい! 大丈夫かあんた!」

「あ……? 何が起きた……」


 目が覚めた時、ゴルドはトント村近くの森の中にいた。

 彼の周囲には、意識を失った【旅路の黄金鐘(ゴールドベル)】のメンバーたち。


 おそらくは彼らを発見したであろう冒険者たちが、ゴルドたちを心配している。


「酷い傷だ……とりあえず教会で治療しよう! あんた、歩けるか?」

「あ、ああ……」


 立ち上がるゴルド。しかし、足に力は入らず、途中で転んでしまった。


「無理するな!」

「いや、ちょっと気が緩んでいただけだ。俺は……一人で立てる」


 何とか体を起こし、今度こそ立ち上がったゴルドは、森の奥を見た。

 少し前の自分の記憶を探る。


 確か自分たちは――ダンジョンに行ったはずだ。

 協会から依頼された仕事。

 簡単に終わると思っていた。


 だが――


「負けた、のか……」


 背中の傷が痛む。

 それよりも痛いのは心。


「これで終われるか!」


 俺は叫んだ。


「おい、お前!」

「お、おう! な、なんだ!?」

「俺は【旅路の黄金鐘(ゴールドベル)】のゴルドだ! 俺の名前を使って、協会にこう伝えろ!」


 俺は、この敗北を、忘れない――


「危険度Aの魔物が現れた! 大至急、協会本部から応援の冒険者を呼べ!」


 なにがなんでも、この報いは受けてもらうぞ!!




 ◆




「ふわふわ~」

「おいリムサ。俺の背中で遊ぶな」

「キキキ」

「アムもだ! なんでお前らはいつもそうなんだよ!!」


 ゴルドが復讐に燃えているその頃、ダンジョンではリムサたちが、進化したボルドクをこれでもかとモフっていた。


「しかし、本当に奴らを生きて返してよかったのかの」


 そんなところで、ふと思い出したようにケルノストがそう訊ねた。本当のところ、ケルノストはダンジョンに訪れた冒険者は、今後の憂いを断つためにも殺すべきだと思っていたのだけれど――


「俺は神の人を殺すなって指令にゃ賛成だぜ。なんせ、ここであいつらを殺したところで、次はあの二人組よりも強い人間が攻めてくるだけだ。なら、こっちが友好的なのを示して、攻められないようにした方が楽だろう」

「むぅ……一理はあるか」


 なんだか納得のいっていないように呻くケルノスト。とはいえ、町では自分たちも、利用するつもりとはいえ、クリスたちから信用を得る方に動いた手前、否定できる話ではなかった。


「それに……なんでもかんでも殺して解決だなんて、力に溺れた方法はとりたくねぇな。少なくとも俺らは、一回それで痛い目を見たわけだし」

「ふんっ……確かにな」


 ボルドクのその言葉には、流石に頷くしかないケルノストであった。


「それに――別に俺たちはここで打ち止めってわけじゃね! こっから強くなってきゃいいんだ!」

「さんせーい。私もどんどん強くなるんだからね~」


 強くなる。

 誰がこのダンジョンを攻めてきたとしても、守れるぐらいに。


 そう宣言したボルドクの言葉に、彼の背中でモフモフを堪能していたリムサが賛成の声をあげた。


 そうすれば、アムやリングラたちもまた、それぞれの声をあげて賛成する。


「そうだな。我らは神の剣であり盾。このダンジョンを守るためとあらば、強くなるのは必然。とはいえ、神が無暗に振るうものではないとおっしゃるのならば、我も従うだけだ」


 骸骨だからこそ表情がわからないケルノストだけれども、どこか微笑んだような声で、彼もまたボルドクの意見に賛成した。


「おーし、となれば戦おうぜケルノスト! 体力が有り余って仕方ねぇんだ!」

「望むところだぞボルドク。あの冒険者をたった一人で倒したその腕、確かめさせてもらおうか!」

「おーう、やれやれ~」


 今日もダンジョンは騒がしい。


 そんなダンジョンの風景(ビジョン)を見て、ジオはにっこりと笑った。


(いやはや、この世界にダンジョンとして転生したときはどうなるかと思ったけど、心配はいらなさそうだ)


 生まれ変わってダンジョンとなってしまったジオ。

 彼はダンジョンを改築し、魔物を生み出し、ここまで来た。


(あいつらは強い。俺が思うほどに。なら、俺もダンジョンとして、あいつらの神として、強くならないと)


 ダンジョンとして強くなる、というのがどういうことかは、まだはっきりとわからないけれど。


 きっと大丈夫だろう。

 なにせ、ジオのことを守ってくれる魔物たちは心強く、それにまだまだ彼のダンジョンとして生は長く続いているのだ。


 その中で答えを導き出せばいい。


 ダンジョンとして魔物を導き、ダンジョンとして自分が何を為すべきなのか。


 なぜ、自分がダンジョンとして生まれたのか。


 まだまだ、道は続いているのだから――



 終わり


 


 

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