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第20話 作戦開始


「ったく、本当にこんなところにダンジョンがあるのかしら……無駄骨だったら文句言ってやる!」

「そう言うなよフィーラ。なあに、その時はありもしない大ぼらを吹いてたあの野蛮な三人の評判が落ちるだけ。そう思えば気がまぎれるだろ」

「グワンダの言う通りだ! 俺たち【旅路の黄金鐘(ゴールドベル)】に歯向かったんだ! 身の程を知れってもんだぜ!」


 木漏れ日の森に、やかましく行進する一団が現れる。

 人数は五人。男四人に女一人。

 高飛車に振舞う女は身の丈ほどある杖を持ち、その周りに槍と剣で武装した男を侍らせる。


 女の名はフィーラ。その周りを囲む陽気な槍使いがグワンダと言い、調子のいい言葉で騒ぎ立てる剣使いはヘルベルトという名だ。


 そんな三人の前を歩くのが――


「どうだ、シルバ」

「こりゃいるな。ま、被害が出ていない以上そこまで狂暴な魔物じゃねぇだろ」


 ゴルドとシルバの二人だ。

 特徴的な金髪にうっすらと顎髭を蓄えたゴルド。

 対して、短く刈り上げた銀髪のシルバ。


 彼らはじっくりと木々や地面を見て、魔物の痕跡を確かめた。

 痕跡からわかる結論は、『大した魔物ではない』という評価だ。なにしろ、魔物と言えば狂暴極まりなく、ダンジョンの近くに農村があろうものなら、人間ごと畑に実るすべてを食らいつくしている。


 そんな被害が聞こえないあたり、積極的に人を襲うような、凶悪凶暴な魔物ではないと判断できる。


「足跡が多いな。そろそろダンジョンだ」


 しゃがんで足跡を確かめていたシルバがそう言うと、森の中にぽっかりと空いた広場の中心に、大きな岩が見えた。その麓には洞窟。あれこそが、ダンジョンの入り口だろう。


「グワンダ。いつも通り殿を頼む。フィーラは先頭のシルバの援護を。ヘルベルトはフィーラを守ってくれよ」

「「「了解!」」」


 ゴルドの号令に、パーティー全員が返事をする。役割分担は万全。逃げ帰ったあの愚かな三人組とは違うのだと、各々の役割につくメンバーたちを見て笑った。


 さて、そうして陣形を組んでダンジョンの中を進んでいると――彼らの前に、コボルトが現れた。


「ゴルド! 前方にコボルトだ!」

「報告通りだな……ってことはあいつら、コボルトなんかに負けたってことじゃねぇかよ! 馬鹿みたいだぜ!」


 そう言って、ゴルドは剣を引き抜いた。


「シルバ! あの距離なら一瞬だ!」

「ハハッ! あいつらとは違うってことを教えてやろう!」


 ゴルドに合わせるようにシルバもまた剣を抜いた。

 それを見て、フィーラは言う。


「あの調子じゃあ、私たちの出番はなさそうね」


 ゴルドとシルバは無敵のコンビだ。二人が剣を抜いたが最後、どんな魔物も斬り伏される。それが【旅路の黄金鐘(ゴールドベル)】の常識であり、彼らがこの地域で指折りの冒険者と言われている理由。


 だから彼らに任せていれば、もうこの仕事も終わりだとフィーラたちが一息ついたその時――


「なっ……壁が!」


 ダンジョンの壁が突如としてせり上がり、フィーラたち三人と、ゴルドとシルバが分断されてしまった。


「チッ……なんかの罠か!?」

「おい、ゴルド! シルバ!」


 突然の出来事に慌てだす三人。


「落ち着きなさい! あの二人がこの程度の罠でくたばるわけがないでしょ!」


 しかし、そこで放たれたフィーラの言葉が、彼らの頭を冷静にさせた。


「そ、そうだな……悪いフィーラ」

「とりあえず合流できる道を探すぞ!」


 グワンダとヘルベルトが、申し訳なさそうにしつつも、それぞれが警戒を強めるように武器を握りしめた。


 シルバとゴルドの強さに【旅路の黄金鐘(ゴールドベル)】の評価が傾いているとはいえ、彼らだって歴戦の冒険者。たとえ二人が居らずとも、戦える――


「ぶひっ」

「っ!?」

「魔物だ!」


 三人の前に魔物が現れる。

 チュウと鳴く鼠が。

 キキキと笑う悪魔が。

 ふふふーふとほほ笑む小鬼が。

 ぶうと息を吐く豚が。


 四匹の魔物が、三人の前に立ちはだかった。



 ◆



「誘い込まれた? おいシルバ。なんだかきな臭いぜこのダンジョン」

「ああそうだな。魔物がこんな知能を持ってるはずがない。だが……」


 そして分断されたシルバたちの前にも、魔物が立つ。


「とりあえず、こいつらを倒してからあいつらの心配をしようか」


 剣を構えるゴルドとシルバ。

 その前には――


「一手、立ち合いを所望する」

「この二人分断しないとやばいんじゃなかったっけ……まあいいや! アドリブアドリブ~!」


 無機質なスケルトンと、無表情なスライムが立ってい

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