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第2話 手に入れた力


(転生……え、転生なのこれ? そもそもダンジョンって生きてるの?)


 とまあ困惑する男だけれど、彼には受け入れることしかできなかった。


(それ、で。仮に俺がダンジョンだったとして……何をするべきなのか)


 自分が死んだことははっきりとしている男は、何とか状況を飲み込んで、新たなる生で自分がダンジョンに転生したことに納得しようとする。


(スキル! そうだ、なんかスキルとかなんとか言ってたよな……!)


 聞こえてきたアナウンスを必死になって振り返る男。


(だ、〈ダンジョンアイ〉……だったっけ……?)


 確かそれは三つあった。

 その一つが、〈ダンジョンアイ〉という名前だった。

 そんな風に振り返ると、男の目の前に文字列が浮かび上がった。


(あ……これさっきの奴か)


 洞窟の風景(ビジョン)とは別に、浮かび上がった文字列は、まるでゲームのステータスのように、アナウンスが伝えてくれた男が手にしたものを、情報として教えてくれる。


・ダンジョン Lv.2

 〈魔物創造 Lv.1〉

 〈ダンジョン改築 Lv.1〉

 〈ダンジョンアイ〉


(これは……俺がダンジョンってことなんだよな)


 そこで改めて、確認する男。

 歩かずとも見える洞窟の風景(ビジョン)。突如現れたスライム。そして、スライムが殺されたことで鳴り響いた成長(レベルアップ)のアナウンス。


 そのすべてが、自分がこの洞窟そのものであることを教えてくれている。


(まあ、新たな生。割り切るか)


 ダンジョンであることに何か不都合があるわけでもあるまい。

 まあ、人と喋れないのは少し寂しいし、洞窟の外を見れないのは少し不安になるけれど……それは考えないようにしつつ、男は文字列――いや、『ステータス画面』に目を向けた。


(〈ダンジョンアイ〉っていうのはたぶん、この洞窟の風景(ビジョン)を俺に見せてる力かな)


 手に入れた力を、男は一つずつ吟味する。


(となると、さっきのスライムはこの〈魔物創造 Lv.1〉ってスキルの力かな。となると気になるのはこっちの〈ダンジョン改築 Lv.1〉だけど――おっ?)


 スキルを吟味している間も、〈ダンジョンアイ〉の力によって、男には洞窟内の風景(ビジョン)が見えている。その風景(ビジョン)の中で、スライムが壁に頭をぶつけているのが見えた。


 詳しく言えば、少し高い段差を登ろうとして、失敗しているスライムだ。


(少し回り道すれば上に行けるのに、こいつなにやってんだろう)


 そんな風に、スライムの行動を眺める男は、ふと今しがた目に止めていた〈ダンジョン改築 Lv.1〉のことを思い出す。


(これを使えば――)


 使う。

 そう考えた瞬間、男の中に不思議な全能感が満ち溢れてきた。まるで遠くの世界に写る景色すら、歪められるような、そんな力の気配。


 その力にしたがって、指でなぞるようにスライムの手前の段差に目をやる。すると、男の意のままに段差が削れ、なだらかな斜面が作り出された。


(おお、削れた! なるほど、こうやってダンジョンの中を改築できるスキルなのか)


 と、男が力の感触を確かめている間に、スライムは出来上がった斜面をのそのそと登る。それを見て、男は穏やかな気持ちで言った。


(のぼれてよかったなぁお前)


 なんだか善行をしたような気がして気分がいい。


(ダンジョンを改築して、魔物を創る――確かに、俺はダンジョンになってしまったみたいだ)


 再三、男は自分の現状を確かめた。


(そうだなぁ。こんな風に自分のダンジョンを創れるなら……それならここは、平和な場所だといいなぁ)


 既に男は、前世から今へと思考の方向が変わっていく。

 ダンジョンとしての、目標を考える。


(よし決めた。ここを箱庭にしよう。俺だけの、平和な世界!)


 ダンジョンという箱庭。

 男はその箱庭の管理人。


 そんな風に自分の目標を決めた男は、手始めに箱庭の住人を創ることから始めた――

 


 


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