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第11話 三匹と対策


 人間との戦いから数日。


(……リムサたちの様子がおかしい)


 ダンジョンには、ちょっとした変化があった。


(リムサ……何してんだ?)


 まず目につくのはリムサだ。

 いつものように部屋の様子を風景(ビジョン)で見てみると、床の色が変わっていた。いや、よく見てみると、それは床ではなくリムサで、どうやら床一面に平べったくなったリムサが広がっていたらしい。


(落ち込んでんのか……?)


 数日前から部屋の中に閉じこもったきりでてこないリムサだったのだが、どうしてこうなってしまったのか。ボルドクも部屋の入り口で目を丸くして驚いている。


(まさか……戦いの後遺症で死んじゃったんじゃ……)


 と、不安になるジオだけれど。


「がう……がうっ!?」


 リムサを踏んでまで部屋の中に入ろうとしたボルドクを、リムサは体を波のように動かしてぺしっとはねのけた。おかげで転んだボルドクはごろごろと部屋の外まで転がって行ってしまったけれど、こんな状態でもしっかりと生きているようで、一安心だ。


(とりあえず、問題なさそうなら放っておこうかな)


 次にジオは、部屋の外に座り込んだケルノストの方を見る。


(あっちはあっちで何をしてるんだろう……)


 ケルノストは、あの日、ダンジョンにやってきた人間の落とし物を自分の前に並べては、それをいじくりまわすことに時間を費やしている。


 例えば弓使いが落としていった弓の弦を、みょんみょんと指で弾いて半日を過ごしていたり、剣使いが落としていったものと思われる盾を叩いて三時間過ごしたり。


 しかもかなりの集中力だ。今しがたケルノストの横を転んだ勢いでゴロゴロと転がっていくボルドクが通り過ぎたが、気にせず弓をみょんみょんしている。


 いったいケルノストは何をしているのだろうか。


(まあケルノストは自分でモノづくりしてたし、人間の道具に興味があるのかな)


 リムサの謎の行動よりもまだ幾分か納得できるケルノスト。とはいえ、人間が訪れる前と後では明らかに変化があった二匹のことが心配になるジオである。


(ボルドクは――)


「ギャウギャ! ワンワッワン!!」


 自分を転ばしたリムサに怒りの声をあげるボルドクも、何か変化があったのだろうか。なんだかいつも通りに見える。さんざん言うだけ言って、まったく手ごたえが感じられなくて、最終的に耳をパタッと折って「くぅん」と情けない声をあげるところとか。


(ま、まあリムサがああなっている以上、個室を作った方が良さそうだ)


 とりあえず、今まで相部屋だったボルドクたちを気遣って、個室を作るジオ。その作業と同時並行で、今わかっていることを彼は今までのことをまとめる。


(今わかってるダンジョンのシステムは――)


 ダンジョンとはなにか。


 人間たちの話から統合すると、ダンジョンとは『魔物を発生させる迷宮』であり、人間たちにとっては発生した魔物の素材を巡って『利益が発生する場所』である。


 ただ、剣使いが警戒していたところを見るに、ただの資源の宝庫というわけでもないだろう。少なくとも、ただの野獣よりは、魔物の方がずっと危険だろうし。


(そしてダンジョン自体は、侵入者を撃退するように作られている)


 ボルドクたちは、侵入者を撃退するために戦うことを使命とした行動をとっている。おそらくそれは、本能に根付くものなのだろうと、予想できる。


 そして彼らが全滅した後に起きた、ジオのダンジョンへの降臨。それはダンジョンの侵入を阻む兵士が居なくなって初めて出撃する、最終兵器のよう。


(ダンジョンは最奥に誰かを入れたくない? ……いや、違うか。おそらくダンジョンの奥底に眠るナニカを破壊なり持ち出されたりしたら――)


 ――ダンジョンは破壊される。


 それは、あらゆる予想を超えて正しいものだと、ジオは確信する。

 ダンジョンの破壊。

 それ即ち、ダンジョンそのものたるジオの死につながるのだと。


(今回は辛うじて俺が侵入者を撃退できたが……あの鎧の形態すらも突破されたと想像すると、ゾッとする)


 今になって初めて、すぐ隣にまで迫っていた死の気配を感じたジオ。かつて一度味わった死。それはとても、冷たいものだったから。


(ダンジョンが無くなるのなら、そりゃああいつらだって必死になって戦ってくれるよな)


 最初から、魔物たちはダンジョンを守るために戦ってくれていた。それは自分の居場所を守るための戦いであり、尻尾を巻いて逃げだすことなんてできない戦いだったのだ。


 自分の覚悟は足りていなかった。

 そう、ジオは実感せざるを得なかった。


(やっぱり戦力増強はするべきだな。それと――狩りにも出てもらおう)


 野獣を狩ればレベルが上がる。

 レベルが上がれば魔物たちは強くなる。

 食料はもちろんのこと、戦力増強の観点においても重要だ。


 不安は……許容するしかないか、とジオはため息を付いた。


(ダンジョンの外での魔物たちの活動は見れないけど、欲しいものとかの指示は出せるみたいだし、そこはボルドクたちを信じよう)


 指示を直接下すわけではないけれど、欲しいものがダンジョンの外にあれば、ボルドクたちはなんとなくそれを察して取ってきてくれる。


 ボルドクたちというか、ボルドクが、だけれど。


(なーんか、ボルドクとリムサたちで俺の指示に対する反応が違う気がするんだよな。なんかあるのかな)


 ちょっとした疑問は多いけれど、気にするほどのものではない。なのでジオは頭の中に浮かんできた疑問を隅において、〈魔物創造〉のスキルを起動する。


 とりあえずもう三匹、魔物を創造する。

 そうすれば戦略の幅は広がるし、狩りの成功率だって上がる。

 そう思って、どの魔物を創造しようかと、〈魔物創造〉が造れる魔物リストを見た。


 スケルトン。

 コボルト。

 スライム。


 見覚えのある名前。

 けれど、リストに書かれた魔物はそれだけではなかった。


 旧鼠。

 インプ。

 ゴブリン。

 オーク。


(な、なんか増えてるぅ!?)


 アナウンスもなく、いつの間にか創造できる魔物の種類は増えていたのだった。

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