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チュートリアルのある異世界へようこそ!  作者: しなとべあ
第三章 ペルムシエルの花劇団
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第64話 観光

■マリネ視点


チュートリアルの酒場の前に集合した優斗と那砂、ユナリアとロココを見ながらわたしは手を突き上げる。


「それじゃ、旧王都観光にしゅっぱーつ!」


「「おー!!」」


「おーなのです!」


わたしの掛け声に、優斗と那砂と、ノリのいいロココもあわせてくれる。


ユナリアは目を瞬かせてきょとんとしているのが少し面白い。


ヴァイスはルメールと、古参のみんなを連れて先に街に向かった。


予定は伝えておいたから、先回りしてくれるんだと思う。


陰ながら護衛するとか言ってたし。


わたしも旧王都には詳しいけど、護衛とか襲いやすい場所とか、そういう視点で見たことはなかった。


今度そういう視点で街を見て回ろうかな。


そんな事を考えながら、酒場からまずは中心街に向かって進む。


北門のすぐそばにあるチュートリアルの酒場周りは、実は人通りが少ない。


他の開拓団ギルドとか騎士団の詰め所があったり、武器屋があったりと物々しくて普通の人はまずこない。


「この辺りは、飾りの少なく堅牢な建物が多いのですね」


周囲を見回したユナリアがそれに気付く。


「うん、この辺りはわたしが生まれる前に、小鬼の森の襲撃で焼けちゃったから、次がないように特に頑丈にしたんだって」


昔からいる人は、口を揃えてその時の恐ろしさと、二度と負けないという覚悟を語るからね。


それにヴァイスは平然と行ってるけど、樹鹿の森って旧王都の周りでも特別危ない支配領域だからね。


だから、両方に備えて北には街でも強い人達が集まってる。


まぁ、その中でもうちは随一なんだけどね!


身内びいきかもしれないけど、旧王都に一番貢献している開拓団はうちだと思う。


ちょっとヴァイスとルメールが飛び抜けているけど、他にも凄い人は多い。


新人育成にも積極的だしね。


……まぁ、育って巣立ってく人も多いから、あんまり数は増えないんだけど。


「代わりに、もしもの時は特に危ないから、住んでる人は少ないんだけどね」


「あぁ、だから店や施設ばっかりなんだ。住居が妙に少ないと思ってたんだよ」


優斗が言うように、お家が少ない。


わたし達みたいに、開拓団に住んでる人とか、店に寝泊まりしている人はそれなりに居るけどね。


「それで、チュートリアルの酒場様も北門にあるのですね」


納得するように頷いているユナリアに、心の中で『半分は正解』とつぶやく。


昔に、わたしも気になってヴァイスに聞いた事がある。


なんで、わざわざ北の端っこに酒場を作ったのかって。


そしたら、『俺達来訪者がやってくる場所に一番近いから』って答えてくれた。


一部の人しか知らない、来訪者が現れる場所があるらしい。


そこから自然にチュートリアルの酒場に向かう様な仕組みになってるらしいけど、わたしも行ったことはない。


そういえば、優斗と那砂もそこから来たはずだから、今度聞いてみようかな。




緩やかな坂道を登っていけば、徐々に活気が増えていく。


各門から中央へは馬車が何台もすれ違えるほどの広さの大通りが続いていて、大通り沿いには店舗が並んでる。


中央広場に近付けば近付くほど、人通りは増えて、その分だけユナリア達への視線も増えていく。


わたしを先頭に、ユナリアとロココを真ん中に置いて、那砂がユナリアの隣。


最後尾を優斗という形で挟んでるから、余り近付いてはこないけど、それでも視線が飛んでくるのはよくわかる。


わたしのヤマネ族もかなり珍しいから、他の街の人とかにはよく見られるからわかるんだよね。


でも、ユナリアもロココもそんな視線には慣れっこなのか、ぜんぜん気にしてないみたい。


「歴史のありそうな建物が増えてきましたね!」


それどころか、大通り沿いの建物に興味が向いているみたい。


「この辺りは小鬼の森の襲撃で焼けなかったし、旧王都が壊滅した時にも被害を免れた場所だからね。当時の建物が多いんじゃないかな」


「壊滅、ですか?」


「うん、小鬼の森の襲撃より前――二十年ぐらい前かな。旧王都がまだ王都だった時に、王城を中心に割者が大暴れしたんだって」


詳しい話は知らないけど、その割者に王様や偉い貴族がいっぱい殺されちゃって、王剣も行方不明。


前の国は、それで国として滅んだらしい。


だから、今のこの街が旧王都って呼ばれてる。


「西は元々王城と貴族街が広がってたけど、その割者が大暴れしたから今は廃墟になってるみたい」


今も、西の方は手付かずで、その時の傷跡が残ったままの場所が多い。


「その辺りは、後で見に行ったら解説してあげるね」


「是非、よろしくお願いいたします」


観光の目玉は後に取っておかないとね。




「ここが中央市場。ここに来れば、生活に必要な物は全部揃う旧王都の台所だね」


人に溢れているここは、色々なお店が軒を連ねていて、食材から料理、生活雑貨に宝飾品まで大体何でもそろう。


掘り出し物も多いけど、ぼったくりも多いから、見る目がないと難しいかもね。


「中央門に続く大通りの一本隣だけど、馬車が通れないようになっててその分活気がある場所だよ」


「すごい人ですね!それに、思ったより様々な方々がおられます」


「低い人も、角の人も、色々な人がいるのです!」


ユナリアとロココのいう通り、中央市場には器人以外の人がいっぱいいる。


特に多いのは、ロココが低い人と呼んだ背の低い地人。


そして角の人と呼んだ、草食系の獣人かな。


羊族を始めに、鹿族や牛族とかの有角系の部族が目立つ。


力が強くて体力もあるから、農業を営んでる人たちが多くて、市場では特によく目にする。


獣人は、顔が完全に動物の顔をしている人から、人の顔に角や動物の耳が生えているだけ、って人まで個性的。


「……あの、マリネ様。私、何か普段向けられない視線を感じるのですが」


「自分も感じるのです……」


「あー」


目立っている二人だけど、特に草食系の獣人からの視線が熱い。


それも、魅了されているというより……。


「美味しそう、とか?」


うん、それだ。


ユナリアの百合の花と、ロココの葉の体が魅力的に見えてるのだと思う。


食欲的に。


「それだけは許してくださいませ!」


「ロココはご飯じゃないのです!?」


頭の花を庇うユナリアと、那砂に飛びついて震えるロココ。


うん。


那砂、嬉しいのはいいけど、もうちょっと表情は取りつくろっか?


「流石に、それはさせないから大丈夫」


優斗が二人への視線を遮るように壁になる。


はっとしたように、草食系の獣人の人達がばつが悪そうに視線を逸らす。


ヴァイスから、花族は自然に魅了を振りまくからトラブルには気を付けろって言われてたけど。


そっち方面でも魅了するとは聞いてないよヴァイス!!

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